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医療経営情報(2017年3月16日号)

2017/3/29

◆虚偽・誇大表現を禁止する医療広告規制、ホームページも対象に 「絶対安全」「著名人もおすすめ」などの文言が禁止される

――厚生労働省
3月10日、政府は「医療法等の一部を改正する法律案」を閣議決定した。従来、ウェブではバナー広告のみが医療広告規制の対象だったが、今後はホームページにも適用されることになる。違反した場合は、30万円以下の罰金もしくは6月以下の懲役が科される。政府は現在開会中の通常国会での成立を目指しており、成立すれば2018年6月までには規制が開始。とりわけ美容医療を手がけている医療機関は、早急な対応が迫られることになりそうだ。

今回の改正法案にホームページへの規制が盛り込まれた背景には、美容整形や脂肪吸引といった美容医療で健康被害や契約トラブルが続出している状況がある。インターネットの発達やスマートフォンの普及により、ホームページを閲覧して受診先を決める患者が増えていることもあり、法改正に踏み切った。

今まで、厚生労働省はホームページについて、広告ではなく「情報提供媒体」であるとの認識だったため、ホームページに誘導するバナー広告を除き、医療広告規制の対象から外していた。2012年に「医療機関ホームページガイドライン」を策定して自主規制を促したが、罰則規定がないため実効性は薄かったのが現状だった。テレビやラジオ、雑誌などは放送局や出版社側も審査機能を設けているため、ある程度歯止めをかけることができていたが、ホームページは各医療機関が独自に制作するため、外部の審査を受けることがなく、事実上野放しの状態だった。

厚生労働省が策定した「医療広告ガイドライン」によれば、「必ず治る・痩せる・美しくなる」といった表現は効果保証にあたるため誇大表現とみなされ、用いることができない。同様に「ビフォーアフター」と言われる手術前後の写真や、手術前、手術後のみの写真についても、治療の効果を示すものと捉えられるため、使用不可だ。

症例数についても、その医療機関で実施されたものであれば、該当期間を記すことで広告することが可能だが、特定の医師個人が実施した手術の件数は広告できない。専門医資格についても広告できるものが限定されており、現在、医師・歯科医師で広告できる専門医資格は計55(団体数は計62)となっている。たとえば、日本美容外科学会が認定する専門医は、この中に入っていないため広告することができないのである。

今回の法改正にあたって厚生労働省が公表している「医療法等の一部を改正する法律案の概要」には、「美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加等を踏まえ、医療機関のウェブサイト等を適正化するため、虚偽又は誇大等の不適切な内容を禁止」と明記。そのため、美容医療を展開しているクリニックのホームページは、特に厳しくチェックされる可能性が高い。今国会で改正法案が成立すれば、遅くとも来年6月までには施行されるため、該当する医療機関は今のうちに全面的にホームページを見直し、表現の修正を実施するべきだろう。

◆病気・ケガの緊急度を判定するアプリ「Q助」 3月末から運用開始
救急車の出動件数を抑制し、重症・重傷者の効率的な搬送を目指す

――消防庁
消防庁は、全国版救急受診アプリ「Q助」の運用を3月末から開始する。病気やケガの症状の緊急度を判定するもので、救急車の出動件数を抑制し、重症・重傷者の搬送を効率的に実施できるようにするのが狙いだ。

「Q助」では、まず「反応がない」「声が出せない」など命に関わる恐れのある症状に対する設問が用意されている。それらに該当する場合は「今すぐ救急車を呼んでください」と判定され、それ以外の場合は発熱やめまい、腰痛といった症状の選択画面に移る。痛みの強さや頻度などの設問に回答した結果、緊急度が高ければ「今すぐ救急車を呼んでください」となり、救急車を呼ぶほどの症状でないと判定されれば「医療機関で受診してください」、「様子を見てください」といったメッセージが表示される仕組みとなっている。

「医療機関で受診してください」と判定した場合の受け皿として、各地の医療機関を紹介がある厚生労働省のサイト情報も掲載。今後は、各自治体の消防本部が地元の医療機関情報を掲載することも視野に入れている。

消防庁がこうしたアプリの開発・運用に至ったのは、救急車の出動件数が増加しているのが背景にある。昨年12月に発表された「2016年版消防白書」によれば、2015年の救急出動件数は初めて600万件を突破する約605万件となり、救急搬送人員数は約547万人と6年連続で過去最多を更新。搬送者のうち、65歳以上が半数以上の56.7%を占めており、高齢化が進むことで今後も出動件数が増加していくことが予想されている。

また、搬送者の内訳を見ると、「入院不要の軽症」が49.4%ともっとも多く、医療機関まで救急車が行かなかった「不搬送」も全体の12%にものぼった。「不搬送」には、隊員が応急処置をした程度で済む軽症も多く含まれているほか、医療機関に行くためのタクシー代わりに活用されている事例も少なくない。こうした現状は、重篤患者の効率的な搬送を妨げているだけでなく、社会保障費の増加にもつながっているため、今回運用開始するアプリで、出動件数の抑制を目指す。医療機関としても、患者への周知を行うことで、適切な救急車活用を後方支援していくべきではないだろうか。

◆新専門医制度、厚労相が「抜本的対応を求める」可能性を示唆
地域医療や医師の働き方に影響が出ることに配慮

3月9日、塩崎恭久厚労相は2018年4月からの導入を目指して準備が進められている「新専門医制度」について、「必要に応じて、日本専門医機構に対し抜本的対応を求めていきたい」と発言。制度の見直しを迫る可能性を示唆した。

塩崎厚労相の発言は、自民党の自見はなこ氏の質問に対する答弁の中でなされたもの。自見氏は、3月中旬に日本専門医機構が専門医制度新整備指針をまとめるタイミングであることを踏まえ、2月に全国医系市長会が塩崎厚労相や菅義偉官房長官らに向けて新専門医制度の見直しを求める要望書が提出されたことを指摘。地域医療や医師の働き方に大きく影響する可能性があるため、重く受け止める必要があるとした。

それに対して塩崎厚労相は、新専門医制度が地域医療に配慮されたものになる必要があると答弁。また、専門医研修をスムーズに受けたとしても、すべて修了するのが29歳だという点に触れ、出産時期などを考慮する女性の立場にも言及。そのうえで、あくまでも医師国家試験に合格することが医師資格の証であり、専門医資格を取得しなければ高い評価が得られない仕組みになるのは望ましくない、との見方を明らかにした。

新専門医制度は、地域によって専門医が不足する「医師の偏在化」を解消するとともに、統一の認定基準を設けることも目的としている。厚生労働省は2011年から見直しの検討を始め、2014年には学会に対して中立的な立場となる第三者機関として日本専門医機構を設立。現在、19領域を持つ「基本領域専門医」と29領域を持つ「サブスペシャリティ領域専門医」の2つに大別し、専門医資格を希望する場合は、医学部を卒業後に2年間の臨床研修を受け、さらに3年以上の研修を受ける必要がある設計にしている。

問題は研修の実施機関。「大学病院などの基幹病院が中心」としているため、結果的に都市部に研修生が集まることになり、逆に地方の医師不足を加速させる恐れがあるとの批判が相次いでいる。そこで、もともと今年4月からの導入を目指していたのが、見直しを余儀なくされた。今回の塩崎厚労相の発言により、さらに導入時期が後ろ倒しとなる可能性もあり、日本専門医機構がどのような対応を行うのか目が離せない状況が続く。

◆プレミアムフライデーを活用したがん検診キャンペーンを実施
最先端のPET/CT検査が、ペア受診すると料金割引に

――医療法人社団あんしん会
2月22日、東京・千代田区にある医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブは、「プレミアムフライデー」を利用して「PET/CT検査」を格安で受診できるプランの提供を同24日からスタートすると発表した。毎年10月に厚生労働省が「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン」を行うなど、がん検診受診率向上が課題となっている現在、注目に値する取り組みだと言えそうだ。

同院が打ち出したプランは、プレミアムフライデーにペアで受診すると通常1人12万円(税別)の受診料が約16%引きの10万円になるというもの。プレミアムフライデーを実施している企業で就労している人を対象としている。

このプランで行うPET/CT検査は、最先端のがん検査だ。細胞の代謝を画像化するPET検査と、全身をX線でスキャンするCT検査を同時に行うことができる。がん細胞は一般的に糖代謝が活発なため、糖に似た構造を持つ専用の薬剤を全身に投与してその代謝を画像化するPET検査でがんの兆候を発見できる仕組みだ。薬の投与後は横になった状態でCTスキャンを受けるだけなので、内視鏡検査などと比べても身体的負担が少ないのが特長だ。特定の臓器に限らず、全身をまんべんなく調べられるのもメリットとなっている。

同院によれば、PET/CT装置を東京都内で初めて導入以降年間9,000件以上の検査実績があるという。所要時間は約2時間半なので、プレミアムフライデーで退社後に受診すれば通常の退社時間と同じくらいに検査を終えることができる仕組み。通常は仕事で忙しくてがん検診を受診する機会がない人に対し、受診機会を提供できるというわけである。

プレミアムフライデーは、その月の最後の金曜日に終業時間を午後3時に早めることで、消費の拡大と働き方改革の双方を目指した経済産業省のキャンペーン。月末の金曜日という繁忙期に、仕事を早く打ち切ることができるかという問題点もあり、一部報道では実施企業はわずか3%という結果も出ているなど賛否両論を巻き起こしているが、少なくとも大きな話題になっていることは間違いない。マーケティング的な意味でも、実際にどの程度の成果が表れるのか興味深いところだ。

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