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介護経営情報(2016年10月28日号)

2016/11/2

◆介護ロボット導入の事業者にインセンティブ付与
介護報酬加算制度の導入も本格検討へ

――経済財政諮問会議
10月21日に首相官邸で開かれた経済財政諮問会議で、センサーやロボット、ITなどを導入する介護事業者にはインセンティブの付与を行うべきだとの提言がなされた。深刻な人手不足が続く介護業界で、生産性向上を促すのが狙いだ。提言を受け、安倍晋三首相は具体化へ向けた検討を加速させることを明言した。

提言を行ったのは、学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏や経団連会長の榊原定征氏ら4名。事前に提示した「給付と負担の適正化に向けて」と題した資料の中で、医療・介護費抑制に向けたインセンティブの強化や効率化などを推進すべきだとした。その具体策として挙げたひとつが、センサーやロボット、ITなどを導入する介護事業者への介護報酬加算制度導入だ。

介護ロボットには、被介護者を動かしたり入浴や排泄をサポートしたりする「介護支援型」、歩行やリハビリ、食事などをサポートする「自立支援型」、見守りや癒しを行う「コミュニケーション・セキュリティ型」などがある。しかし、1台数百万円から数千万円と非常に高額なため、介護施設への導入は遅々として進んでいない。

政府は今年6月にも、介護ロボットを導入する事業者に対して介護報酬を加算する方針を明らかにしている。また、経済産業省は今後ロボットの価格が下がり、介護報酬の加算などで介護施設への導入が進むことで労働環境の改善や人手不足の解消につながると期待を表してきた。

今年8月からは、厚生労働省と経済産業省が連携し、介護ロボットを導入して得られる改善効果をデータ化する実証実験を開始。そのデータをもとに、どの程度の加算が適切かを算出し、2018年度の介護報酬改定に盛り込む方針を示している。2017年度に一部前倒しで改定が行われることが決定していることや、今回の提言を受けての安倍首相の発言もあり、早急な検討が期待されるとともに、具体的にどの程度のインセンティブが設定されるのかも注目したいところだ。
◆経団連会長、「総報酬割」に容認姿勢示す
介護給付費抑制を先行させることが条件

――一般社団法人 日本経済団体連合会
10月24日、経団連の榊原定征会長(東レ株式会社・相談役最高顧問)は記者会見で、各保険者の総報酬額に応じて利用者が介護納付金を負担する「介護納付金の総報酬割」に対し、条件付きながら容認する考えを表明した。10月18日に経団連が発表した「医療・介護制度改革に対する経団連の考え方」では、総報酬割に対して明確に反対する立場をとっていたが、段階的な導入へと舵を切りつつある政府の方針に一定の理解を示した格好だ。

厚生労働省が、2018年度をめどに導入を目指している「介護納付金の総報酬割」は、被保険者の所得水準に応じて納付金額を計算するもの。現在の人数に対して割り振る方法ではなく、収入の多い人に多く支払ってもらう考え方であり、とりわけ大企業の健保組合の負担が増えることは確実だ。

厚生労働省の試算では、総報酬割を導入した場合は国の支出を約1450億円抑制できるとし、相対的に所得が低い1650万人は負担が軽減されるとしている。しかし、大企業の社員などが多く加入している健保組合の負担は逆に増し、加入者1200万人以上にしわ寄せが来ることが予測されている。

そのため、経団連は一貫して反対の立場をとってきており、榊原会長は同会見でも「介護納付金の総報酬割は安易に取り易いところから取るというものであり、まずは介護給付費の抑制を図るべきである」と批判の姿勢は崩さなかった。しかし、同時に「介護給付費の抑制が実現するのであれば、総報酬割を議論する余地はあり、何が何でも反対するものではない」とも述べ、条件付きで容認する可能性を明らかにした。経団連では、高額介護サービス費や生活援助サービスの自己負担額引き上げについても提言を行っており、それらが実行されることが、総報酬割受け入れの条件となってくる模様だ。

一方、介護費の自己負担額引き上げについては、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会などで、利用者団体が相次いで反対の立場を表明している。年内に結論を出したい政府側としては、経団連と利用者団体との難しい調整が必要な局面を迎えたと言えそうだ。
◆介護現場での外国人労働者受け入れを大幅に拡大
長期就労も可能に 関連法案が衆議院で可決
10月25日、衆議院本会議で「出入国管理・難民認定法改正案」が与党(自民党・公明党)に加え民進党、日本維新の会などの賛成多数で可決された。この改正案では、外国人が日本で働きながら技術を学べる「技能実習制度」の対象職種に「介護」を追加。技能実習期間終了後も、長期の在留資格を認める方向だ。

技能実習制度は、アジアなど開発途上国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的として、1993年に創設された。現在の実習期間は最長3年。しかし、介護のスペシャリストとして認められる「介護福祉士」の資格を取得するには、3年以上の実務経験もしくは福祉系高校、養成施設などを修了しなければならないため、実習期間を5年に延長する改正法案の成立も今国会で目指す。

介護分野での外国人労働者受け入れに関しては、現在、経済連携協定(EPA)ルートのみに限定されている。具体的にはインドネシア、フィリピン、ベトナムの3国からで、累計受け入れ人数は今年9月時点で3800人を超えた。働き場は特別養護老人ホームなどの施設に限定されているが、10月4日に厚生労働省が「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」を開き、訪問介護サービスにも従事できるようにする方針を固めたばかりだ。

技能実習期間を最長5年間とすることで、EPA締結国以外の国から来日した外国人も、介護施設で実務経験を積みながら介護福祉士資格取得のために学ぶことができ、資格取得後は長期間日本で働くことが可能になる。厚生労働省の推計によれば、2025年に介護職員は約38万人不足することが見込まれており、介護分野に携わることのできる人材を広く受け入れることで、人手不足の一助としたい狙いだ。

一方、EPA介護福祉士の日本語能力が不足している点もかねてから指摘されており、さらに外国人を広く受け入れることで介護サービスの品質低下を懸念する声も少なからずある。厚生労働省は、これまでも外国人受け入れ介護施設への日本語講師派遣費用を助成してきたが、さらにサポート体制を強化する必要が求められることは必至と言えよう。
◆「療養病床」を新タイプの介護施設に転換
2018年度から順次実施 約14万床が対象

――社会保障審議会 療養病床の在り方等に関する特別部会
厚生労働省は、10月26日に社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」を開き、「療養病床」を新たな形の介護施設に転換する方針を示した。2017年の通常国会に関連法の改正案を提出し、2018年度から3年以内に実施を終えたい意向。

高齢者などが長期入院する「療養病床」は、2017年度末までに廃止の方針が決まっている。介護型の病床が含まれ、医学的に入院する必要がないと判断されるケースが多いことが理由で、40兆円超と膨らみ続ける医療費を抑制するための措置だ。そのため、受け皿となる施設の整備が課題となっていた。

そこで、26日の特別部会では、「療養病床」を新たな3タイプの施設に転換する案が示された。容体が安定しない人向けには、2タイプの施設を用意。容体が急変しやすい人に対応できるよう、24時間体制で医師・看護師が常駐する、医療機能を内包した「医療内包型 I型」と、比較的容体が安定した人を多少とした「医療内包型 II型」を想定している。

「医療内包型 I型」の施設基準は、現行の介護療養病床に相当させ、医師は「48対1」、看護師・介護士は「6対1」としている。「医療内包型 II型」の施設基準は老健施設以上とし、医師は1名以上(100対1)、看護師・介護士は「3対1」としている。

一方、「医療の必要性が多様だが、容体は比較的安定している」患者を対象とした施設として、もう1タイプの「医療外付型」を提案。医師の常駐は施設基準に設けず、看護師・介護士は「3対1」としている。有料老人ホームに近い施設となる想定だ。既存の建築物を利用する場合は、個室であれば基準を満たすことができるため、現在療養病床を設ける医療機関が、併設の施設として運営を続けやすい提案となっている。併設施設であれば、夜間や休日などの往診対応を行うことも可能であり、26日の特別部会でも「現実的な案」とする賛成意見が多数を占めた。一方で、療養病床よりもサービスが低下することを懸念する声もあがっており、今後の実施に向けてより具体的な議論が必要になることが見込まれる。

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