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医療経営情報(2016年11月17日号)

2016/11/22

◆「オプジーボ」の薬価緊急引き下げ、50%に決定
2017年2月から 保険適用の高額薬が減る可能性も

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会
11月16日、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会は、がん治療薬「オプジーボ」(小野薬品工業)の薬価を50%引き下げることを決定した。2017年2月から適用される。今回の引き下げは、2年に1回行われる薬価改定とは別途実施された緊急的措置。膨らみ続ける医療費の抑制対策として行われたものだが、高額薬の保険適用を見送る動きも顕在化してきており、保険適用下の先進医療を妨げる可能性も出てきた。

「オプジーボ」は、免疫反応を活用してがん細胞に働きかける新薬。生物由来の原材料を使用した、いわゆるバイオ医薬品のひとつで、開発費用が嵩むため非常に高額となる。実際、「オプジーボ」も、免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見したことで2016年のノーベル生理学・医学賞の候補にも登った京都大学の本庶佑名誉教授の研究をもとに開発しており、10年以上の年月がかかっている。

しかし、「オプジーボ」の薬価は、患者1人あたり年間約3,500万円とされている。当初は皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)のみの承認だったため対象患者数は数百人規模だったが、昨年末に非小細胞肺がんに対する追加承認を受けたことで数万人に急増。今年8月には腎臓がんの一部で承認を受け、今月には悪性リンパ腫の一種である「ホジキンリンパ腫」にも有効性が認められて近く承認される見通しとなっており、対象患者数はさらに増加していく見込み。仮に患者数が10万人規模になれば、3兆5000億円規模の医療費となる。

厚生労働省は、10月にいったん最大25%引き下げを中央社会保険医療協議会に提案したが、海外のオプジーボ薬価と比較すると、それでも高額であると政府内から指摘を受けた。そこで同省は、緊急措置での薬価引き下げで適用される市場拡大再算定制度に照らし合わせ、さらに25%引き下げることを検討。今月9日には安倍晋三首相が日本医師会の横倉義武会長と会談し、50%引き下げの方針を伝えていた。

この「オプジーボ」の薬価をめぐる一連の動きで懸念されるのは、製薬会社の新薬開発への意欲が削がれることだ。実際、オプジーボと同様の免疫反応を活用した悪性黒色腫の新薬「キイトルーダ」は、すでに承認を受けているものの、保険適用への希望を見送っている。明らかに薬価引き下げを警戒しての対応であり、今後、同様の高額薬が登場しても保険適用を見送らざるを得ないケースが出てくる可能性もある。こうした薬価抑制の動きが、先進医療の普及を妨げることにつながらないか、今後の動きからも目が離せない。

◆医療機関、2019年までの敷地内全面禁煙化へ加速
日本医師会、日本歯科医師会などが賛意を表明

――厚生労働省
11月16日、厚生労働省の受動喫煙防止対策強化検討チームワーキンググループは、2回目の公開ヒアリングを開催。医療機関の敷地内を全面的に禁煙とし、違反した場合は喫煙者のみならず医療機関の施設管理者にも罰則を適用する同省の方針に対し、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の四団体は、いずれも賛成の意向を示した。

先月行われた1回目の公開ヒアリングでは、四病院団体協議会が全面禁煙に反対意見を表明。「療養病床は患者にとって生活の場に近い」として、屋外の喫煙室設置などの緩和策を求めていた。
しかし、16日のヒアリングでは、日本医師会などの四団体が「受動喫煙が健康に及ぼす影響は大きい」として、厚生労働省の提案に対し全面的に賛成した。さらに、日本医師会の今村聡副会長は、同省の提案では喫煙室の設置を認めた飲食店やホテルなどに対しても、全面禁煙にするよう提言。より禁煙規制を強化することを求めた形で、四病院団体協議会との認識の差異が浮き彫りとなった。

政府は、「スモークフリー社会」の実現に強い意欲を見せている。その背景にあるのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催だ。世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピック・パラリンピック開催都市に、たばこの煙がない「スモークフリー」を求めており、開催までに禁煙区域を大幅に増やすことを目指している。その前年の2019年にはラグビーW杯を開催するため、そこをメルクマールとして受動喫煙防止策を強化していく方針だ。
10月12日に発表した規制強化案では、医療機関を「敷地内禁煙」に、飲食店やホテル、駅、空港などは壁で完全に仕切った喫煙室の設置のみを認める「原則建物内禁煙」としているほか、禁止場所で喫煙した場合は、喫煙者のみならず、施設管理者にも罰金を課す厳しい方針を示している。今回、日本医師会などの四団体がさらに厳しい受動喫煙防止策を求めたことで、医療機関の全面禁煙化のみならず、より一層禁煙治療への取り組みが促進される可能性も高いと言えそうだ。

◆端末・ブラウザフリーの遠隔医療通訳サービス「Medi-Call」が
福岡市内の観光案内所・ホテルでの試験提供をスタート

――株式会社日本医療通訳サービス
株式会社日本医療通訳サービスは、インターネットを利用した遠隔医療通訳サービス「Medi-Call」を11月1日より福岡市で試験提供している。サービスの提供を行っているのは、同市のホテル旅館協会加盟の宿泊施設13カ所と、同市随一の繁華街である天神にある福岡市観光案内所。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、外国人患者の受け入れ体制強化が課題となっているだけに、新たな外国人医療のスタイルとして注目を集めそうだ。

訪日外国人旅行者数は今年、初めて2000万人を突破。在留外国人数も増加傾向にあり、昨年末の時点で約223万人と、一昨年末に比べて11万人以上も増えている。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時にはさらに多くの外国人が集まることが予想されるため、外国人向けの医療環境を整えるのは急務と言えよう。
しかし、外国人向けの医療は、コミュニケーションが最大のネック。日本人同士でも伝達が難しい医療用語は、一般の通訳を介すると誤って伝わるリスクもあり、医療通訳士を増やすことは政府も課題に挙げてきた。ところが、医療通訳士は全国に2000人程度しかいないと言われており、医療機関が安定的にリソースを確保するのは難しい状況だ。

「Medi-Call」は、そうした現状の課題をクリアできる仕様となっている。事前予約不要で、医療通訳士がリアルタイムに対応。スマートフォンやタブレットに内蔵されているカメラを使ったTV通話ができるため、外国人患者に安心を提供できる。マルチデバイス対応で、端末やブラウザの制限も一切ない。専用機器の導入や、複雑な設定やインストールなども不要で、申込みから5分で利用開始できるのもメリットだ。初期費用は3万円~、月額2万円~とコストパフォーマンスも高い。

また、経済産業省の「グレーゾーン解消制度」を活用し、医師法・医療法・薬剤師法・医薬品医療機器等法に抵触しない適法なサービスフローであることが証明されているのも見逃せない要素だ。外国人患者が増えている、もしくは今後増えることが見込まれる医療機関にとっては、こうしたサービスを導入することで、他との差別化を図るだけでなく、大きな強みに変えられる可能性もあるのではないだろうか。

◆今年末までにレセプト形式の見直し案を固める
審査結果の通知および審査基準の情報開示も効率的に

――内閣府 規制改革推進会議
11月15日、内閣府の規制改革推進会議が開かれ、「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保」について議論が展開された。その中で、診療報酬の審査のあり方の見直し案について、今年末までに固める方針を改めて確認した。

社会保険診療報酬支払基金では、すでにレセプトの電子化はほぼ完了。ICTを活用した診療報酬の審査自動化・オンライン化が可能な環境が整っているが、紙レセプト時代と同様に、人が目視で再審査する非効率な取り組みを行っている。
そこで、今年6月の閣議で今年中に見直し案を固めることを決定。診療報酬審査においては、ICTを最大限に活用し、人手が必要な事務作業を極小化するとともに、精度を高めて透明性を確保することが求められてきた。
具体的には、まず明確な審査判断基準を全国統一レベルで策定。コンピューターチェックでも高精度な審査ができる状態にする。そのため、レセプト自体もコンピューターチェックに適した形式に見直し、同時に請求段階での記載漏れや誤記などの防止措置も構築することとなっている。
同会議によれば、こうした見直しを行うことで、社会保険診療報酬支払基金の職員や審査委員のみならず、医療機関の負荷軽減にもつながるとしている。また、ICT化を徹底することで審査結果の通知が効率的に行えるのも、双方にとって大きなメリットだ。2018年度からは、医療保険のオンライン資格確認などのシステム運営も社会保険診療報酬支払基金が担うことになっている。この運営をスムーズに行うためにも、早期の審査改革が求められる状況であることは言うまでもない。
また、これらの取り組みが実現することで、レセプトデータを積極的に活用できる仕組みができあがることも見逃せない。より質の高い医療を早期に実現させるためにも、政府および関係機関の迅速な取り組みが必要であり、今後の推移にもぜひ注目したいところだ。

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