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医療経営情報(2016年12月22日号)

2017/1/10

◆ 未就学児への医療費助成に対する国保の減額調整措置が廃止へ
2018年度から 厚労省、他の少子化対策の拡充を求める 

――厚生労働省
12月17日、厚生労働省で「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」が行われ、未就学児の医療費助成を独自に行う自治体(区市町村)に対して補助金を減額している制度の廃止を決めた。2018年度から実施する。

原則として、未就学児の医療費の自己負担割合は2割となっているが、実際はすべての自治体でなんらかの助成を行っている。これまで、財源を公平に配分するという観点から、子どもの受診機会が増えることで医療費の膨張につながるとして、国民健康保険への国庫負担金を減額して調整を行ってきた。

しかし、この減額措置は自治体への「ペナルティ」としての意味合いが大きいため、廃止の要望が相次いでいた。6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」で、今年末までに見直しを含めた検討を行うとされていたため、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会などで議論が重ねられてきた。

助成を受ける対象に所得制限を設けている自治体もあるため、同様の制限を設定することや、医療機関の窓口での一部負担を求めることも検討されたが、子育て支援を優先。無条件での廃止を決定するに至った。この決定を受け、会合に出席した全国知事会は「一定の前進」と評価。そのうえで、未就学児に限らず子ども全体の医療費助成に対して減額措置を廃止するよう要請している。

しかし、医療費を含む社会保障費が年々増え続けているのも事実。2017年度予算の概算要求では、社会保障費の自然増を6400億円としていたところ、最終的に1400億円の圧縮に成功しているが、それでも5000億円も伸びているため、財源の確保に苦しんでいる状況は変わらない。子どもの医療費に配慮した分、高齢者など別の層への負担がより増加する方向に進む可能性もあり、来年度以降も、厚生労働省が今後どのような制度設計を行っていくか目が離せない状況が続く。
◆ 2015年度の「医療法人」、赤字割合は21.3%
医療以外の事業を展開する法人は経営が安定する傾向

――独立行政法人福祉医療機構
12月20日、独立行政法人福祉医療機構は「平成27年度 医療法人の経営状況について」と題したレポートを発表。診療報酬改定の谷間の年だったこともあって、赤字法人の割合は前年度から0.4ポイント増加の21.3%と微増に留まったものの、依然として厳しい状況が続いている。また、同レポートでは、医療法人の事業多角化と経営状況の関係についての考察を行っており、医療以外の事業を実施する法人は経営が安定している傾向にあると指摘。裏を返せば、医療事業のみだと不安定な経営に陥りがちとも言えそうだ。

医療貸付事業を行っている福祉医療機構では、毎年融資先より決算書の提出を受けており、医療法人の経営状況についてレポートを作成。今回は1,335法人を対象に分析を行った。

同レポートでは、収益率0.0%以上を黒字法人、0.0%未満を赤字法人と定義付けているが、2013年度に赤字法人の割合が7ポイント以上増加。以来3年間、20%台で推移しており、厳しい状況が続いていることがわかる。一昨年度に比べ、昨年度の赤字法人の割合はわずかに増えたが、一昨年度は消費税が8%上がった年でもあるため、昨年度は数字以上の落ち込みがあったものと見られる。

では、大きな収益をあげている法人にはどのような特徴があるのだろうか。同レポートによれば、法人が保有する施設数は、収益規模が大きいほど多い。医療機関以外の施設数にも同様の傾向がある。中でも、老健(介護老人保健施設)や介護保険関係施設・事業を保有する法人は多く、40億円以上の収益規模がある法人の約6割が介護事業を展開。約8割が老健(介護老人保健施設)を保有している。
しかも、老健を経営している場合など、「法人に一定規模の収益をもたらす、病院に次ぐ主力事業を実施すること」が経営の安定につながるとした。規模の大小はあれど、医療法人の経営安定を実現するには、事業の多角化が大きなキーワードとなっていることは間違いない。とりわけ、医療との親和性の高い介護事業との組み合わせは、今後医療機関が生き残るための戦略的なパッケージとして、さらに注目されるのではないだろうか。
◆ NEC、AI技術を活用した創薬事業へ本格的に参入
がん治療用ワクチンの開発と実用化を目指す新会社を設立

――日本電気株式会社
12月19日、日本電気株式会社(NEC)は創薬事業への参入を発表した。独自のAI(人工知能)技術を活用して新薬候補物質を発見し、実用化を支援する。12月16日には、NECが発見したがん治療用ペプチドワクチンの開発・実用化を推進する新会社「サイトリミック株式会社」を設立。オプジーボの薬価問題で一躍注目を集めたがん免疫療法が、大手電機メーカーの参入によってさらに脚光を浴びそうだ。

NECは、最先端AI技術群「NEC the WISE(エヌイーシー ザ ワイズ)」の1つとして、短期間かつ低コストでワクチン候補となるペプチドを発見できる「免疫機能予測技術」を持っている。この技術を活用し、山口大学および高知大学との共同研究と山口大学での臨床研究を積み重ねて発見したのが、肝細胞がんや食道がんなどの治療に効果が期待できるペプチドだ。しかも、このペプチドは日本人の約85%に適合するという。

新たに設立したサイトリミック社では、このペプチドを主な有効成分とするワクチンを用いて治験用製剤の開発や臨床・非臨床試験を進め、新たながん治療薬の実用化を目指していく。

高額な薬価で問題となったオプジーボのように、近年は免疫を治療した新たながん治療法が推進され、注目を集めている。「がんを攻撃する免疫」を活性化するペプチドワクチンの研究も進んでいるが、約5000億通りのアミノ酸配列の中から適した組み合わせを発見する必要があるほか、人によって異なる白血球型に適合するペプチドを探し出さなければならず、膨大なコストと時間がかかることがネックだった。

その点、NECのAI技術を活用すれば、コストと時間の問題をクリアできるため、より安価で汎用性の高いがん治療薬の実用化に期待が集まる。NECの新規参入は、がん治療の新薬開発に力を注ぐ製薬各社にとっては脅威であると同時に、がん免疫療法が新たな段階へと足を踏み出す契機となるかもしれない。
◆ 大阪で外国人観光客向けの24時間医療案内コールセンター開設
英・中・韓の3カ国語に対応 外国語診察が可能な診療所を紹介

――大阪観光局
12月20日、大阪観光局は観光と医療の情報を提供する無料コールセンターを来年3月に開設すると発表。医療案内は24時間365日体制とし、英語・中国語・韓国語の3カ国語に対応する。医療の知識を持つ通訳が待機し、必要に応じて適切な医療機関を紹介していく。旅行先の国で携帯電話をそのまま使える国際ローミングサービスを申請していない訪日外国人のために、大阪観光局が提供している無料のWi-Fi経由で通話できる仕組みも導入する予定となっている。

今年、訪日外国人数は初めて2000万人を突破。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてさらに右肩上がりに伸びていくことが想定され、旅行大手JTBは2017年の訪日外国人数が2700万人に達すると予測している。そのため、早急な外国人向けの医療環境整備が必要だと言えよう。

観光庁は3月に、外国人旅行者の受け入れが可能な医療機関を全国320カ所で選定しているが、急な体調不良で困窮する外国人が目的の医療機関へとたどり着くのは決して簡単ではないため、気軽に相談できる窓口が有効なのは明らかだ。

また、医療に関するコミュニケーションはより正確さが求められるため、関連知識を持つ通訳も必要。今回の大阪観光局の取り組みでは、コールセンターに医療の知識がある通訳が待機するが、今年11月から外国人向けの医療通訳サービスを始めた福岡市では、インターネットを通じて医療通訳士とリアルタイムにTV通話ができるシステムを導入。医療通訳士を1カ所に集めなくてもサービスの提供が可能となるため、同種の取り組みを展開する自治体が増えることも予想される。

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