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医療経営情報(2016年12月2日号)

2016/12/7

◆70歳以上の医療費、自己負担の上限額引き上げへ
後期高齢者医療制度の軽減特例も段階的に廃止する方針

――厚生労働省
11月30日、厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会の医療保険部会が開かれ、高齢者の医療費の自己負担上限額を、収入にかかわらず全体的に引き上げる方針が示された。来年8月からの実施を目指している。また、75歳以上が対象となる後期高齢者医療制度の軽減特例も、段階的に廃止していくとした。高齢者の負担が増すことは確実で、高齢者の外来受療率の減少傾向に拍車がかかりそうだ。

医療費の自己負担額に上限を設けている「高額療養費制度」では、70歳以上で年収370万円未満の場合、現在の上限額は月額4万4000円。それを、来年8月に5万7600円にする。また、年収が370万円以上ある場合、現在は一律で「現役並みの収入がある」とされ、8万100円+1%を上限額としているが、改正案ではそれをさらに3区分に分け、年収1160万円以上の場合は25万2600円+1%まで引き上げる。住民税非課税の低所得層に対しては、世帯の場合は据え置きとするものの、単身の場合は8,000円から1万円とする。

後期高齢者医療制度の軽減特例は、2020年までに廃止する方向で検討が進められている。年収153万円~211万円の人を対象に5割軽減している特例は、早くも来年度に廃止。最大9割軽減している専業主婦などを対象とした特例は、段階的に軽減率を落としていき、2020年までに廃止するとした。なお、この段階的な廃止期間に75歳以上となった人には、軽減特例は適用されない。つまり、収入の多寡にかかわらず、医療費の自己負担額が引き上げられるため、特に低所得層へ大きな影響を及ぼすことが予想される。

これらの案の背景にあるのが、11月17日に開かれた財政制度審議会であることは明らかだ。来年度予算案の概算要求では、社会保障費の伸びを6400億円としていたのが、財政制度等審議会では5000億円にとどめたいとしたため、その「財源」を確保するための措置だと言えよう。高齢者の自己負担額が引き上げられるたびに外来の受療率が下がっているが、今回の案が実施されれば、さらに減少していくのは間違いない。高齢者が患者の大半を占める医療機関は、集患の手立てを検討するタイミングではないだろうか。

◆「第二のオプジーボ防止」のため、薬価改定の毎年実施を提言
原価公表の義務付けや、「ゾロ新」の薬価引き下げも視野に

――経済財政諮問会議
11月25日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、現在2年に1回行われている薬価改定を毎年改定に変更する提言がなされた。また、類似薬のない新薬の価格が申請ベースで行われていることを問題視。透明性を担保するため、原価の内訳の公表を義務付けるべきだとした。短いスパンで薬価を見直すルールを設定することで、膨らみ続ける社会保障費を抑制することが狙いだ。

毎年改定の提言を行ったのは、同会議の民間議員である新浪剛史氏(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)。来年2月の緊急薬価引き下げが決定したオプジーボを例に挙げ、現行の2年に1回の改定では、迅速に価格再算定ができないと訴えた。また、オプジーボのように、適応追加によって急激に販売額が増えたケースでも、現行制度では50%以上薬価を引き下げられないことを踏まえ、毎年薬価改定を行うことを提言した。

また、新薬の中でも先発薬が、製薬会社が申請する原価計算で薬価が決められていることに触れ、透明性・妥当性の検証が欠如していると指摘。薬価の透明性を担保するために、原価内訳の公表を義務付けるべきだとした。

さらに、新浪氏は既存の医薬品と同一の薬効がありながら化学構造を少し変えて販売する改良型新医薬品、通称「ゾロ新」にも言及。効果を薬価に反映するべきと述べた。これは、「ゾロ新」の薬価引き下げを視野に入れているものと推測されるため、将来的に「ゾロ新」が後発医薬品(ジェネリック)と同等レベルの薬価になる可能性もありそうだ。
そのジェネリックについても、薬価引き下げを提案。現在は先発薬の5割とするのが原則だが、新浪氏は「国際的に見て高すぎる状況」として、少なくとも3~4割にするべきだとしている。

これらの提言に対し、同会議に出席していた塩崎恭久厚労相も同調。薬価制度の抜本的な改革を行い、毎年の薬価見直しを実施する以外にも、年4回ある新薬収載の機会を活用して薬価を見直すことを検討したいと明言した。
しかし、毎年薬価改定をする場合、システムの更新や価格調査などで現場の負担が増すことは確実。製薬団体の反発が予想されるため、今後の推移を注意深く見守る必要があるだろう。

◆オプジーボ類似薬「キイトルーダ」が非小細胞肺がんも使用対象に
薬価の決定は来年2月のオプジーボ薬価引き下げ後となる見通し

――厚生労働省
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、11月24日にがん治療薬「キイトルーダ」(MSD)について、非小細胞肺がんの適応追加を了承。年内にも正式に承認される見込み。一方で、キイトルーダは11月の薬価収載を見送っており、どのタイミングで販売が開始されるのかも注目される。

キイトルーダは、免疫反応を活用してがん細胞に働きかける治療薬。来年2月に緊急薬価引き下げが決定したオプジーボの類似薬で、悪性黒色腫(メラノーマ)で最初の承認を受け、次いで非小細胞肺がんの適応が追加された経緯も似通っている。非小細胞肺がんは、日本人の死因で最多と言われる肺がんの80%を占めており、この2つの新薬は、画期的な治療法とされる免疫療法の牽引役としても期待されていた。

しかし、国内では先行して販売されたオプジーボは、体重60kgの男性患者に1年間投与する場合約3500万円かかると試算されるほど高額な点が問題視された。13年連続で過去最高を更新している医療費をさらに圧迫する恐れがあるとして、2018年度に行われる薬価の定期改定を待たずに緊急薬価引き下げが決定。当初は規定通り最大25%引き下げで調整が進んでいたが、海外のオプジーボ価格と比較して高額なことから議論が再燃。11月16日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、50%引き下げとなることが了承された。

当初、キイトルーダは11月に薬価収載をする予定だったが、新薬の薬価は類薬のそれが基準となるため、オプジーボをめぐる一連の動きを見て見送りを決定。次回の中医協は来年2月に開催されるため、薬価の決定や販売開始はそれ以降となることが確定した。

キイトルーダは、オプジーボが隔週での点滴静注であるのに対して、3週間間隔と使用頻度が少なくて済み、用量も体重によって変える必要がない。非小細胞肺がんの患者に対して初回治療で使用できる(※)のも大きな違いで、医療現場からの注目も集まっていた。また、類薬が増えることで免疫療法そのものが活性化し、進化していくことも見込まれるため、早めのタイミングでの販売開始が望まれる。

※腫瘍組織においてPD-L1発現した腫瘍細胞が占める割合が50%以上の場合。EGFR遺伝子変異陽性、またはALK融合遺伝子陽性の患者に対しては、キイトルーダを非小細胞肺がんの初回治療で使用することはできない。

◆訪問診療・訪問看護の記録作業をスムーズにし、
ペーパーレス化を実現するソリューションを来年度中に提供開始

――株式会社MetaMoJi
ソフトウェアの開発・販売を手がける株式会社MetaMoJiは、11月21日にタブレット端末を活用した医療機関向けの3つのソリューションを発表。中でも、2017年度中の提供開始を目指す「GEMBA医療ソリューション(仮称)」は、訪問診療・訪問看護の業務を効率化し、大幅なペーパーレス化の実現を後押しすることが期待される。

「GEMBA医療ソリューション(仮称)」の原型は、MetaMoJi社が建築現場のIT化を目指して製品提供を進めている現場向けデジタルノートアプリ「GEMBA Note」。これは、土木・林業や建築現場などで使用されるノート、「野帳」をデジタル化させた「eYACHO」(株式会社大林組と共同開発)がもととなっており、手書きで図面を書き込めるほか、PDFや画像を複数枚貼り付けることや、そのまま書類化できる表計算機能も内蔵している。

これらの機能を医療機関向けに適用させたのが、「GEMBA医療ソリューション(仮称)」というわけだ。手書きで入力できるため、問診票の記録に便利なほか、その場で撮影した写真を取り込んで診療記録に貼り付けることもできる。しかも、時間軸で分類できるため、書類を整理する手間もかからず、大幅なペーパーレス化に寄与するため院内の省スペース化にもつなげられる。録音した音声も日付で管理できるため、治療方針などの説明を保存しておくだけでリスクマネジメントができるのも見逃せない。

さらに有効な活用法として想定されるのが、訪問診療や訪問看護の現場。デスクがあるわけではないので、キーボードを使えないのはもちろん、ノートを広げるのも困難だ。そんな状況下でも、タブレット端末を持ち込むだけで患者と対面しながら診療記録を入力できるほか、すぐに電子カルテに送信できるため、後から二重登録をする必要もない。今後、さらに訪問診療や訪問看護のニーズが増えることが予想されるため、欠かせないソリューションのひとつになる可能性は高いのではないだろうか。

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