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医療経営情報(2015年12月17日号)

2015/12/21

◆次期診療報酬改定、意見隔たり大きく「両論併記」
中医協 塩崎厚労相に2016年度改定の意見書提出

――中央社会保険医療協議会(中医協)
中央社会保険医療協議会(中医協)の総会は12月11日、2016年度診療報酬改定に向けた意見書をまとめ、塩崎恭久厚労相宛てに提出した。「診療側はプラス、支払側はマイナスを要望」とする意見書は前回改正と同じ両論併記の形となった。公益代表の田辺国昭中医協会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は両者の意見の隔たりが大きいと判断、両論を併記するに至った。

この日、両論併記の意見書は厚労省保険局の唐澤剛局長が代理受領して塩崎厚労相に提出された。この後、塩崎厚労相は、この意見書も踏まえて年末の予算編成(改定率はここで決定)に臨むという工程になる。
今回、厚労相に意見を述べるため、公益委員が12月2日の中医協総会で支払・診療側双方が示した社会保障審議会の、「医療機能の分化・強化、連携を進める」とした「診療報酬改定に関する基本的な見解」(本紙記事で既報)に関する議論をもとに、公益委員が「2016年度診療報酬改定についての意見案」を整理し提示した。
支払側と診療側が見解を持ち寄り、公益代表が意見書案をまとめる作業は特別なことではなく意見調整がまとまった今回のようなケースで、内閣(厚労相)に意見を述べることができる。
意見案では、社会保障審議会医療保険部会・医療部会で決定した「2016年度診療報酬改定の基本方針」で、重点課題として、医療機能の分化・強化、連携を含め、在宅医療や訪問看護の整備を進め、地域包括ケアシステムを構築することが示されたと指摘。中央社会保険医療協議会は、この基本方針に基づき、「全国民が質の高い医療を受け続けるため、協議を真摯に進める基本認識に関して、支払側委員と診療側委員の意見の一致をみた」と、両者の基本的認識の一致を強調している。

しかし両者の意見案は、「基本認識の下で、どのように2016年度診療報酬改定に臨むべきかについては、相違が見られた」として、支払側と診療側の意見を両論併記した、その内容の要旨は次の通り。
まず、支払側は、医療経済実態調査結果から「(中長期的に)医療機関などの経緯が概ね順調に推移している」と判断、医療保険者の財政は深刻な状況に陥っている一方で、医療機関等の経営は全体としてはおおむね堅調に推移していることなどを指摘。
診療報酬はマイナス改定とすべきで、2014年度改定と同様、薬価・特定保険医療材料価格の引き下げ分を診療報酬本体に充当せず、国民に還元すべきとの意見だったとまとめている。11月20日の総会でも幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、一般病院のうち50~299床の中小病院(公立除く)は「黒字を維持」、療養病床60%以上の一般病院も「黒字」とする意見を述べていた。健保連は「ネット(全体)でマイナス改定」との意見を表明している。これは支払い側団体の総意を「代行」した形ともいえる。

一方、診療側は、診療側は、医療経済実態調査結果から「医療機関などは総じて経営悪化となった」と判断し「経営悪化」を強調した。さらに国民の安心・安全の基盤を整備するため、過不足ない財源投入が必要であることなどを指摘。診療報酬本体は必要な財源を確保してプラス改定とすべきで、薬剤と診察等とは不可分一体で財源を切り分けは適当でなく、薬価等の引き下げ分は本体改定財源に充当すべきとの意見だったとまとめた。
松本純一委員(日本医師会常任理事)は「すべての規模で赤字、または赤字幅が大きい」と前回述べていた。日医は今回「設備投資を行って医療設提供体制を維持できる状況にはない」」と表明している。
この日、(意見書に)「長年にわたり賃金・物価の伸びを上回る診療報酬改定が行われている」との記載について「起算点がリーマンショックの前後、いずれかで異なる」旨を意見としたが、結局、公益委員案でまとまった。

◆診療報酬改定―地域包括ケアシステム実現に向け進める
塩崎厚労相記者会見 「メリハリのついた改定行う」

塩崎恭久厚生労働大臣は、12月11日の閣議後記者会見で、診療報酬改定や軽減税率による社会保障分野への影響などについて言及した。
塩崎厚労相は、診療報酬の改定における政府内や財務省との調整に関して、「まだ予算編成過程の途上で、これから様々な議論が行われる。診療報酬は医療機関の経営状況、世の中全般の賃金動向、国民皆保険維持の観点から、国民が安心できる医療を提供し、地域包括ケアシステムの実現を進めるために行う。この考え方に基づいて、メリハリのきいた診療報酬改定をしなければならない」と話した。
そのうえで、「救急では2次救急が十分ではない」、「小児の在宅医療や、認知症への配
慮が必要」、「7対1の問題では、重症度が十分な評価に頼るものになっていないケースがある」といった例をあげ、「財政が厳しい中にあっても、よりよい医療をどうつくっていくかの観点が大事だ」と述べた。

また、軽減税率による影響に関しては、「社会保障と税の一体改革で、消費税収の使途を社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)に限定して、全額を社会保障の充実と安定化に充てるという合意がなされ、それに基づいて手を打ってきた。どういう協議が行われるかは結果を待ちたい」と語った。

●12月11日の塩崎厚労相と記者団との会見内容(要旨)は次の通り

(記者)
軽減税率についてうかがいます。自民党と公明党は、対象となる品目を食品全般とすることで一致し、必要となる財源は1兆円を超える見通しです。2020年度のプライマリー・バランス黒字化達成に向けて、社会保障分野でも歳出削減圧力が強まるとの見方もありますが、大臣の受け止めをお願いいたします。

(大臣)
今、自公の幹事長同士で最終的な詰めを行っているということなので、どういうことになるのか私は直接聞いておりません。社会保障と税の一体改革で、消費税収の使途を社会保障4経費に限定して、全額を社会保障の充実と安定化に充てるということで合意がなされたわけですので、それに基づいて様々な手を打ってきたわけです。厚労省としては、一体改革の趣旨を踏まえて、子ども・子育て支援の充実、医療・介護提供体制の改革、難病対策の充実、年金制度の改革など、社会保障の充実と安定化に必要な財源の確保をしっかりやることが重要だということでやってまいりました。したがって、私どもはその考え方に則って社会保障の充実と安定化を図るということが使命でありますので、どういう協議が行われるかは結果を待ちたいと思います。

(記者)
補正予算についてうかがいます。低所得の年金受給者に対して3万円の臨時給付金が計上される予定となっておりますが、臨時給付金については与党内からも選挙対策のばらまきではないかという声も一部で挙がっています。大臣は、臨時給付金が消費を支える効果などについてどのようにお考えでしょうか。また、それに関連して、臨時給付金については3万円を送るための事務経費だけで200億円以上が計上されるそうですが、これだけかかるのはなぜなのかお願いいたします。

(大臣)
まず、効果についてのお話でありましたが、先般の一億総活躍社会の実現に向けての緊急対策が発表され、その中でアベノミクスの成果の均てん(平等)を図るという、そういう観点から賃金の引上げの恩恵が及びにくい低年金受給者に支援を行うということが書かれているわけであります。賃上げは働いている人たちの生活水準の向上につながり得るわけでありますけれども、必ずしも働いていらっしゃらない年金をすでに受け取っている方々にアベノミクスの成果をお届けするというために、何らかの支援を行うということが書かれていたわけでありまして、11月27日に補正予算編成に関する総理指示を踏まえて、低所得の高齢者世帯を支援する臨時給付金の実施に向けて、今後政府として具体的な検討が進んでいくと思っております。事務費に関しては、これは簡素な給付でもそうですけれども、現場の市町村に支給についてお願いするわけでありまして、そういった事務費がかかっているということでありまして、これについては政府の関係部署とよく相談していきたいと思います。

(記者)
ばらまきではないかという批判に関してはいかがでしょうか。

(大臣)
今申し上げたように、働いていらっしゃる方は賃上げの恩恵が、企業、経済の再生によって回ってくるわけでありますけれども、年金が必ずしもそれに準じて上がるということではないので、そこに手当をするということでありますので、ばらまきという考え方ではないと思います。

(記者)
診療報酬の改定についてうかがいたいのですが、これまでの報道で本体部分の引上げと出ていますけれども、政府内の調整、財務省との調整、これまでいかがでしょうか。大臣の診療報酬の改定に当たってのお考えを改めてお願いします。

(大臣)
まだ予算編成過程の途上でありますから、これから様々な議論が行われると思っております。診療報酬につきましては、私どもの考え方はすでに(経済財政)諮問会議で申し上げたとおりでありまして、医療機関の経営状況、世の中全般の賃金の動向、国民皆保険を維持する、堅持するという観点から、国民に安心していただける医療を提供して、今全力でやっている地域包括ケアシステムの実現に向けてさらに進めると、こういった観点からやっているわけであります。私としてはこの考え方に基づいて、今回特にメリハリのきいた診療報酬改定をしなければいけないのではないかということを考えているわけで、例えば、救急では二次救急はやっぱり十分ではないところがまだまだあります。小児の在宅医療や、認知症への配慮といったことも、これからさらに必要になってくるわけです。一方で7対1の問題の中でもやはりその重症度、急性度が十分な評価に頼るものになっていないというケースもあるわけで、そういうところでメリハリをつけていこうということでありますので、財政厳しき中にあっても、よりよい医療をどのようにつくっていくか、こういう観点が私どもにとって大事なことではないかと思います。(児童虐待対策問題と化血研~一般財団法人化学及血清療法研究所~の問題をめぐる応答は省略)

◆<インフル>11月30日~12月6日の定点あたり報告数は0.21人
厚労省 プレパンデミックワクチンの備蓄を検討 インフル小委 

――厚生労働省
厚生労働省は12月11日、2015年第49週(11月30日~12月6日)におけるインフルエンザの発生状況(患者報告数)を発表した。患者報告数(定点医療機関約5000カ所)は定点医療機関当たり0.21人(前週より24%増―総数1,043人)で、48週(11月23日~11月29日)の同0.17人より増加。都道府県別では、沖縄県0.95人(最多)、北海道0.73人、秋田県0.61人、富山(0.48人)、愛知(0.45人)、の順に多かった。秋田県や新潟県では、一部区域で集団発生も起きていることが報告されている。

●11日、新型インフルエンザ対策で小委員会開く
厚生労働省は12月11日、厚生科学審議会・感染症部会の「新型インフルエンザ対策に関する小委員会」を開き、「新型インフルエンザ対策におけるプレパンデミックワクチンの備蓄」などについて討議した。
2013年度に備蓄した約1,000万人分のプレパンデミックワクチン(ベトナム株約500万人分、インドネシア株約500万人分)が、2016年度に有効期限切れを迎える。このため、2016年度のワクチン株の選定、対象人数、ワクチン製造方法の決定(鶏卵培養法と細胞培養法)が課題となっている。

11月に開催された同小委員会の「ワクチン作業班」会議では、「2016年度はチンハイ株ワクチンを備蓄すべき」との見解が示された。一方で、チンハイ株は2015年度中に有効期限切れを迎える。また、基本的にプレパンデミックワクチンは特定接種の枠組みで使用する想定で、1株あたり約1,000万人分必要だが、2015年度末までに、チンハイ株で新たに約1,000万人分を確保することは困難との懸案事項があがっていた。

「ワクチン作業班」の備蓄方針を受け、今回、厚労省は次のように提案している。
(1)既存のチンハイ株は、2015度末に全て有効期限切れとなるが、製造の時間的制約上、同年度中に新たなチンハイ株約1,000万人分を備蓄することはできない。そのため、国立感染症研究所・審査当局などと引き続き協議を行い、2015年度中に有効期限切れを迎えるチンハイ株の有効期限延長に向けた調整を行う。
(2)2016年度末までに約1,000万人分のチンハイ株を備蓄する目的で、2015年度末をめどにチンハイ株の備蓄(約1,000万人分の内の一部)を開始する。
(3)2016年度にもチンハイ株の追加備蓄を行い、2016年度中に計約1,000万人分を確保できる体制を整える。

*プレパンデミックワクチン=大流行(パンデミック)前に備えるワクチンの意。新型インフルエンザウイルスが世界的規模で同時に流行する前に、感染者などから分離されたウイルスをもとに製造されたワクチンのこと。

◆医療従事者の確保策や地域偏在対策を討議する初会合
厚労省・医療従事者需給検討会 医師需給分科会も開く

――厚生労働省
厚生労働省は12月10日、「医療従事者の需給に関する検討会」の初会合を開催した。医師・看護職員など医療従事者の需給を見通し、その確保策や地域偏在対策などについて検討する。この検討会が開かれた背景には、2025年の医療需給をふまえて都道府県で策定作業が進められている地域医療構想において、病床の機能分化などに対応するためには医療従事者の需給を念頭におく必要があることや、2006年の医師需給検討会の結論をふまえ、暫定的に医学部の定員が増員されていた措置の一部が、2017年に終了することなどがある。

初会合では、検討会の「今後の進め方案」が、次のように示された。
(1)下部組織として、「医師」、「看護職員」、「理学療法士・作業療法士」の各需給分科会を設置する。
(2)医師需給分科会は、今後数年間の医学部定員のあり方を早急に検討する必要があることから、他の分科会に先行させて開催する。
(3)都道府県が2017年に第7次医療計画(2018年度~2023年度)を策定にするにあたって、医療従事者の確保対策を具体的に盛り込むことができるように、各分科会とも2016年内の取りまとめを目指す。

なお第6次医療法改正の主な内容は、(1)医療機関の医療機能報告制度と都道府県における地域医療ビジョンの策定、(2)看護師が一定条件の下で診療補助行為のうちの特定行為を実施できる制度の創設、(3)第3者機関創設を含む医療事故調査制度の創設、(4)医療機関の勤務環境改善マネジメントシステムの創設、(5)特定機能病院承認における更新制の導入、(6)外国医師等の臨床修練制度の見直し等となる。第6次は医療制度のあり方が焦点だった。

●10日に下部組織「医師需給分科会」開かれる
厚労省は10日、医療従事者の需給に関する検討会の下部組織「医師需給分科会」の初会合を開催した。この分科会は、同検討会に設置された3つの分科会の1つ。2017年度に終了する暫定的な医学部定員増加措置の取り扱いをはじめ、今後、数年間の医学部定員のあり方について検討するため、他の分科会に先行して開催される。

この日に示された分科会の「スケジュール」では、需要推計や地域偏在対策について、初会合を含む3回の会合で議論した後、2016年3月末に「中間報告骨子」を示し、同年4月末の第5回会合で「中間報告」を取りまとめるとされている。さらに、同年12月をめどに「報告書」を取りまとめることも示された。なお、中間報告後の第6回会合以降は、それまでの地域偏在対策に加えて、2016年秋以降には都道府県の地域医療構想がおおむね出そろうことから、2020年度以降の「医学部定員」などについても検討することが明示された。
この日は、「医師の需給に関する基礎資料」が示された。主な事項として次のデータなどが示された。
●医師数は近年、死亡などをのぞいても毎年、4,000人程度増加している。また、2012年の「人口10万対医師数」は237.8人(2010年比7.4人増)。
●2012年における都道府県別の「人口10万対医師数」は、京都府の296.7人が最多、埼玉県の148.2人が最少。
●2016年度における「医学部の入学定員」は、9,262人と過去最大規模。これは、2015年度より128人、2007年度より1,637人の増員となる。
●経済協力開発機構(OECD)加盟国における人口1,000人あたり臨床医数(2013年)は、加重平均で2.8人。日本は、2.3人(2012年)。

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