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医療経営情報(2016年7月21日号)

2016/7/25

◆「医師の目標値」、地域別に医療計画で設定へ
第7次医療計画の作成指針等の見直しで議論

――厚生労働省
厚生労働省の「地域医療計画の見直し等に関する検討会」の第3回会議が、7月15日に開催された。この会議では、第2回に続き、2018年度からの第7次医療計画の作成指針等の見直しについて議論が行われた。基準病床数、医療機器の配置、医師確保の目標値の設定やその対策などが論点となった。
医師確保の目標値は、第7次医療計画から新たに盛り込まれる。厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」の5月の中間取りまとめでは、「都道府県が策定する医療計画」において、引き続き「基準病床」「医療機器の配置のあり方」などが継続議論されてきた。

厚労省は、現行の医療計画は5年間の基準病床を算定しているものの、第6次医療法改正で、医療計画の計画期間を5年から6年に変更していると説明した。また、一般病床の基準病床数の算定に用いる「平均在院日数」は、医療計画作成時の直近の統計調査の値を基に1割の短縮を見込んでいる。しかし、厚労省は地域によって見込みほどには実際の平均在院日数の短縮がされないことも推測されると指摘。さらに、直近の値を用いる一般・療養病床の「病床利用率」の推移はいずれも低下傾向にあると述べた。
これらを踏まえ、今回、厚労省は「基準病床数制度」に関する論点案を、次のように示した。
基準病床数を算定する計画の期間について、5年間を基本としていたが計画期間が5年から6年に変更になったことを踏まえ、どのように考えるか
一般病床の算定での平均在院日数の経年変化の見込みについて、現在、全国一律としているが、今後、どのように考えるか
病床利用率は直近の病床利用率を用いることになっているが、今後、どのように考えるか
流出超過加算(流出超過分の患者数の3分の1を病床換算したものを限度とする加算)について、現行の医療提供体制等も踏まえ、今後、どのように考えるか

さらに、厚労省は基準病床数と必要病床数に関し、基準病床数は現時点で必要とされる病床数であることに対し、地域医療構想では医療需要の変化に応じた将来、2025年の病床の必要量(必要病床数)を定めていると指摘。このため、関係について整理が必要として、ワーキンググループでの考え方の整理を提案した。

◆高額療養費の見直し、現役並み所得・外来上限など議論
医療保険部会 高額療養費見直し 年内に結論出す方

――厚生労働省
厚生労働省は7月14日、社会保障審議会の「医療保険部会」を開催。政府の骨太方針や経済・財政再生計画等の指摘事項の(1)高額療養費、(2)後期高齢者の窓口負担――などを中心議題に進めた。今後の部会の進め方の焦点は、月ごとの医療費の自己負担に上限を設けた「高額療養費制度」と後期高齢者の窓口負担の見直しが柱だが、「見直し」には高齢者側からの反発予想は必至の情勢となっている。今後、月1回程度のペースで議論を重ねていく予定で、特に高額療養費見直しは年内に結論を出す方向だ。

厚労省は2016年6月2日に閣議決定された政府の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2016)などで、負担能力に応じた公平な負担等の改革を実行するとしていると説明。骨太方針では、高額療養費について2016年中、後期高齢者の窓口負担について2018年度中に見直しに向けた議論を行い、結論を出すよう指示している。
(1)に関し、高額療養費制度とは、家計に対する医療費の自己負担が過度に重くならないよう、医療機関の窓口で医療費の自己負担を支払った後、月ごとの自己負担限度額を超える部分に関し、事後的に保険者から償還払いする制度。自己負担限度額は被保険者(利用者)の所得に応じて設定されている。
これまで、高額療養費に関し、医療保険部会で委員からは、「制度の持続可能性を考えながら、世代間の負担の公平性を検討した上で見直しが必要」、「現役並み所得という考え方も論点になる」などの意見が出されていた。
今回、高額療養費の支給状況に関し、厚労省は参考資料を提示し、75歳以上の人に支給される高額療養費の1人あたり支給額や割合は、75歳未満と比較して高い傾向と説明。高齢者の医療費は年齢が高いほど大きくなるものの、医療費に対する自己負担額の割合は高齢者の方が低い状況。他方、収入に対する自己負担割合は75歳以上が最も大きかった。

また、厚労省は70歳以上の高齢者について、外来の受診頻度が若年者に比べて高いことなどから、高額療養費に自己負担限度額として「外来上限」が設けられていると説明。他方、高齢者の「現役並み所得」に関し、医療保険では70歳以上の高齢者も3割負担を求めていることや基準額を示した。また、負担状況に関して、後期高齢者医療の被保険者は「現役並み所得者」が7%いる一方、低所得者が4割を占めていることを示している。

◆16年がん罹患数100万超と予測 国立がん研
がん登録の精度向上で罹患数が大幅増

――国立がん研究センター
国立研究開発法人 国立がん研究センター(略称:国がん)がん対策情報センターは7月15日、2016年に新たにがんと診断される数を示す罹患数と死亡数のがん統計予測を算出し、がん情報の総合サイト「がん情報サービス」にて公開した。

「国がん」の2016年のがん統計予測の結果は、罹患(りかん)数予測が101万200例で、100万例の「大台」を超える予測結果が算出された。男女合計の部位別の罹患数では、大腸(14万7200例)、胃(13万3900例)、肺(13万3800例)、前立腺(9万2600例)、乳房(9万例)の順となった。
2016年のがん死亡数予測は、37万4千人(男性22万300人、女性15万3千700人)と発表された。昨年の予測と比較すると、約3千人の増加となった。男女計では約2万8千例で、約2.9%増加した。罹患数、死亡数とも増加の主な原因は日本の高齢者人口の増加と分析している。

「罹患数(りかんすう)」とは「その期間の間に新しくがんにかかった(=診断された)」という意味である。つまりこの「100万例」という数字は「2016年のうちに新しくがんにかかると予測される人数」で、日本の罹患数は統計が作成され始めた1970年代から一貫して増加している。死亡数は37万4千人で統計を取り始めてから戦後一貫して変わらず上昇し続けている。

「国がん」は、「全国がん罹患モニタリング集計のがん罹患数1975~2011年全国推計値」や「人口動態統計がん死亡数1975~2013年実測値」、「国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口」を基に、15年のがん患者数と死亡者数を推計している。
がん罹患数の前年(2015年)をみると、10万例・約1割増の98万例、がんによる死亡者数は同じく4000人増の37万人になるとの推計値だった。具体的には、がん罹患数は男性が56万300例、女性42万1800例の合計98万2100例と予測されていた。14年の予測値に比べて約10万例、実測値に近い11年推計値に比べて約13万例増加した。

罹患数が大幅に増加する要因について、同センターは「高齢化」とともに「がん登録の精度の向上」を挙げている。がん登録推進法が13年12月に成立し、全国がん登録が16年1月からスタートしている。このため、がん登録の認知度が医療現場で向上し、データの精度が高まると期待され、これが罹患数を押し上げるとみられる。
「罹患数予測」とは、「2016年のうちに新しくがんにかかると予測される人数」のこと。混同されやすいが、「罹患数」という用語は、あくまで新規にがんと診断された人数のことを指す。

2016年がん統計予測のポイント
がん罹患数予測
○2016年のがん罹患数予測は101万200例(男性57万6千100例、女性43万4千100例)。2015年の予測(98万2千100例)と比較すると、男女計で約2万8千例増加。
○部位別では、大腸、胃、肺、前立腺、乳房(女性)の順にがん罹患数が多い(大腸、胃、肺はほぼ同数)。
○順位を2015年のがん統計予測[大腸、肺、胃、前立腺、女性(乳房)]と比較すると、上位5位のがんに変化はなかった。

がん死亡数予測
○2016年のがん死亡数予測は、37万4千人(男性22万300人、女性15万3千700人)
○2015年の予測と比較すると、約3千人の増加。
○肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順にがん死亡数が多い。
○2015年の予測(肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順)から順位の変化はなかった。

がん情報(データベース)は「国立がん研究センターがん情報サービス『がん登録・統計』」で見ることができる。
URL: http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html

◆協会けんぽ、6年連続で黒字の見通し 15年度
昨年度決算 不測の事態に備える準備金も確保

――全国健康保険協会
中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は7月14日、昨年度・平成27年度の決算で、6年連続の黒字となる2453億円(前年度比1383億円増)を計上したと発表した。これは加入する従業員の増加や賃金の上昇で保険料収入が増えるなどしたため。協会けんぽは、主に中小企業などの従業員やその家族らおよそ3700万人が加入する健康保険で、08年10月に設立された同協会が、国に代わって運営している。

15年度の協会けんぽは、被保険者の人数や標準報酬月額が増えたことにより保険料収入が増加し、全体の収入は前年度比1.5%増の約9兆2418億円となる見通し。支出は、加入者1人当たりの医療給付費が08年度以降、過去最高となることなどにより、同3.0%増の約8兆9965億円(前年度比2656億円増)となる見込み。
インフルエンザが大流行した時などの不測の事態に備える準備金については、健康保険法で保険給付費や高齢者拠出金などの支払いに必要な1カ月分を積み立てることが義務付けられているが、15年度は1.9カ月分に相当する金額(約1兆3100億円)確保できるとしている。

しかし同協会は、08年度以降、加入者1人当たりの保険給付費が増え続ける一方、加入者の標準報酬月額は同年に起きた「リーマンショック」前の水準まで回復していないことが課題と指摘。今後も加入者に対し、健康診査の受診などを呼び掛ける方針だ。全国健康保険協会は「黒字にはなったものの、高齢者医療への負担金が支出の4割程度を占めていて負担は重く、1人当たりの医療費の伸びも賃金の伸びを上回っているため、楽観できる財政運営ではない。高齢者医療への負担を軽減するため公費投入を拡充させるなどの改革が必要だ」としている。

「協会けんぽの決算見込み(医療分)について」(発表要点)
<協会会計と国の特別会計との合算ベース>
平成28年7月8日 全国健康保険協会
<全体の収支状況>
○平成27年度は収入(総額)が9.2兆円、支出(総額)が9.0兆円となり、収支差は2,500億円となりました。
<収入の状況>
○収入(総額)は前年度から1,400億円の増加となりました。主に「保険料収入」が3,100億円増加したことによるものですが、これは景気が回復基調にあることから保険料を負担する被保険者の賃金が上昇していることに加え、被保険者数が増加したことが要因です。なお、収入のうち「国庫補助等」及び「その他収入」については減少(1,700億円)しました。
<支出の状況>
○支出(総額)は前年度から2,700億円の増加となりました。支出の6割を占める「保険給付費」が3,200億円増加しましたが、前年度からの増加額が3,000億円を超えたのは協会による医療保険運営が始まった20年度以降では初めてのことになります。これは、「1人当たり医療費(医療給付費)」の伸び率が20年度以降で最高の伸び(4.4%)となったことが主な要因であり、さらに加入者数の増加も重なった結果です。
○支出の4割を占める高齢者医療に係る「拠出金等」については、前年度から700億円の減少となりました。総報酬割の拡大や退職者医療制度の新規適用の終了、25年度に概算納付した拠出金の戻り(精算)など、複数の要因が重なった結果、一時的に減少したものです。
<収支差と準備金残高>
○27年度の「収支差」は、前年度から1,300億円減少しました。26年度の一時的な収入(1,000億円)による影響を考慮すると、実質的な収支差は、前年度と比較してほぼ横ばい(300億円の減少)であったと言えます。
○なお、法令上、協会は保険給付費や拠出金等の支払いに必要な額の1ヵ月分を準備金として積み立てなければなりませんが、27年度決算(見込み)時点においては、1.9ヵ月分の準備金を確保できる見通しです。

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