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医療経営情報(2016年9月29日号)

2016/10/6

◆ 厚労省、過去30年間の医療費の動向と対前年度伸び率提示
2015年度医療費、薬価料は化学療法剤の影響大 社会保障WG

――政府
政府は9月15日、経済・財政一体改革推進委員会の「社会保障ワーキンググループ」を開催し、「『見える化』の分析」などを議論した。
このWGで、厚労省は1985年から2015年の医療費の動向と対前年度伸び率を提示。2015年度の医療費の伸び率は3.8%。内訳は「人口増の影響」マイナス0.1%、「高齢化の影響」1.2%、人口と診療報酬改定の影響を除いた「その他」2.7%だった。「その他」の伸びが近年1%程度であったのに対し、2015年度は3%近い水準となった要因として、政府は「医療の高度化、患者負担の見直しなどの影響が含まれる」と分析している。

政府は医療費の伸びの「その他」の要因を詳細に分析。入院医療費を傷病分類別に着目すると、▽新生物、▽精神及び行動の障害、▽循環器系の疾患、▽損傷、中毒及びその他の外因――が大きく影響する傾向が見られた。また、入院外医療費を傷病分類別でみると、▽新生物、▽内分泌、栄養及び代謝疾患、▽循環器系の疾患、▽腎尿路生殖器系の疾患、▽損傷、中毒及びその他の外因――が大きく影響する傾向があった。
また、「その他」の要因について、調剤医療費では薬剤料が1.40%と大きく影響しており、中でも内服薬が1.22%と大部分を占めている。薬効大分類別では、▽中枢神経系用薬、▽循環器官用薬、▽その他の代謝性医薬品――の影響が大きく、2015年度については化学療法剤の割合が大きかった。さらに、後発医薬品の医療費に与える影響を推計。医療費の伸び率に換算すると、年間マイナス0.2~マイナス0.5%ポイント程度の影響があると報告した。

前回のWGでは、国の財政健全化を目的に、医療費の地域差の「見える化」や後発医薬品の使用割合の目標などを盛り込んだ「経済・財政アクションプログラム」の具体的な数値目標の策定が進んでおり、今回その議論の取りまとめも公表された。今後は、地域医療構想の早期策定や、医療費適正化に取り組むなどした都道府県の数、後発医薬品の利用勧奨などを進める保険者数、後発医薬品の使用割合などが数値目標となる。
◆ 協会けんぽ、2015年度の医療分の収支は黒字
単年度収支差2,453億円、準備金残高1兆3,100億円

――協会けんぽ
協会けんぽは9月15日、「全国健康保険協会運営委員会」を開催し、(1)2016年度~2020年度の収支の見通し、(2)2017年度保険料率に関する論点――などを議論し、公表した。
(1)について、協会けんぽは2015年度の医療分の収支を黒字と公表。収入9兆2,418億円、支出8兆9,965億円、単年度収支差2,453億円の黒字、準備金残高1兆3,100億円だった。
収入の内訳は、保険料収入8兆461億円、国庫補助等1兆1,815億円、その他142億円。支出の内訳は保険給付費5兆3,961億円、老人保健拠出金1億円、前期高齢者納付金1兆4,793億円、後期高齢者支援金1兆7,719億円、退職者給付拠出金1,660億円、その他1,832億円だった。
また、2015年度の決算を参考に、一定の前提を基に機械的に試算した2020年度までの収支見通しを公表。賃金上昇率で3ケース、高額新薬の影響に関して3ケースを前提として推計を行っている。

(2)については、(ⅰ)平均保険料率、(ⅱ)都道府県単位保険料率を考える上での激変緩和措置、(ⅲ)保険料率の変更時期――に関して議論した。(ⅰ)の論点として「2017年度の平均保険料率についてどのように考えるか」と提示。具体的には、▽5年収支見通しにおいて、今後の協会における医療費の伸びをどのように考えるか、▽5年収支見通しなどを踏まえ、2017年度やその後の平均保険料率のあるべき水準についてどのように考えるか――と示した。
(ⅱ)については、激変緩和措置の期限が2020年3月31日であることを踏まえ、論点として「都道府県単位保険料率を考える上で、2017年度の激変緩和措置についてどのように考えるか」と提示した。
(ⅲ)については、「保険料率の変更時期は2017年4月納付分からでよいか」を論点として示している。

協会けんぽでは、加入者の数や賃金が伸び、保険料収入が増えたと説明している。かつては赤字基調で健保財政上の「お荷物」扱いだったが、保険料の引き上げや国の補助金の上積みで財政が好転している。
収入は9兆1035億円と4%増えた。保険料収入の伸びに加えて、関連組織の清算による一時的な収入もあった。支出は8兆7309億円と2%増にとどまった。医療費の支払いは増えたものの、高齢者医療制度などへの仕送り金がわずかに減ったため。単年度収支差2,453億円の黒字だった。
収入の内訳は保険料収入8兆461億円、国庫補助等1兆1,815億円、その他142億円。支出の内訳は保険給付費5兆3,961億円、老人保健拠出金1億円、前期高齢者納付金1兆4,793億円、後期高齢者支援金1兆7,719億円、退職者給付拠出金1,660億円、その他1,832億円だった。
また、2015年度の決算を参考に、一定の前提を基に機械的に試算した2020年度までの収支見通しを公表。賃金上昇率で3ケース、高額新薬の影響に関して3ケースを前提として推計を行っている。
協会けんぽが積み立てた準備金は1兆647億円と54%増え、20年ぶりの高い水準になった。支出の1.6カ月分にあたり、法律が求める1カ月分を大きく上回っている。今後も黒字基調が続けば保険料や国の補助金の見直しが議論される可能性もある。
◆ 厚生労働省、2017年度の「税制改正要望事項」を発表
セルフメディケーション推進、所得控除制度の創設など

――厚生労働省
厚生労働省は2017年度の「税制改正要望事項」を発表した。主な税制改正要望として目につくのは、セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設〔所得税、個人住民税〕、セルフメディケーション推進に資する薬局に係る税制措置の創設〔不動産取得税〕などといった「セルフメディケーション推進」という言葉の強調だ。
特に所得控除制度の創設は、健康増進や疾病予防などの自助努力を促進し、がんを含む生活習慣病等の予防及びこれによる医療費適正化を図る観点から、市町村や医療保険者等が行うがん検診、特定健診、予防接種、人間ドックなどに要する費用を対象とする所得控除制度の創設を主張している。

<医療・介護関係の主な要望>
(1)地域に必要な医療を担う医療機関の事業の継続に関する税制の創設、(2)かかりつけ医機能及び在宅医療の推進に係る診療所の税制措置の創設、(3)高額な医療用機器に係る特別償却制度の適用期限の延長、(4)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長等、(5)医療に係る消費税の課税のあり方の検討、(6)医療機関の設備投資に関する特例措置の創設――など。

(1)は、過疎地域や離島の医療機関などを対象に、一定期間の事業継続を要件として事業継続に関する相続税・贈与税を猶予する制度の創設。さらに、一定期間事業を継続すると猶予税額を免除する。
(2)は、かかりつけ医・かかりつけ歯科医としての診療体制、在宅医療に必要な診療体制をとる診療所に係る不動産について、税制上の措置を創設する(不動産取得税、固定資産税)。
(3)は、医療保健業を営む個人または法人が500万円以上の医療用機器(高度な医療の提供に資するもの又は医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内のもの)を取得した場合に、取得価格の12%の特別償却を認める特例措置について、対象機器を見直した上で、その適用期限を2年延長する制度を創設する(所得税・法人税)。
(4)は、持分あり医療法人の出資者の死亡により相続が発生し、医業の継続に支障をきたすことのないよう、持分なし医療法人への移行を進める医療法人について、移行期間中の相続税・贈与税に係る納税を猶予する制度を創設する。また、移行後に猶予税額を免除するなどの措置の適用期限を延長する。
(5)では、2016年度税制改正大綱に基づき、抜本的な解決に向けて適切な措置を取れるよう、税制上の措置について、医療保険制度における手当のあり方の検討とあわせて、医療関係者、保険者の意見(高額な設備投資による仕入消費税額の負担が大きいとの指摘など)も踏まえ、総合的に検討し結論を得るとしている(消費税・地方消費税)。
(6)は、控除対象外消費税の負担が医療機関の設備投資を抑制する一因となっているとの指摘を踏まえ、都道府県で策定された地域医療構想に沿った病床の機能分化・連携などに資する固定資産を医療機関が取得した場合に、税制上の特例措置を創設する(所得税・法人税)。

<主な省庁の税制改正要望>
政府が8月31日にまとめた、2017年度の税制改正に向けた各省庁の要望では、人口減が進むなかで企業の生産性を高めたり、訪日外国人の消費を増やしたりするための要望が目立つ。女性や高齢者が仕事に就きやすいようにする「働き方改革」とともに、成長力を底上げしてアベノミクスの再起動につなげる。財務省と地方税を所管する総務省はこれから査定に入る。年末にかけて要望の可否を政府・与党内で調整する。経済産業省はIT(情報技術)を駆使するサービス産業の研究開発も加えたい考え。飲食店やスーパーで働く人が効率的に動けるように、ビッグデータを使って分析するといった研究を想定している。
国税庁と観光庁は、訪日客が酒蔵やワイナリーで日本酒やワインを購入した際にかかる酒税を免税にするよう要望した。酒蔵などは質の高い原料や水が手に入る地方に多い。訪日客が日本のお酒を買いやすいようにし、地方の活性化や知名度の向上につなげる。
厚労省の働き手を増やすための「働き方改革」を促す要望も大きな柱となっている。共働き世帯を対象とする減税措置のほか、政府・与党は専業主婦世帯を優遇する所得税の配偶者控除の見直しも検討する方針。
◆ ICUとCCU「既存病床数」に含めるか否か、結論出ず
地域医療構想に関するWG、「病床の必要量」関連は整理

――厚生労働省
厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織「地域医療構想に関するワーキンググループ」(WG。座長:尾形裕也・東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)の第3回会議が9月23日に開催され、医療計画における「基準病床数」と、地域医療構想の「病床の必要量」の関係性の整理、さらに各地域における地域医療構想調整会議の議論の進め方を整理した、WGとしての案を了承した。

整理案では、(1)用いる人口の時点について(一般病床・療養病床共通)、(2)退院率、平均在院日数および入院受療率(一般病床)、(3)患者の流出入(一般病床)、(4)病床の利用率(一般病床・療養病床共通)、(5)入院受療率(療養病床)、(6)介護施設対応可能数など(療養病床)、(7)今後病床の整備が必要となる構想区域への対応――について、意見をまとめている。
(2)について、一般病床の基準病床の算定では、一般病床は長期療養以外の患者が入院するという考え方を踏まえ、従来と同様に退院率と平均在院日数を用いることを提案。平均在院日数は、全国平均を下回っているブロックで更なる短縮を見込む場合、これまで相当程度平均在院日数が短くなっている点を勘案するなど、地域差を適切に反映することとした。また、医療資源投入量の少ない患者の取り扱いについて、入院経過中の医療資源投入量の変化や患者像などを踏まえ、平均在院日数の考え方と合わせて今後さらに整理するとした。

この日の議論は、総体的に「一般病床の基準病床数」、「医療資源投入量」の2点に集中したため中断。厚労省事務局は、議論をするための資料が揃っていないため、上部組織の検討会で議論を行うとしたが構成員から反対の声が上がった。このため、尾形裕也座長が議論の位置づけや表現の案を座長と事務局で作ると提示することで場を収めた。
またICUとCCUを「既存病床数」に含めるか否か――の結論も出なかった。焦点の一つとなっていた地域医療構想調整会議の進め方では、まずは一定規模の病床を持つ病院であって地域の救急・災害医療などを担う医療機関の役割を明確にする議論を求めている。時期的には、2018年度からの第7次医療計画の基本方針策定に向け議論を進める「医療計画の見直し等に関する検討会」に、近く報告しなければならない。

地域医療構想(ビジョン)について
各都道府県が作る、2025年時点でその地域にもっとも相応しい医療提供体制の将来展望のこと。病床機能報告を元に、地域の医療ニーズを考慮しつつ、その地域に必要な機能別の病床数などを考慮し、これを医療計画に反映させるのが目的だ。
検討中のガイドラインは、2025年に必要とされる医療提供体制と各医療機関の病床機能の必要量を軸に考えられている。さらに、今回の検討会でガイドラインの内容として提案されたのは次の通り。
 患者の病状に最適な医療を効率良く提供できるような仕組みづくり。
 地域全体に十分な医療提供が出来るよう、病床を整備し在宅医療を充実させること。
 認知症患者や高齢者のみの世帯が増加するため、医療と介護が一体となるような仕組みづくり。
 病床の機能に応じて医療従事者を十分に確保すること。
 十分な数の医療従事者が必要となるため、人材育成を重視すること。
 地域差を考えた、その地域に最も相応しい医療提供ができるような仕組みづくり。
 医療機能の分化に伴い、患者が適切な判断の元、医療機関を訪れることが出来るように、国民全体への医療情報提供の充実。

これらの内容がどういった形でガイドラインに盛り込まれるのかは未定だが、今後10年ほどで国民を取り巻く医療体制は大きく変わりそうだ。

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