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医療経営情報(2017年3月23日号)

2017/3/29

◆新専門医制度、専攻医の募集を8月から開始予定 今後は新専門医のみを広告可能とする方針も示す

――一般社団法人日本専門医機構
3月15日、一般社団法人日本専門医機構と厚生労働省は「新たな専門医の仕組みに関する説明会」を開催。制度開始に向けたスケジュール案も公表した。それによれば、5月から基幹施設よりプログラムを募集し、都道府県協議会との協議や研修プログラムの審査を経て、8月には専攻医の募集を開始。来年4月に予定通り制度を開始させる方針だ。

 説明会では、新専門医制度の現状と課題について日本専門医機構から説明。2014年5月に旧機構(日本専門医性評価・認定機構)が解散した時点で85学会、81専門医が登録されていたことに触れ、専門医が乱立されていてわかりづらく、基準が統一されていなかったため質のばらつきがあったとした。それを踏まえ、現在の機構を設立した目的として学会の運用ではなく、第三者機関として制度の統一化・標準化を挙げ、今後は日本専門医機構で認定した専門医のみを広告可能とする方針も示した。

研修の実施機関を「大学病院などの基幹病院が中心」としていることで、都市部に研修生が集まる制度になり、「医師の偏在化」を助長させるとの意見があることに対しては、大学以外の施設でも認定される基準とするとした。具体的には、専攻医実績が350人以上の内科、外科、小児科、整形外科、麻酔科、精神科、産婦人科、救急科を対象とする予定で、今後各学会と調整していく。

また、専攻医が集中することが想定される都市部については、定員の上限を設ける意向。具体的な地域として東京、神奈川、愛知、大阪、福岡を挙げ、過去の専攻医採用実績の平均を目途に決定したいとしている(産婦人科、病理、臨床検査を除く)。さらに、関連施設のほかに連携施設などがあり、研修の質を確保するとの条件付きで、指導医が不在であっても研修を可能とする方針も示し、地域医療に配慮している姿勢を強調した。

出産・育児・留学などで研修を中断せざるを得ない場合にも配慮。カリキュラム制も併用することで、さまざまな理由で取得しにくい研修生がスムーズに専門医を取得できるように制度設計を行う予定だ。

日本専門医機構は、説明会終了後の3月17日にホームページで「専門医制度新整備指針」について、パブリックコメントの募集を開始。集まった意見を踏まえて協議し、整備指針を4月末までに確定させたいとしている。しかし、3月9日の参議院厚生労働委員会では、塩崎恭久厚労相が「必要に応じて日本専門医機構に抜本的対応を求めたい」と発言。再度指針の見直しが進められる可能性も残されており、今後の動きから引き続き目が離せない状況と言えよう。

◆心筋梗塞が約3倍発症しやすくなる遺伝子を発見
新たな予防法や治療法の開発に期待がかかる

――三重大学
3月15日、三重大学は心筋梗塞が約3倍発症しやすくなる遺伝子を新たに特定したと発表。遺伝的リスクによる発症の危険性が予測できるようになり、新たな予防法や治療法の開発に応用できる可能性が生まれたとした。研究の成果は、アメリカの医学誌「Oncotarget」の電子版に掲載される。

この研究は、三重大学地域イノベーション推進機構先端科学研究支援センターのヒト機能ゲノミクス部門で部門長を務める山田芳司教授の研究チームと、筑波大学、名古屋工業大学、東京都健康長寿医療センターがグループを組んで共同で行ってきたもの。心筋梗塞に関係するとされる遺伝子は200種類以上あると言われているが、同研究グループでは心筋梗塞の既往歴がある2,438人と、既往歴のない9,210人の血液を採取し、遺伝子のタンパク質の構成に関係する部分を詳細に解析した。

遺伝子の解析にあたっては、人によってDNAを構成する塩基の配列がわずかに異なる「多型」に着目。既往歴のある人に多く、ない人に少ない多型を比較した結果、白血球などの免疫細胞をコントロールする「STXBP2」の多型が心筋梗塞の発症に強く関連していることを発見。「STXBP2」の多型を持つ人は、血液の流れが途絶えてしまう血栓ができやすく、心筋梗塞の発症比率が一般の約3倍になるという。

心筋梗塞は、冠状動脈が詰まることで起こる心疾患で、心臓発作やハート・アタックとも呼ばれる。動脈硬化や高血圧が原因となっていることから、生活習慣病の一種と受け止められていることが多いが、実は遺伝的な要因も大きく関係していることがわかっている。そのため、今回発表された研究結果を役立てれば、効果的な予防法や治療法の開発につなげられると言えよう。遺伝子検査など、一般的な医療機関でも積極的な予防策を講じることが可能となることも予測されるため、今後の研究成果に期待が集まる。

◆ICTを活用した医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」
単体の医療用ソフトウェアでは初めて保険診療での使用が可能に

――株式会社リクルートメディカルキャリア
株式会社アルム
3月17日、医師人材紹介サービスなどを手がける株式会社リクルートメディカルキャリアと、医療・介護モバイルICTを手がける株式会社アルムは医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を4月より全国展開していくと発表した。

「Join」は、単体の医療用ソフトウェアとして初めて医療機器認定を受け、保険診療での使用が認められたモバイル用アプリ。CTやMRIなどの医用画像や心電図などの生体モニターを医療関係者間で共有し、画像をスマートフォンで表示することで診療に活用できる。チャット機能も搭載しており、医療関係者間で画像を共有できるほかメッセージのやりとりも可能で、ICUや手術室にカメラを設置すればリアルタイムで動画を配信することもできる。当然、幅広い医療領域での活用が可能だが、リクルートメディカルキャリアは、とりわけ脳神経外科や心臓血管外科領域での治療や診断の早期化に貢献したいとした。

脳血管疾患や心疾患の治療は、発症後速やかに適切な処置ができるかどうかで生死が左右されるほか、予後の状態も変わってくる。しかし、たとえ設備が充実している大学病院であっても、24時間専門医が常駐しているわけではない。そのため、専門医がスマートフォンで検査画像や動画をリアルタイムで閲覧できる「Join」は、迅速に的確な処置を指示するためのツールとして有効だと言える。

そこから一歩進めて考えれば、十分な設備が整っていない地域の診療所でも、大学病院などと迅速なコミュニケーションを図りながら先進医療を行うことが可能になることがわかる。リクルートメディカルキャリアは、「人材紹介サービスだけでは実現が難しい医療サービスの地域格差を解消したい」とコメントしており、同社のネットワークを駆使して全国に展開していくことが予測される。急性期医療における医療関係者間の迅速なコミュニケーションを可能にするツールとして、スマホアプリがスタンダードな存在になる日も近いかもしれない。

◆クラウド型の脳波解析システムが登場
脳波計などがあれば専用の検査機器は不要

――株式会社NTTデータアイ
日本光電工業株式会社
3月6日、株式会社NTTデータアイと日本光電工業株式会社は、クラウド型の脳波解析システム「NATESAS(ナテサス)」の提供を4月から開始すると発表した。日本光電工業の脳波計があれば専用の検査機器を導入する必要がなく、神経内科や脳神経外科以外の医療機関が脳波検査を実施したいときに重宝するシステムと言えそうだ。

「NATESAS」は、脳活動状態を可視化できるのが最大の特徴。脳疾患患者と健常者の脳活動情報の特性をデータベース化しており、検査対象者の脳活動情報と比較してカラーマップで類似度を示す仕組みとなっている。そのため、脳活動に関連する病態をより直感的に確認し、診断することができるというわけだ。

データベースは、機械学習技術を取り入れて抽出・分類しているため、定量的に類似性が評価できるのも特徴。もちろん、セキュリティにも配慮しており、厚生労働省・経済産業省・総務省の3省が定めるいわゆる「3省4ガイドライン」を順守。脳波ファイルは米国国立標準技術研究所が制定したアメリカ政府の新世代標準暗号化方式「AES」で暗号化しているほか、医療機関が用いる患者番号と異なる独立した番号で管理するため、個人を特定することができないのも安心できる。なお、脳波の計測は、耳を含む頭部21箇所に電極を装着する方式を採用。放射線や強い磁気を受ける必要がないため、患者の身体的な負担を軽減できるのもメリットと言える。

NTTデータアイと日本光電工業は、2014年10月から認知症などの脳疾患研究者や株式会社脳機能研究所などとともに、脳波計で計測した脳波データを可視化する「脳活動画像表示技術」の活用を目的とした共同研究を進めてきた。NTTデータアイの機械学習技術を活用することで、脳波データ間の類似性を定量的に計算することに成功したため、広く提供を開始することにしたという。昨年11月には、医薬品医療機器総合機構の認証も受けている。

脳波検査は、てんかんや頭部外傷の診断を行うのに有効。脳動脈硬化症や脳血管障害なども診断できる。かかりつけ医の普及を推進している現在、診療所をはじめとする一般医療機関に求められる役割は従来以上に広がりつつあり、幅広い検査が可能な体制を整えておく必要が生じてきている。そうした意味でも、専用検査機器の導入が不要な脳波解析システムは注目に値する存在ではないだろうか。

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