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医療経営情報(2016年10月6日号)

2016/10/12

◆ 「かかりつけ医」以外の受診は追加負担を
高齢者への負担も増加へ 財務省提言

――財務省
財務省は10月4日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会を開き、年末までに決定する医療・介護の制度改正の提言案を示した。この中で、「かかりつけ医」以外の医療機関を受診した場合は、患者が一定額を負担することを求めている。また、70歳以上に優遇措置が設けられている「高額療養費制度」や75歳以上の「後期高齢者医療制度」の見直し案も提示。いずれも、8年連続で過去最高を更新し、2年連続で40兆円を突破するなど年々膨らみ続ける医療費を抑制するのが狙いだ。

患者の医療費負担増加については、2011年にも財務省が受診時定額負担を提案。すべての医療機関を受診するごとに、1回100円程度の定額を徴収する案だったが、一般外来患者のみが負担することの根拠が不明確であることなどから、医療界を中心に反発意見が続出。その結果、検討課題として先送りとなっていた。しかし、今回の定額負担案は「かかりつけ医」以外の医療機関での受診に限定。余分な検査費用や薬代を減らし、医療を効率化するために「かかりつけ医」を推奨してきた政府の姿勢を後押ししており、より現実味のある提案となっている。

どの医療機関を「かかりつけ医」とするかの基準はまだ示されていないが、財務省は原則1カ所に限定したい考え。そのため、患者の健康状態を把握している近隣の診療所のみになる可能性が高い。当面は内科や小児科など日常的に通院する診療科が対象で、耳鼻咽喉科や眼科など特定の診療科については必要に応じて「かかりつけ医」に加えられる見通しだ。

なお、追加負担分は診療費の一部として組み込み、医療機関の取り分は増加させない方針。現在、紹介状なしで大病院を受診するときの追加負担(5000円以上)にも適用する。また、医療費が高額になる場合に毎月の自己負担額に上限を設けている「高額療養費制度」でも、70歳以上に一律で優遇される措置を見直し、一定所得がある人には負担を求めるほか、「後期高齢者医療制度」で保険料負担を最大9割軽減する特例の廃止にまで言及した。「年齢を問わず公平に負担する」という社会保障費の考え方を前面に押し出す提言と言えそうだ。
◆ 「薬用石けん」の危険性が明らかに
約800品目の承認製品に切替えを促す

――厚生労働省
9月30日、厚生労働省は「トリクロサン等を含む薬用石けんの切替えを促す」と発表した。これは、米国食品薬品局(FDA)が、9月2日にトリクロサンなど19種類の成分を含む抗菌石けんの販売を1年以内に停止すると発表したことを受けての措置。

トリクロサンは、抗菌成分を持つ物質として石けんやハンドソープ、ボディソープ、歯磨き粉、化粧品などに使用されている。1990年代にO157(病原性大腸菌)被害が拡大したときに注目され、配合された薬用石けんが広く普及してきた。しかしFDAは今回、トリクロサン配合の薬用石けんに通常の石けんよりも殺菌効果があるとの根拠はないと発表している。

日本では、トリクロサン配合の石けんは医薬品医療機器法に基づき、医薬部外品として厚生労働省の承認を得て販売されてきた。現在、すでに流通していない製品を含め約800品目が承認されているが、同省は流通する製品の把握を急ぐとともに、1年以内に代替製品の承認申請を行うか、承認取り下げの取り下げを行うよう各都道府県の衛生主管部へ通知。なお、代替製品の承認審査は迅速に実施するとしている。
すでに日本化粧品工業連合会および日本石鹸洗剤工業会は、代替品への切り替えを会員企業へ要請済みだが、それをさらに促すための措置といえる。

厚生労働省は、承認した薬用石けんに関連した健康被害は報告されていないとしているが、FDAは長期間使用した際の安全性は検証されていないと警告。近年のトリクロサン研究では、感染症のリスクを増加させるほか、腸内細菌叢の変化や耐性菌の増殖を促す恐れがあり、環境汚染にもつながると指摘されている。また、30秒間の手洗いを行った際「薬用石けんと通常の石けんで大きな差がない」との調査報告もあるなど、トリクロサンの効用を疑問視する声があがっていた。医療機関で使用されている製品の確認、切替えが求められるとともに、患者への周知・指導の徹底も必要となってきそうだ。

※トリクロサン等19成分は以下のとおり。
① Cloflucarban (クロフルカルバン、ハロカルバン)
② Fluorosalan (フルオロサラン)
③ Hexachlorophene (ヘキサクロロフェン)
④ Hexylresorcinol (ヘキシルレゾルシノール)
⑤ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Iodine complex (ammonium ether sulfate and polyoxyethylene sorbitan monolaurate)
⑥ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Iodine complex (phosphate ester of alkylaryloxy polyethylene glycol)
⑦ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Nonylphenoxypoly (ethyleneoxy) ethanoliodine
⑧ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Poloxamer-iodine complex
⑨ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Povidone-iodine 5 to 10 percent
⑩ Iodophors (Iodine-containing ingredients) Undecoylium chloride iodine complex
⑪ Methylbenzethonium chloride (メチルベンゼトニウムクロリド、塩化メチルベンゼトニウム)
⑫ Phenol (greater than 1.5 percent) (フェノール)
⑬ Phenol (less than 1.5 percent) (フェノール)
⑭ Secondary amyltricresols
⑮ Sodium oxychlorosene
⑯ Tribromsalan (トリブロムサラン)
⑰ Triclocarban (トリクロカルバン、トリクロロカルバニリド)
⑱ Triclosan (トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル)
⑲ Triple dye
◆ がん治療薬「オプジーボ」の薬価引き下げへ
類似薬の価格を抑制する狙いも

――厚生労働省
厚生労働省は10月5日、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会を開き、肺がんなどの治療薬「オプジーボ」(小野薬品工業)の薬価引き下げを提案した。

「オプジーボ」は、免疫反応を活用してがん細胞に働きかける治療薬。2014年に皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)で最初の承認を受けたが、昨年末に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する効能の追加承認を受けたことで、対象患者数が数百人から数万人に増加した。今年8月には腎臓がんの一部でも使用承認が出ているほか、頭頸部がんなどでも承認申請を出しており、今後さらに使用領域が広がっていくと見られる。

このオプジーボ、他の薬では効果のなかったがん患者に効果が期待される新薬だが、薬価の高さがネックとなっていた。試算では体重60キロの男性患者に1年間投与するとして約3500万円かかるとされている。今後、承認領域が広がることで数万人規模の患者が使用することが見込まれるため、来年4月の定期価格改定を待たずに対応することにより、2年連続で40兆円を突破している医療費の抑制を図る方針だ。

類似薬の価格は既存薬に合わせる薬価制度のため、オプジーボの薬価は別の薬にも影響する。オプジーボは、従来承認されていなかった免疫療法分野での新薬のため、今後も類似薬が登場することが予想される。すでにMSDが悪性黒色腫の新薬「キイトルーダ」の承認を取得しており、薬価決定の方法が見直される可能性は高い。

また、厚生労働省では高額薬を適切に使用するためのガイドラインについて、既に策定の作業に入っている。使用できる医療機関を限定するほか、使用する医師も経験者のみにするなどの規制が設けられることが予想される。
◆ 医療情報の収集がより便利になる新サービス
8社15サイトで使える共通ID「medパス」

――厚生労働省
NTTドコモグループの株式会社medパスは、10月3日に複数の医療サイトで共通利用できる共通ID「medパス」のサービスを開始した。何度もログインし直すことなく複数のサイトを行き来できるため、情報収集の利便性向上に貢献しそうだ。

「medパス」は、製薬企業や医療機器メーカー8社15サイトが運営する医療サイトで利用でき、さらに2社が年内に追加導入を予定している。これらのサイトを閲覧する際には、PCのみならず、スマートフォンやタブレットなどデバイスを問わないため、アクセスが手軽なのも特徴だ。
現在、これらのサイトに登録している医師の数は約12万人。セキュリティについては、最新の認証基盤Open ID Connect方式にも対応しており、配慮がされている。

医療サイトは、製薬企業が発信する薬の副作用などの情報を収集できるなどの様々なメリットがある。しかし、医師が会員登録をするためには医師免許の確認など煩雑な手続きが必要となっているのが現状。サイトごとに同様の手続きを行うのは面倒な上に、運営する企業側にもコストがかかっており、利用者・運営の双方にとってデメリットが目立つ状況が続いていた。しかし、IDを共通とすることにより会員登録が一度で済むため、登録の煩雑さは解消される。

また、情報収集の利便性も格段にアップすることが見込まれている。たとえば、薬の副作用などの情報を調べる際、medパスであれば1つのサイトだけでなく、複数のサイトを横断的に素早く閲覧できる。それにより、患者への情報提供もスムーズに行えるようになるため、診療の効率化も図ることが可能と言えるだろう。

※「medパス」が利用できる医療サイト(2016年10月3日現在)
 MediChannel(アストラゼネカ)
 aricept.jp(エーザイ)
 アシテアweb サイト(塩野義製薬)
 SHIONOGI.tv(塩野義製薬)
 アレルゲン免疫療法(減感作療法)e ラーニング(塩野義製薬、鳥居薬品)
 アレルゲン免疫療法.jp(鳥居薬品)
 TORII-HIV.jp(鳥居薬品)
 服アド手帖アプリ(鳥居薬品)
 CLINIC Station Portal(アイセイ薬局)
 Welby シェア(ウェルビー)
 medy(日本アルトマーク)
 クレデンシャル WEB(日本アルトマーク)
 MD+(日本アルトマーク)
 MedPeer(メドピア)
 MedPeer キャリア(メドピア)

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