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医療経営情報(2017年2月9日号)

2017/2/15

◆製薬など大手18社含む産官学共同提言組織「政策提言2016」発表地域包括ケアや医薬品の市販後調査の推進を提案

――医療ビッグデータ・コンソーシアム
2月6日、産官学政の有識者によって組織されている「医療ビッグデータ・コンソーシアム」(※)が「政策提言2016」を発表。医療機関の電子カルテやレセプトなどのデータを地域レベルで共有し、地域包括ケアや医薬品の市販後調査(PMS)などに活用することを提言した。

データの共有方法としては、クラウドサーバーを活用する案を提示。クラウドサービスには、不特定多数がクラウド環境を共有するパブリッククラウドと、導入者のみがクラウド環境を占有するプライベートクラウドがあるが、後者の仕組みを活用することで、特定の関係者のみがアクセスできるようにする。つまり、1つの医療機関だけでなく、複数の医療機関の診療データやレセプトデータを集約し、ビッグデータ化して民間も含めて広く活用できるというわけだ。

今後、在宅診療のニーズが高まることを踏まえると、医療機関を問わず個人に紐付いた診療データを共有できるメリットは大きい。医療機関同士の緊密な連携を図ることができるため、医療の効率化にもつながり、結果として、社会保障費の抑制も期待できるだろう。

政府も、医療ビッグデータを広く活用させることには力を注いでいる。1月20日の通常国会開会時には、安倍晋三首相が施政方針演説の中で「医療情報について、匿名化を前提に利用可能とする新しい仕組みを創設」すると明言。「ビッグデータを活用し、世界に先駆けた新しい創薬や治療法の開発を加速」させることに強い意欲を示した。
 
また、厚生労働省は安倍首相の施政方針演説に先立ち、1月12日に塩崎恭久厚生労働相を本部長とする「データヘルス改革推進本部」を発足。「世界に前例がないほど大きな規模」として、健康・医療・介護分野を連結させたICTインフラの構築を目指している。同省内では、部局横断で取り組む姿勢を明らかにしており、「ビッグデータ連携・整備WG」など4つのワーキンググループも新設する予定となっている。

このように、政府も民間も医療ビッグデータの活用に積極的だが、大きな問題がひとつある。それは、電子カルテの普及の遅れだ。日本の電子カルテ普及率は3割程度と言われており、特に小規模診療所は、初期コストが嵩むことを懸念して導入に消極的なところが多い。

しかし、最近はクラウド型の電子カルテシステムが急増。スマートフォンやタブレットから利用できるものも登場しており、初期コストがかからないのが特徴だ。「医療ビッグデータ・コンソーシアム」が提案するクラウド型システムは、標準化されたデータを一元管理する発想のため、そうしたクラウド型電子カルテとの連携も容易なことが想定され、医療現場のICT化を加速させる役割を果たせる可能性が高いのではないだろうか。

※「医療ビッグデータ・コンソーシアム」は、電子カルテやレセプト、特定健診やゲノムなど健康情報に関するデータを集積した医療ビッグデータが抱える課題の解決型提言組織として、2014年11月に発足。京都大学大学院医学研究科や国立循環器病研究センターのほか、アステラス製薬や武田薬品、日立製作所、三菱総合研究所など18社が参加している。

◆規制改革推進会議、診療報酬審査支払機関の寡占化解消を提言
3月末の計画・工程表次第で、委託見直しも辞さずとの意見も

――規制改革推進会議
規制改革推進会議が1月26日に開かれ、診療報酬の審査効率化について議論が展開された。出席した委員からは、審査支払機関である社会保険診療報酬支払基金(以下、支払基金)への不満を表す意見が続出。金丸恭文議長代理(フューチャー株式会社代表取締役会長)は、3月末までに作成される業務効率化計画・工程表の内容次第で、審査業務を委託すること自体を見直すべきだとしたほか、審査支払期間の寡占化を解消すべきとの意見も表明。厚生労働省の今後の対応が注目される。

診療報酬の審査については、医療ビッグデータとして活用したい政府の意向もあり、ゼロベースでシステムの見直しを行う方針が決まっている。さらに、規制改革推進会議からは審査支払機関の組織・体制についても抜本的な合理化・効率化を求めていた。それに対して厚生労働省は、各業務の見直しを行い、不要・非効率な業務を削減しつつ、支払基金以外でも業務を行える仕組みの構築を検討してきた。

しかし、同日の会議で厚生労働省から提示された検討案には、3つの方向性が示されたのみで結論は先送りされており、大田弘子議長(政策研究大学院大学教授)から「肝心なところが両論併記になっていて、どうやって改革工程表ができるのか」と厳しい指摘があった。また、金丸議長代理は、現在支払基金が保有するシステムは1970年代、80年台レベルであり、手作業に近い形でデータ処理を行っていることから、ITガバナンス能力の低さを疑問視。3月末の業務効率化計画・工程表の内容次第では、審査支払業務の委託自体を見直さざるを得ないとした。

さらに金丸議長代理は、患者ごとにレセプトの送り先が変わるのは医療機関に負担をかけるとして、レセプトは1カ所で受け取り、そこから信頼できる審査支払機関に振り分けを行う案を提示。別の委員からは、支払基金がレセプト審査を独占していることを問題視する声もあがっており、組織・体制の見直しにとどまらず、審査支払機関を検討する可能性すら出てきた。

同日の会議に出席した厚生労働省の谷内大臣官房審議官(医療保険担当)からは、「今までは単なる業務集団だったけれども、これからは頭脳集団として生まれ変わる」という塩崎恭久厚労相の発言の紹介もあり、同省もこの問題に関して危機感を抱いていることは明白。構造改革のエンジンとも言われる規制改革推進会議に、最後通告ともとれる厳しい言葉を突きつけられた同省がどのような対応を見せるか、まずは3月末の業務効率化計画・工程表に注目したいところだ。

◆調剤薬局大手アイングループ 大学病院と「がん専門薬剤師」養成
多職種が連携する在宅医療の高度化を加速させる可能性も

――株式会社アインメディオ
2月2日、調剤薬局大手アイングループの株式会社アインメディオは藤田保健衛生大学病院と「がん専門薬剤師」養成のための研修委託契約を締結したと発表した。薬局薬剤師がキャリアアップするための道筋を整えた形で、今後増えていく多職種連携の在宅医療をより充実したレベルに押し上げる可能性もありそうだ。

「がん専門薬剤師」は、がん薬物療法などについて高度な知識・技術と豊富な臨床経験を持っていると認定される薬剤師の上級資格。薬剤師としては唯一の「広告できる資格」であり、研究実績ではなく臨床能力を重視しているのが大きな特徴。そのため、認定研修施設で5年間の研修が必須であるほか、5年ごとの更新制となっており、更新時にも講習単位と臨床実績が必要となっている。
 
これらの厳しい条件が課せられていることもあり、薬局薬剤師が取得を目指すのは難しい資格とされてきた。実際、認定研修施設でもある藤田保健衛生大学病院によれば、「がん専門薬剤師」の9割以上が病院薬剤師だという。

しかし、今後在宅医療のニーズが増えることは確実な状況。厚生労働省の「患者調査」によれば、最新の発表である2014年の在宅医療の患者数は過去最多の15万人以上で、前回調査より約4割も増加。同調査によれば主な疾患の第5位にがんが入っており、単純な換算はできないものの、在宅医療のニーズを持つがん患者は相当数にのぼることが想定される。

現在厚生労働省は、在宅医療推進のため多職種連携を打ち出している。アイングループをはじめとする大手ドラッグストアチェーンは在宅医療への取り組みにも力を注いでおり、医療機関が薬剤師と連携する機会は今後ますます増えていくことは間違いない。

また、薬局は、2025年までにすべてを「かかりつけ薬局」とする厚生労働省のビジョンのもと、「がん専門薬剤師」をはじめとする専門薬剤師を配置していく構想が動き出しており、今回のアイングループと藤田保健衛生大学病院との提携はそのための施策でもある。つまり、診療所など病院薬剤師がいない小規模医療機関も、「がん専門薬剤師」がいる薬局と連携する可能性が高まってきたわけで、高度ながん治療を在宅医療メニューに組み込めるよう検討すべき時期がきたと言えるのではないだろうか。

◆オンライン診療アプリ「CLINICS」がAndroid版を提供開始
全国200以上の医療機関が導入 決済から薬・処方箋の配送まで可能

――株式会社メドレー
株式会社メドレーは2月3日、同社が運営するオンライン診療アプリ「CLINICS(クリニクス)」がAndroid版の提供を開始したと発表。これまで、Androidスマートフォンではウェブブラウザ経由で「CLINICS」を利用することができたが、専用アプリを使用することでスマートフォンに最適化したスムーズな操作が可能になったとした。

「CLINICS」は、昨年2月に提供開始。診療の予約からビデオチャットを活用した診察、診察費の決済から薬・処方箋の配送までワンストップで行うことができるため、患者は通院の負担なく治療を続けられる遠隔診療ソリューションだ。診察費の決済は、患者が登録したクレジットカードに請求されるため、患者はキャッシュレスで診療を受けることができ、医療機関にとっても会計手続きを省力化できる仕組みとなっている。

また、診療前に患者はオンラインで問診情報を登録するため、診療データを効率的に保存できるのもポイント。診療ごとに更新していけるため、患者にとっても医師にとっても有効なデータとして活用することが可能。現在、全国47都道府県の200以上の医療機関が採用しており、内科や小児科をはじめ皮膚科や精神内科、脳神経外科、アレルギー科などの診療科目のほか、AGA外来や禁煙外来、ED外来などの導入事例も多い。

従来の遠隔診療は、離島や僻地など「やむを得ない場合」のみ適用されてきたが、2015年8月に厚生労働省が「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」と題した通達を実施し、事実上解禁となった。しかし、現行の診療報酬制度が遠隔診療を考慮していないため、対面診療とくらべて診療報酬加算が少ないとの指摘も相次いでいる。

そうした声を受け、昨年11月に経済産業省が遠隔診療の活用を促す考えを明らかにした。診療報酬を対面診療と同等に引き上げるほか、禁煙外来や引きこもりなども遠隔診療として適用する方針としている。安倍晋三首相も同時期に遠隔診療を推進したい旨を発言しており、診療報酬の引き上げを含め、規制が大幅に緩和されていく可能性は高いと言える。今後の人口減なども考慮に入れると、今のうちに遠隔診療をオプションとして組み込んでおくことも、戦略的に必要となってくるのではないだろうか。

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