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医療経営情報(2017年1月26日号)

◆特定健診、かかりつけ医の診療データとの連携も視野に
ICT活用の遠隔保健指導は、事前届出を今年度から廃止へ

――厚生労働省
1月19日、厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」が開かれ、特定健診・保健指導の運用見直しについて議論が展開された。特定健診では、血中脂質検査などの項目が見直され、特定保健指導では、実施率の向上を目指してICTを活用した遠隔での初回面接を推進するなど、効率化の工夫や運用の改善を図っていく方針だ。

特定健診、特定保健指導は2008年度に導入され、2014年度からは特定健診とレセプトのデータなどを活用した保健事業(データヘルス)も始まっている。しかし、2014年度時点での特定健診の受診者が導入以来毎年100万人増加し、平均実施率が約50%であるのに対して、特定保健指導の平均実施率は18%と目標の45%には遠く届いていない。しかも、健保組合・共済組合の3割は実施率5%未満という状況であり、同検討会では「特定保健指導の趣旨への理解が十分とは言えない」としている。

そうした現状を踏まえ、今回の検討会では特定保健指導の実施率向上を促す施策が複数検討された。とりわけ、「初回面接」を重視し、特定健診当日に初回面接を開始できるような運用方法へと改善することを検討。健康意識が高まっているタイミングで受診者に働きかけることができるほか、受診者にとって利便性が高いため、実施率の向上につながることが期待できるとした。

初回面接に関しては、ICTを活用した遠隔面接も可能だが、今まで必要だった国への事前届出を今年度から廃止する方針。2018年度からは、実施状況の報告書の中に遠隔面接の項目を設けて自治体が取り組みやすいようにし、国でもデータを蓄積・評価できる体制を整える。遠隔面接に関しては、現在実施している自治体からは、効率的な保健指導ができると評価されており、規制緩和されることで実施自治体が増えていくことが見込まれる。

また、特定健診に関しては医療機関との連携強化も検討。かかりつけ医から受診をすすめることの重要性を確認するとともに、受診者本人の同意があれば、その診療データを特定健診結果のデータとして活用できるようにすることも検討。そのためのルール整備も検討していきたいとした。社会保障費を削減するとともに、特定健診をかかりつけ医で実施することを促していく狙いも透けて見える。医療機関にとっては、かかりつけ医機能をより強化させていくうえでも、特定健診の実施がより重要となってくるのではないだろうか。

◆2016年の医療機関の倒産、負債総額が6年ぶりに200億円超える
大型倒産も3件発生、医療事故や医師不足、多角経営が原因

――帝国データバンク
企業信用調査大手の帝国データバンクは、1月13日に「医療機関・老人福祉事業者の倒産動向調査」を発表。老人福祉事業者の倒産は2年連続で過去最悪の数字となった。一方、医療機関の倒産は、2015年の25件に比べて34件と増加。負債総額は6年ぶりに200億円を超える235億7100万円となり、2015年の48億9300万円に比べて大幅に増える結果となった。

負債総額が大幅に増えた原因は、大型倒産が相次いだことにある。2014年以来、2年ぶりに負債総額30億円以上で倒産した病院が3件も発生した。それぞれを見ていくと、倒産のリスクがどこにあるかが見えてくる。

 まず、昨年3月に負債総額42億8100万円で倒産した神戸国際フロンティアメディカルセンターは、2014年11月に開院してからたった1年強しか経過していない。神戸市を主体とした産学官連携プロジェクト、神戸医療産業都市構想の一翼を担っていたが、生体肝移植移植手術を受けた患者の脂肪が相次いだことで経営難に陥った。

昨年7月に負債65億3300万円で倒産した埼玉県厚生農業協同組合連合会は、熊谷市と久喜市で2つの病院を運営。農協系の病院として80年以上の歴史があり、地域の中核的な病院として経営難となった理由について、慢性的な医師不足を挙げた。熊谷市、久喜市の双方とも人口10万人あたりの医師数が埼玉県全体を下回っており、医師数の地域格差が経営に影響した例だと言える。

昨年12月末に倒産した武蔵野総合病院は、負債総額34億円。設備投資による借入金が資金繰りを圧迫し、民事再生法の適用を申請した。2006年に通所介護施設を、2015年に予防医療センターを新規に開設するなど、多角的に事業拡大を行ったのが仇となったと思われる。

医療事故が患者の信頼を失うことは当然だが、医師数の地域格差は医療界全体に関わる深刻な問題でもある。格差解消のために医師のキャリア形成支援策に力を入れているところも増えているが、自治体や大学との連携を強化するなど、医療機関自体が主体的に人材確保策へ取り組む重要性が増しているのではないだろうか。

多角経営に関しては、介護関連事業への参入は慎重に行うべきだろう。確かに、医療のノウハウは介護と親和性が高く、連携しての事業展開を考えるのは自然の流れだ。しかし、事業としてのノウハウは別物。介護関連の倒産でもっとも多いのが、参入5年以内の事業者だというデータがあることも鑑みれば、新規事業の取り組みには慎重を期することが求められると言えよう。

◆医療ビッグデータを活用し、創薬・治療法の開発を加速
薬価改定は毎年実施へ 首相の施政方針演説

――厚生労働省
安倍晋三首相は、1月20日の通常国会開会に際して施政方針演説を行い、医療ビッグデータを活用する新たな仕組みづくりへ強い意欲を見せた。また、薬価制度にも言及し、現行の2年に1回の薬価改定を毎年実施する意向を明らかにした。

医療ビッグデータに関しては、厚生労働省が12日に健康・医療・介護を連結させたICTインフラの構築を目指した「データヘルス改革推進本部」を立ち上げたばかり。これは、予防・健康管理・重症化防止のための効果的なサポートを担うが、安倍首相は「世界に先駆けた、新しい創薬や治療法の開発を加速」する仕組みを構築したいとしている。

この仕組みについては、施政方針演説の前日に内閣官房が「次世代医療基盤法案」の今国会提出を目指すと明らかにした。5月に改正個人情報保護法が施行されると、診療結果などの医療情報を本人の同意なしで第三者に提供できなくなるが、「匿名加工医療情報提供事業者」を政府が認定する仕組みにすることで、例外的に民間事業者が医療ビッグデータを集積・分析できるようにする。この「次世代医療基盤法案」は2018年に施行し、創薬や治療法の開発に役立てたい考え。

なお、医療ビッグデータの民間活用を急ぐのは、社会保障費削減のため薬価の毎年改定を実現したい意向が働いているとも読み取れる。高額がん治療薬「オプジーボ」の薬価が大幅に引き下げられたように、薬価の改定機会を増やすことは、製薬業界にとって収益性の低下につながる懸念があるからだ。開発に投じた費用が回収できなければ、創薬に対する製薬企業のモチベーションが損なわれる可能性もあるため、開発を加速させるための環境を整えることでカバーしようという狙いもありそうだ。

◆「小児科オンライン」、シンガポールの日系クリニックと連携
海外在住者でも日本人医師に相談できる窓口として機能

――株式会社Kids Public
1医療相談サービス「小児科オンライン」を運営する株式会社Kids Publicは、1月19日にシンガポールの医療機関、ニチイインターナショナルクリニックとの連携を発表。海外在住者が日本人小児科医に医療相談しやすい環境を提供することで、子育てにおける海外での孤立を防ぐ。

「小児科オンライン」は、LINEやSkypeを通じたテレビ通話やチャットで、小児科医師にリアルタイムで医療相談ができるサービス。医療行為はできないため、診断や処方はできないものの、動画や写真を通じて具体的なアドバイスができるのが強みだ。小さな子どもの急な不調は、救急受診するべきかどうか迷うものだが、そうしたニーズに応えられるサービスだと言える。

日本国内ならば、自治体の救急電話相談など、夜間やかかりつけ医が休診のときでも相談できるインフラがあるが、海外では日本語で相談できる窓口はほとんどないのが現状。Kids Public社が連携を開始したニチイインターナショナルクリニックは、介護大手のニチイ学館が2013年に日本人向けクリニックとして開院し、日本語による診察を行っているが、時間外のサポートが手薄になってしまうのが課題だった。

今回、連携を開始したことで同クリニックは患者向けに「小児科オンライン」の無料クーポンを受診ごとに配布。時間外でも子どもの症状について日本人小児科医に相談できるようにした。救急受診の相談以外にも「日本で標準とされる離乳食の進め方を知りたい」「日本での標準治療を聞きたい」といった、子育てに関わる相談が寄せられることも想定され、不安に陥りがちな子育て中の親をサポートできるサービスとして機能することが期待される。海外進出を考えている医療機関にとっては、診療時間外の日本人家族向けサービスとして、こうした遠隔医療相談サービスとの連携も検討に値するのではないだろうか。

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