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医療経営情報(2017年4月6日号)

◆認知症や訪問看護に対応している病院はまだ少数派 算定要件を満たす看護人材の確保に課題 日看協調査

――公益社団法人日本看護協会
4月4日、公益社団法人日本看護協会は「2016年 病院看護実態調査」の結果を発表。2016年度診療報酬改定への対応状況として、認知症ケア加算や退院後訪問指導料、訪問看護同行加算を算定している病院が少数にとどまっていることがわかった。これらの加算を算定できない理由としては、看護人材の不足を挙げている病院が多く、専門知識を持った人材の養成が急務であることが明らかになった。

調査は、昨年10月の1カ月間、全国8,469の病院を対象に行われた。有効回答数は3,549。そのうち、認知症ケア加算を算定している病院は866施設あり、有効回答数の24.4%だった。算定しない理由は「算定要件を満たしていない」が73.0%と圧倒的で、満たしていない算定要件としては、「認知症ケアに関する手順書を整備していない」が36.2%、「認知症看護認定看護師等の配置が難しい」が26.0%で続いている。

退院後訪問指導料を算定する病院は452施設で全体の12.7%にあたる。算定するための課題としては「訪問指導にあたる看護師の確保」が57.3%ともっとも多く、次いで「訪問指導を行うための看護師の教育・研修」が45.7%となっている。

訪問看護同行加算を算定している病院は、わずか246施設と全体の6.9%にとどまった。算定のための課題としては「同行訪問の日程調整等が難しい」が31.4%もあり、やはり人材不足の影響を感じさせる。日本看護協会は、認知症ケアに関連した研修の受講機会を増やすなどして、認知症看護認定看護師の養成に力を入れると表明しているが、ここまで実施施設が少ないことを踏まえると、すぐに結果が出るとは考えにくい状況と言えよう。

ただし、今回の調査対象は病院であることにも着目したい。看護職員の給与がここ5年間ほぼ変化がないことや、月72時間超の夜勤を行う看護職員の割合が高い病院ほど離職率が高い傾向があることも明らかとなっており、人材不足であるにも関わらず、待遇面の改善に踏み出せない現状が浮き彫りとなっている。今後、地域包括ケアシステムを構築していくことを鑑みれば、認知症ケアや訪問看護は、診療所など地域のかかりつけ医が中心的に担っていく可能性もあるため、小規模な医療機関がニーズを掴めるチャンスは十分にあるのではないだろうか。

◆マイナス金利解除時に医業経営リスクが発生する可能性を指摘
「利益の大半が失われる恐れがある」と警鐘 日医総研WP

――日本医師会総合政策研究機構
3月29日、日本医師会総合政策研究機構はワーキングペーパー(日医総研WP)を発表。マイナス金利政策の導入から1年を迎えるにあたって、将来金利が上昇したときに医業経営リスクがあると警鐘を鳴らした。また、マクロ的な懸念として、マイナス金利政策を含めたアベノミクスがうまくいかなかった場合、より社会保障費への抑制圧力が強まると指摘。いわゆる「2025年問題」とタイミングが合ってしまえば、医療分野へのマイナスの影響をもたらす可能性もあるとした。

経済を刺激する効果を期待し、マイナス金利政策の導入が決定したのは昨年1月末。しかし日医総研WPは、金融市場は動揺し、銀行や生保の運用や販売、年金の債務評価に悪い影響を与えたと断じた。

とはいえ、医療分野においては、医療ニーズや受診行動が経済政策によって変わることは考えられないため、これまでのところ直接的な影響はなく、2018年度の次期診療報酬改定や、地域包括ケアシステムの推進などにも影響を及ぼすことも考えられないとしている。資金調達面でも、もともとの金利が十分低いため、マイナス金利政策による恩恵はさして得られず、コスト軽減効果も期待できない。

むしろ、マイナス金利を解除したときが要注意だと日医総研WPは警告する。マイナス金利を解除すると、経済メカニズム的に見れば市場金利も2%程度上がることが見込まれるが、そのときに日銀が金融市場のコントロールに失敗した場合、より高騰する可能性もあるからである。

市場金利が高騰すると、どのような状況になるのだろうか。考慮すべきは、平均1%前後と言われる医療機関の医業利益率。市場金利が大きく跳ね上がってしまった場合は借入金利も引き上げられるため、利益の大半が失われる可能性もある。借入金利が6%上昇した場合、日本企業の経常利益合計額の約40%が損なわれるとの試算もあるため、仮定の話と片付けるのは危険だ。

アメリカでは、リーマン・ショック後に行った量的緩和策を解除したのが昨年12月。それまで7年かかっているため、日本でもまだしばらくは静観できるとの見方もある。しかし、アメリカの大統領にドナルド・トランプ氏が就任したことで、国際的な情勢はめまぐるしく変化しており、いつ金融政策を転換するか読めないというのが現状だろう。とりわけ借入金が多い医療機関は、急な政策転換に対応できるよう、情勢を注視しつつリスク対策を練っておいたほうがよさそうだ。

◆多職種連携SNSと連動した「服薬適正化支援アプリ」が登場
外来がん治療の副作用マネジメントができるツールとして期待

――中外製薬株式会社
4月4日、中外製薬株式会社は自社で開発した「服薬適正化支援アプリ」を一部の基幹病院で試行開始したと発表。医療介護従事者向けに開発されたSNSと連動させることで、患者と医療従事者とのコミュニケーションを円滑にするとともに、外来がん治療での副作用マネジメントができるツールになることも期待される。

中外製薬が「服薬適正化支援アプリ」を開発したのは、外来がん治療で受診間に副作用が重篤化し、服薬を継続できないケースがあったからである。こうした状況を回避するためには、副作用の早期発見と対策が重要。そのため、患者自身が自覚症状を記録でき、それを医療従事者が速やかに共有できて患者とコミュニケーションをとれる仕組みを構築したというわけだ。そのほか、患者が注意するべき症状やその対策動画を閲覧できる機能も装備し、副作用情報の啓蒙もできるようになっている。

また、医療従事者との円滑なコミュニケーションのため、株式会社日本エンブレースが運用する完全非公開型SNS「MedicalCareStation(メディカルケアステーション)」と連携して今回の試行も実施。「MedicalCareStation」は180以上の医師会で採用されているほか、全国2万4000の医療関連施設で利用されているため、本格的な連携をスタートさせれば一気に外来がん治療のプラットフォームにできることが見込まれている。

今後は、試行を実施している基幹病院やその患者を対象にインタビューやアンケートを行い、アプリの有用性や課題を検証。がん領域以外での活用も視野に入れているという。政府が在宅医療を推進していることもあり、こうしたマネジメントアプリの必要性が一層高まっていくことは間違いないため、今回の中外製薬の取り組みがどのような結果を生むのか、注目していきたい。

◆リアルな感触と反応を実現した医療教育用シミュレータロボット 月額保管料は1箱98円と格安 模型の保管も可能

――株式会社テムザック技術研究所
3月24日、医療用ロボットの研究、開発を手がけている株式会社テムザック技術研究所は、医療教育用シミュレータロボット「mikoto」の発売を発表。「とっとり発!医療機器開発事業」の助成を受け、鳥取大学医学部附属病院と共同で開発した製品で、気管挿管、内視鏡検査、喀痰吸引の3つの手技がトレーニングできる。医療機関や専門学校向けに販売する予定となっており、研修医や看護師向けの実践教育に効果を発揮しそうだ。

「mikoto」は、リアリティを徹底的に追求しているのが最大の特徴。見た目はもちろん、人体の柔らかさや口を開けたときの反応まで再現している。気道にセンサを設けることで、気管にチューブを入れたり、胃カメラを入れたりしたとき、誤ったところに触れるとえずく機能も備えている。また、患者の状態を全身麻痺にしたり、口や首を動かせる範囲を変えたりといった設定も可能となっている。

近年、医療は高度化の一途を辿っている。先進的な機能を備えた機器が登場する一方で、医療現場で必要な手技や業務は複雑かつ多様化しており、より的確な臨床技術の習得が求められている。しかし、医療従事者予備軍となる医学部学生や看護学生などへの教育は依然として座学が中心。いきなり実習で患者に接して手技を用いたとき、力が強すぎて負担をかけるケースも少なくない。

また、従来の医療用マネキンは、感触も構造も人体と異なるため、真の意味でスキルが得られるツールとは言いがたかった。その意味でも、「mikoto」のように人に近い反応をするシミュレータは、医療技術の効率的な習得を促すと言えよう。もちろん、近年増加している医療事故防止の効果も期待できるのではないだろうか。

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