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医療経営情報(2016年12月8日号)

2016/12/16

◆完全無料のクラウド型電子カルテ「きりんZERO」がリリース
紙カルテを複合機スキャンで電子データに変換するサービスも

――きりん株式会社
12月1日、電子カルテの開発や運用保守を行うきりん株式会社は、クラウド型電子カルテ「きりんZERO」の正式版をリリース。初期導入費用や月額利用料などすべて無料で利用できるため、まだ電子カルテを導入していない医療機関にとっては朗報だ。

「きりんZERO」は、マルチデバイスに対応しているため、インターネット環境が整っていればパソコン、タブレットなどで利用できる。WindowsにもMacにも対応している。
日本医師会標準レセプトソフトであるORCAと連携しているため、診療報酬が改定されてもソフトの入れ替えなどは必要なく、常に最新の状況に即したレセプトを作成することが可能だ。

診察ごとに病名チェックを行う機能も装備しているため、レセプト病名チェックの手間を省くことができ、病名のつけ忘れをすることもない。また、小児科での薬剤処方では体重によって適正な薬剤料を算出する必要があるが、患者の年齢・体重を入力すれば自動的に算出されるのも便利。さらに、無料の診療予約システムを搭載。患者は無料アプリから予約できるため、電話対応を減らすことにもつながる。

また、電子カルテを導入するときの懸念のひとつが、既存の紙カルテのデータ化だが、きりん社は複合機スキャンするだけで電子データに変換できるソフトも開発。データを入力する必要もなく、カルテ以外にも保険証をスキャンすれば電子カルテに紐付けることができる(現在は、株式会社リコーが提供する複合機のみ連携)。

きりん社によれば、無料で電子カルテを提供できるのは、取得したカルテデータを医療ビッグデータとして活用するからだという。個人情報が特定できない形で解析し、製薬会社や保険会社と協業していく予定だ。
処方時に薬剤情報を提供する「きりんMR」を搭載しているのも、無料で提供できる理由のひとつ。製薬会社から情報掲載費用を得て、新薬やジェネリック医薬品などの情報を掲載する仕組みとなっている。

政府は電子カルテの導入を積極的に促進しているが、現状では全体の約30%しか導入していない。普及を妨げている最大の要因はコスト。きりん社によれば、大手電子カルテメーカーの価格帯は350万円前後、年間の保守料は40万円程度になるという。
その点、「きりんZERO」を利用すれば、処方時に薬剤情報が掲載されるものの、導入コストも保守コストも一切かからない。レセプト病名チェックや無料予約システムなどで人的コストを減らせるのも大きく、結果として医療機関の運用コストを大幅に削減することが可能となる。
完全無料という、これまでにないビジネスモデルが登場したことで、電子カルテ業界に大きな影響を与えることは間違いない。今後、類似のシステムが次々に登場することも期待できるため、まだ電子カルテを導入していない医療機関は、無料での運用を視野に入れてもいいのではないだろうか。

◆全国の医師の3分の1を対象にした勤務実態調査が開始
女性医師の勤務環境改善や、地方での定着対策につなげる意

――厚生労働省
11月29日、塩崎恭久厚生労働相は記者会見で、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」を行うと発表した。全国に約30万人いると言われる医師の3分の1にあたる10万人以上を対象とする大規模な調査で、厚生労働省として初めての試み。地域や診療科によって医師の人数が偏っている現状を解消し、適正な配置を行うのが狙い。

調査は、無作為に選んだ全国の約1万2000の医療機関が対象。回答は医師が直接返送する形で、勤務する医療機関に回答内容が提供されることはない。回答の締め切りは12月21日で、結果は来年1月に公表される予定。
質問内容は、出身地や出身大学、家族構成や収入のほか、1週間の勤務時間や当直の回数、将来の働き方の希望まで多岐にわたる。地域や勤務する医療機関の規模などによって、医師の働き方がどのように変わるのかが明らかにされるとともに、へき地勤務についての質問もあり、地方に医師を定着させる対策のためのヒントにもなりそうだ。
また、出産育児や介護による休業取得状況なども質問項目に含まれている。出産をきっかけに離職した医師に対しては、「どのような取り組みがあれば離職せずに済んだか」といった質問もあり、女性医師の勤務環境の改善に取り組もうとする厚生労働省の姿勢が見える。

厚生労働省では、時代の急激な変化に合わせた医療・介護の供給体制の構築を目指し、10月に「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」を設立。2カ月弱の間に5回の会合を設けてきた。
塩崎厚労相は、今回の10万人調査の結果を同検討会で議論し、将来の医療ビジョンに反映して医師・看護師の適切な需給を考えたうえで、それに見合った制度改正を行っていきたいとしている。つまり、看護師や介護職員の需給体制見直しにもつながる調査になるわけで、どのような結果が出るのか注目される。

◆アレルギー疾患対策、初の基本指針案がまとまる
情報提供のためのホームページ開設や拠点病院の指定に着手

――厚生労働省
12月2日、厚生労働省でアレルギー疾患対策推進協議会が開かれ、初となるアレルギー疾患対策の基本指針が取りまとめられた。地域ごとに専門的な治療を行う拠点病院を指定することや、かかりつけ医との連携強化、災害時のアレルギー食の確保と提供、正確な情報提供のためのホームページ開設などが盛り込まれている。

ぜんそくや花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患患者は急増中。厚生労働省は、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っているとしている。しかし、専門医が不足しているため適切な治療を受けられない人も多く、「標準化医療の普及」が求められているのが現状だ。
2012年には、東京の小学校で食物アレルギーを持つ生徒が給食でチーズ入りチヂミを食べて死亡した事故もあり、2014年にアレルギー疾患対策基本法が成立。厚生労働省ではアレルギー疾患対策推進協議会で、具体的な対策を検討してきた。

2日に取りまとめられた基本指針では、インターネット上に不適切な情報があることも指摘。アレルゲンの除去や回避を含めた予防方法や薬剤の使用方法、アレルゲン目ねき両方を含む適切な治療方法、アレルギー疾患に配慮した居住環境や生活環境など、科学的根拠に基づいた正確な情報を発信するホームページの開設も行うとしている。

花粉症対策としては、花粉のモニタリングを行って適切な情報提供を行いつつ、花粉飛散を軽減するため森林の整備も行うとした。災害時のアレルギー食提供については、乳製品アレルギーの乳児のためのアレルギー用ミルクを確保する方針。また、食物アレルギーに関しては、「食品に関する表示」の適正化を図るため、食品関連業者に表示制度の遵守を促すほか、従業員教育も実施して理解を広めたいとしている。

◆子どもの医療費助成に対する自治体への減額措置を見直し
余った予算は少子化対策の拡充に 2018年度から

――厚生労働省
厚生労働省は、11月30日に開かれた厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の医療保険部会で、子どもの医療費に対する助成を促す考えを示した。2018年度から、未就学児への医療費助成に対しては、国民健康保険の補助金減額を行わない方針。子育て世帯への支援を充実させるとともに、少子化対策に力を入れるのが狙いだ。

この方針は、今年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に則ったもの。子どもの医療費に対する国民健康保険の減額措置について、年内までに見直しを含め検討することになっていた。

本来、未就学児の医療費自己負担割合は2割、小学生以上は3割だが、現実的には、すべての自治体が子どもの医療費を助成。とりわけ未就学児の医療費は、自治体の4分の3が実質的に無料としている(支払った医療費を還付することで、実質的に無料になる自治体を含む)。残りの4分の1も、1回の受診で数百円程度と極めて少額だ。

こうした助成が医療費の膨張を招いているとして、自治体に対する国民健康保険の補助金は減額されていた。しかし、少子化対策に反しているとして、自治体は減額措置の廃止を要望。子育て世帯への支援や少子化対策を充実させたいとの狙いもあり、今回の見直しに至った。

厚生労働省は、未就学児の医療費を見直しの対象とする方針。ただ、無条件に減額措置を廃止するのではなく、何らかの一部負担金や所得制限を設けている場合に限定する可能性もある。
その裏付けとなっているのが、同省が試算した減額措置を廃止した場合の影響額だ。中学生以下のすべての子どもの医療費を対象とした場合、113億円の影響が出るとしている。未就学児のみを対象とする場合の影響額は75億円。
一方、医療費助成に一部負担金を設けている場合、未就学児のみを対象とするならば影響額は23億円。所得制限を設けている場合は14億円、一部負担金も所得制限も設けている場合は4億円と試算している。
医療費は13年連続で過去最高を更新しており、昨年度は初めて40兆円を突破。医療保険部会では、同日に高齢者の自己負担上限額を引き上げる方針を示すなど、可能な限り医療費を抑制する方向で調整を進めている。しかし、今後の急激な人口減少が予想される中、政府は少子化対策も喫緊の課題として捉えており、今回の減額措置廃止につながった。しかし、このことによって浮く予算はあくまで自治体のもの。少子化対策も自治体ごとの取り組みとならざるを得ず、どのような形になるのか不透明なのが課題と言えよう。

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