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医療経営情報(2017年1月12日号)

◆厚生労働省が「データヘルス改革推進本部」設置
医療・介護データを一元管理し ビッグデータとしての活用目指す

――厚生労働省
1月12日に、厚生労働省は「データヘルス改革推進本部」を新設。塩崎恭久厚労相を本部長として、医療と介護、健康診断などに関するデータを一元管理し、ビッグデータとして生かすための仕組みづくりに取り組む。ICT(Information Communication Technology=情報伝達技術)を活用した次世代型保険医療システムを実現させ、2020年に本格稼働させたい意向だ。

医療や介護の効率化が期待される新たなICTインフラは、年々増え続ける社会保障費を抑制する役割も期待されている。まず、医療・介護・健康診断などのデータを一元管理してビッグデータ化することで、効率的かつエビデンスに基づいた適切な保健医療サービスが提供可能だ。今後の人口減少に伴い、過疎化が進むことも予想されるが、ICTを活用することで遠隔診療の充実化を図ることができ、医療従事者の負担軽減や働き方の合理化も促すことができる。

また、ビッグデータを活用することで、製薬企業やヘルスケア企業がより適切なマーケティングを行うことができるため、充実したヘルスケアサービスや画期的な創薬を生み出すことにもつながるだろう。一般的な個人としても、ビッグデータへアクセスすることで自らの健康状態を把握できるため、予防的な健康管理を行うことが可能となる。

塩崎厚労相は10日の記者会見で「保険者、地方自治体などと医療機関を含めると、ICTとしては例を見ない大きさのシステムとなる」と発言。昨年11月の未来投資会議で安倍晋三首相が「医療・介護のパラダイムシフトを起こす」と表明していたように、医療界、介護界の価値観が革命的に変化する可能性が高いため、「データヘルス改革推進本部」で展開される議論の内容には今後も注目していきたい。なお、12日の第1回会合では、医療介護工程表などについて議論が進められる予定だ。

◆がんゲノム医療のコンソーシアム、今年夏に設立へ
官・民を巻き込んだオールジャパン規模のプロジェクトに

――厚生労働省
昨年12月27日、厚生労働省は国立がん研究センターおよび国会がん患者と家族の会とともに「がんゲノム医療フォーラム2016」を開催。出席した塩崎恭久厚生労働相は、今年夏にも「がん治療開発コンソーシアム」(仮称)を設立し、がんゲノム医療の早期実用化を目指す考えを明らかにした。

ゲノムとは、遺伝子を意味する「gene(ジーン)」と、総体を意味する「-ome(オーム)」を合わせた造語で、DNAに含まれる遺伝情報全体を指す。ゲノム医療とは、個々の遺伝情報をもとに診断や治療を行う手法で、従来の臓器別に実施される治療法に比べて効果が高く、副作用も少ないと期待されている。

現在、一部のがんでは、原因となる遺伝子を特定したうえで治療方針や治療薬を決定しているが、すべての患者には対応できていないのが現状。すでに海外では、3年間で1100億円の予算を投じるアメリカの「Cancer Moonshot」をはじめ、国家プロジェクトとして実用化への取り組みを進めている国も多く、ゲノム医療の推進はもはや世界的な潮流とも言える。

政府もそうした状況は十分に理解しているようだ。「がんゲノム医療フォーラム2016」には、安倍晋三首相もメッセージを寄せており、「健康先進国としてゲノム医療の実用化を進め、人工知能などの科学技術も駆使してがんとの闘いに終止符を打たなければならない」としている。

なお、今年夏をめどに設立する「がん治療開発コンソーシアム」(仮称)は、厚生労働省をはじめとする全省庁から、大学や研究機関、ITや製薬、医療機器を取り扱う民間企業まで巻き込んだ共同事業体にしたい意向。ゲノム情報のデータベース構築や、遺伝子解析技術やAI(人工知能)を活用したゲノム医療基盤の開発などに「オールジャパン」で取り組んでいく方針だ。

昨年は免疫治療薬「オプジーボ」も脚光を浴びたほか、12月9日には改正がん対策基本法が成立したばかり。同フォーラムを共催した国立がん研究センターも、昨年11月にAIを活用した総合的ながん医療システムの開発プロジェクト開始を発表している。全死因の1位であるがんを取り巻く医療が、急速にパラダイムシフトを迎えつつある。

◆東京都、がん患者雇用企業に助成金を支給
2017年度予算案に約2億円を計上

――東京都
東京都は1月7日、がんや難病の患者を採用・継続雇用した企業に助成金を支給する方針を明らかにした。都によれば、患者本人ではなく、企業への助成を行うのは都道府県で初めて。平成29年度予算案に盛り込む方向で、約2億円を計上する。

助成金の対象となるのは、がんや難病を発症した患者を新規に採用した企業および、発送した社員の雇用を継続した企業。6カ月以上継続雇用することが条件となる。患者1人あたり40~60万円を支給する方針だ。発症後休職し、復職した後6カ月以上雇用した場合は、30万円を助成する。

今回の都の取り組みは、進化を続ける医療技術が背景にあることは間違いない。がんは、依然として日本国民の死因の第1位であるものの、従来に比べて生存率は格段に上昇。昨年、国立がん研究センターが公表した5年相対生存率(全部位全臨床病期)は68.8%。1997年には62.0%だったことから比べるとかなり改善しており、国立がん研究センターは「化学療法や放射線治療、早期発見技術の進歩が貢献していると考えられる」としている。

また、国立がん研究センターは昨年、初めて10年相対生存率も発表。全部位全臨床病期で58.2%という数値で、約6割のがん患者が10年以上生存していることが明らかとなっている。自ずと、治療をしながら働き続けることを希望する人が増えていることが窺えよう。

しかし、雇用する企業側にしてみると、治療と仕事の両立を促すため、時短勤務や柔軟な休暇制度を含む多面的な支援を行わなければならない。産業医や医療機関との連携なども求められるため、ある程度のコストが必要となる。そうした意味で、企業に対して助成を行うのは、安心して働ける労働環境を増やすために必要な措置だと言えるだろう。医療機関や産業医側としても、こうした助成が行われることを企業や患者に周知していくことで、より適切ながん医療を実施していく環境づくりに貢献できるのではないだろうか。

◆アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を起こすタンパク質が発見される
症状へ根本からアプローチできる新たな治療薬・治療法に期待

――九州大学
九州大学は1月10日、同大学生体防御医学研究所の研究グループが、アトピー性皮膚炎で「かゆみ」を引き起こす物質を突き止めたと発表。世界的に影響力を発揮する研究成果となることは確実で、その詳細は1月9日にイギリスの科学雑誌「Nature Communications」にも掲載。アトピー性皮膚炎の症状を根本から治療する画期的な新薬開発につながる可能性が高く、近い将来、治療法が大きく変わることが予想される。
 
アトピー性皮膚炎発症に伴うかゆみは、ヘルパーT細胞(細胞表面にCD4抗原を発言しているリンパ球の亜集団)から産生される「IL-31」に起因している。しかし、従来はどのような仕組みで産生されているのか明らかになっていなかった。

そこで、九州大学生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授、大学院医学研究院の古江増隆教授、大学院4年生の山村和彦さんらの研究グループは、DOCK8というたんぱく質を欠損した患者が、重篤なアトピー性皮膚炎を発症していることに着目。その機能を分析したところ、DOCK8が発現できないよう遺伝子操作したマウスでは、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因となるIL-31が非常に多く産生され、皮膚炎を自然発症することがわかった。

さらにDOCK8のメカニズムを解析すると、「EPAS1」というたんぱく質がIL-31の産生を誘導していることが判明。マウスだけでなく、アトピー性皮膚炎の患者でも同様の結果が出たという。

アトピー性皮膚炎は、全国民の1割以上が患っているとされる症状。強烈なかゆみを伴うため、ストレスを引き起こし生活の質を低下させがちだ。かゆみ止めとして抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使われることが多いが、原因が異なると効果がないため、かゆみが治まらないことに悩まされる人も少なくないのが現状だ。

しかし、今回の研究成果でかゆみを起こす物質「EPAS1」が特定されたため、それに作用する薬を開発されれば、格段に効果を発揮することが期待される。当然、外来での診療方法も変わってくることは間違いなく、今後の推移に注目する必要があるだろう。

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