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介護経営情報(2016年11月25日号)

2016/12/2

◆日本郵便、高齢者向け「みまもりサービス」を全国展開
タブレットを活用した介護保険適用外の生活支援サービス

――日本郵便株式会社
 11月18日、日本郵政グループの日本郵便株式会社は、高齢者向けの生活支援サービス事業に参入すると発表した。日本IBMやNTTドコモなど8社が共同出資する新会社を設立し、郵便局員による定期的な自宅訪問や買い物支援、タブレットを活用した健康支援など多角的なサービスを展開する。サービスを開始するのは来年2月の予定だ。

新会社は、日本郵便および同じ日本郵政グループのかんぽ生命保険を中心に、日本IBMやNTTドコモ、綜合警備保障(ALSOK)、セコム、第一生命、電通が出資。過疎地を含め、全国津々浦々に2万4000局以上(2016年10月31日現在)ある郵便局のネットワークをベースに、各社のノウハウを組み合わせた生活支援サービスを展開する。

とりわけ注目したいのは、日本IBMおよびNTTドコモとの協業。日本郵便は、昨年5月にアメリカのIBM社およびアップル社と提携し、昨年10月からアップル社のタブレット端末「iPad(アイパッド)」を利用した「みまもりサービス」を試験的に実施してきた。高齢者がタブレットを利用することで、遠隔地に住む家族や親族が健康状態を確認できる仕組みだ。日本IBMとNTTドコモのノウハウを注入することで、さらにこのサービスを拡張させ、タブレットから地域の商店やスーパーの商品を注文し、郵便局員が届ける買い物支援へとつなげることができる。
また、タブレットをALSOKやセコムのネットワークとつなげることで、体調が急変したときに警備員が高齢者の自宅へ駆けつける仕様も加わる。さらに、医療・介護のビッグデータと連携することができれば、より適切な医療が受けられる仕組みへと発展させることも可能と言えよう。

そもそも日本郵便は、2013年から一部地域で高齢者宅の「みまもりサービス」を実施してきた。現在は、北海道、宮城、山梨、石川、岡山、長崎の一部の市町村が対象だが、サービス内容を充実させたうえで全国に展開すれば、郵便事業だけでなく、一気に介護事業の最大手となる可能性すらある。
社会保障費をいかに削減するかが政府の大きな課題となっている現在、介護保険適用外の高齢者向け生活支援サービスは、今後さらに需要の拡大が見込まれる。各分野の大手が結集したこの取り組みは、新たな介護ビジネスのモデルケースとなりうる可能性もあるため、今後の動向から目が離せない。

◆介護現場での外国人就労が全面解禁へ
技能実習受け入れ団体を監督する機構も新設

――厚生労働省
11月18日、参議院本会議で在留資格に「介護」を新設する「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」および「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」が成立した。1年以内に施行される。これにより、外国人が介護福祉士として就労することや、介護現場で外国人の技能実習生を受け入れることが全面的に解禁された。深刻化する人手不足の解消につなげられるかどうか、今後の推移に注目が集まる。

これまで、外国人の介護福祉士資格取得は、経済連携協定(EPA)を締結しているベトナム、フィリピン、インドネシアの3カ国の出身者のみに認められてきた。10月4日には厚生労働省が「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」を開き、訪問介護サービスにも従事できるようにする方針を固めたが、受け入れを開始してから8年間で累計受け入れ人数は約3800名にとどまっている。
一方、厚生労働省の推計によれば、2025年に介護職員は約38万人も不足することが見込まれている。いわゆる「2025年問題」と言われるように、国民の3人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えることとなるため、この10年間で介護分野に携わることができる人材を増やしていかなければならない。

今回の法改正は、そうした事情を踏まえ、広く海外から介護人材を受け入れることが狙い。介護現場で働きながら技術を学ぶ技法実習制度を拡充したのは、外国人がまず留学生として入国し、介護の技術や日本語を習得したのちに、介護の在留資格に切り替えて長期間就労するキャリアパスを描いているからだ。
しかし、これまでもEPA介護福祉士の日本語能力が不足していると指摘する声が多かったように、介護施設利用者や日本人介護職員とのコミュニケーションを不安視する向きも少なくない。今まで、技能実習の職種に「対人サービス」が設けられていなかったのも、その問題の存在を裏付けている。

とは言え、前述したように介護人材の確保は喫緊の課題のひとつ。厚生労働省も、外国人受け入れ介護施設への日本語講師の派遣費用を助成し、母国語の相談窓口を拡充するなど後方支援の体制を整えている。逆に、人権侵害行為があった場合は罰則が適用されるほか、受け入れ先の事業所や雇用先企業を監督する「外国人技能実習機構」の新設も決定しているため、介護事業所にとっては、いち早く適切な外国人受け入れ体制を整えることが求められていると言えよう。

◆生活援助および福祉用具貸与の自己負担額引き上げを提言
財政審 「要介護度2以下」の軽度者が対象

――財政制度等審議会
11月17日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、「平成29年度予算の編成等に関する建議」を麻生太郎財務相に提出。その中で、「生活援助サービス」および「福祉用具貸与」の自己負担について、要介護度1・2の軽度者を対象に大幅な引き上げを提言した。現状の原則1割負担を取りやめることで、膨らみ続ける社会保障費を抑制するのが狙いだ。

生活援助サービスについては、それのみの利用回数が要介護度5の場合は3%程度であるのに対し、要介護度1・2の軽度者は40~50%以上となっており、しかも報酬全体の70%以上を軽度者が占めていることを指摘。民間の家事代行サービスが安くても1時間925円(交通費別)であるとし、生活援助サービスの1回あたりの利用者負担額が平均187円程度(20分以上45分未満)と割安なことも問題視している。
こうした現状を踏まえ、同審議会では、重度者への給付を重点化するべきとして自己負担額を大幅に引き上げることを提案。さらに、軽度者に対する生活援助は地域支援事業へと移行すべきだとした。

福祉用具の貸与についても、生活援助サービスと同様に重度者への給付を重点化するため、要介護度2以下の軽度者に対する自己負担割合を引き上げるべきとしている。
さらに、貸与額には地域差があることも指摘し、用具貸与の仕組みを抜本的に見直すべきだと提言。たとえば、要支援度1の場合、1カ月あたりの全国最低価格は新潟県の2,783円だが、和歌山県は4,833円と2,049円も差がある。同一製品であっても、平均価格を大きく上回る価格で取引されている例もあるため、貸与価格の標準を定めるべきとした。その価格が決定するプロセスについても、一般に情報開示するべきとしている。

10月12日に、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の介護給付費分科会で、生活援助サービスは介護保険の対象として継続する方針が示されたばかり。福祉用具の貸与額についても、同分科会ですべての価格情報をインターネットで公表することで適正化を図ることになっている。しかし、改めて来年度予算の建議で示すことによって、財務相および政府が社会保障費の削減に本腰を入れていることを表明したと言える。

また、生活援助サービスや福祉用具貸与のみにとどまらず、介護保険の自己負担割合を医療保険と同様に、所得水準に応じて3割負担まで求めるべきとしているほか、介護納付金を総報酬割へと早急に移行すべきとしており、いずれにしても早期のタイミングで、利用者の自己負担割合を増やさざるを得なくなりそうだ。

◆財政審、「自立支援への取り組み」強化を提言
機能訓練を行わない事業所には介護報酬の引き下げも視野に

――厚生労働省
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、11月17日に麻生太郎財務相へ提出した「平成29年度予算の編成等に関する建議」の中で、「重度化の防止」および「自立支援への取り組み」を行わない事業所に対しては、介護報酬の減算措置を行うことも視野に入れるべきと提言した。11月10日に開かれた未来投資会議で、介護保険制度について安倍晋三首相が「自立支援に軸足を置いて設計し直す」と明言したことに足並みをそろえた形だ。

厚生労働省の調査によれば、通所介護の費用額は年々増え続けている。その割合は、要介護者の自立支援を行う小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護よりも多く、しかも利用者の約6割が要介護度1・2の軽度者となっているのが実情だ。
同審議会は、そうした軽度者への介護サービスが、小規模型通所介護で実施されていることを問題視。小規模型は、他よりも基本報酬が高く設定されていることもあり、重度者への給付を重点化させる意味でも、地域支援事業への移行を急ぐべきだとしている。
 
さらに、同審議会は、軽度者への介護サービスの実態にも疑問を投げかける。重度化を防ぎ、自立支援を促すための機能訓練が行われておらず、「利用者の居場所づくり」にとどまっている場合には、減算措置をとることで介護報酬の適正化を図るべきだとした。

実際、要介護度別の状態区分を見れば、要介護度1・2の場合は、何らかの支えを必要とするものの、立ち上がりや歩行自体はできるものとされている。それよりもさらに軽度とされる要支援度1・2の対象者については、2018年度までに訪問介護・通所介護の給付対象から除外されることが決定。財政健全化のため、社会保障費の削減が大きな課題となっている現在、今後は要介護度1・2も除外対象として検討される可能性は高い。
これまで利用者の大半が軽度者だった事業所にとっては、この提言が実際に施行されたときの経営的ダメージは非常に大きい。機能訓練を含めた自立支援の取り組みを開始するなど、早めに対策を講じる必要があるのではないだろうか。

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