FAXレポート

ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2015年11月26日号)

医療経営情報(2015年11月26日号)

2015/11/30

◆予防、治療・研究、共生を柱の提言案 がん対策協議会
働く世代のがん検診率向上狙う「がん対策加速化プラン」

――厚生労働省
厚生労働省は11月20日、「がん対策推進協議会」を開催し、「がん対策加速化プランへの提言案」を示し協議会はこれを了承した。提言案は2人に1人がかかると推計されているがんについて、厚労省は働く世代の検診の受診率を向上させ死亡率を減らそうと同プランをまとめたもの。

がんは日本人の死因で最も多く、2人に1人がかかると推計されている。しかし受診の受診率は長年、目標としている50%に届かず、ほかの先進国に比べても低い水準で、早期発見や治療につながっていないと指摘されてきた。20日まとめられたがん対策加速化プランでは、毎年、26万人がかかると推計されている働く世代への対策が重点的に示された。
このうち、これまで自主的な取り組みに任されてきた職場の検診については、実態調査したうえで検査項目などを示したガイドラインを策定する。市区町村が実施している検診についても、自治体ごとの受診率を公表し働く世代などへの対策を促す。

「がん対策加速化プラン」は、がん克服のための取り組みを強化する施策で、2015年内の策定が予定されており、この協議会は、11月6日の前回会合で、同プランに関する「委員の意見と新たな具体策案」を示した。
今回、示された提言案は、次の3項目を柱としている。
(1)予防(がん検診/たばこ対策/肝炎対策/学校におけるがんの教育)。
(2)治療・研究(がんのゲノム医療/標準的治療の開発・普及/がん医療に関する情報提供/小児・AYA世代のがん・希少がん対策/がん研究)。
(3)がんとの共生(就労支援/支持療法の開発・普及/緩和ケア)。

3項目の細目ではそれぞれ、「現状と課題」と「実施すべき具体策」も列挙されており、主な具体策としては、次の内容などがある。
 検診対象者、市町村それぞれの特性に応じて、行動変容を起こすためのインセンティブ策およびディスインセンティブ策を導入する(がん検診:受診率対策)。
関係省庁などが協力した、ゲノム医療の実現に資する研究を推進する。また、大学病院など医療機関の疾患ゲノム情報などを集約するため、「全ゲノム情報等の集積拠点」を整備する(治療・研究:がんのゲノム医療)。
拠点病院などのがん相談支援センターを活用した相談、患者の背景に応じた対処方法を指導するためのツールの開発、経験者を交えた就労相談を重視した地域統括相談支援センターの拡充(がんとの共生:就労支援)。

さらに、抗がん剤などによる副作用や後遺症の治療ガイドラインの整備や患者への就労支援を行い、治療と仕事の両立を進めることや、患者個人の遺伝子情報に基づいた効果的な診断や治療法の開発に力を入れること、喫煙率を下げるため禁煙治療への保険適用の拡大などが盛り込まれている。
厚労省は、こうしたプランを確実に進め、がんによる死亡率を平成17年の人口10万人当たりの92.4人から20%減らしたいと目標に置く。

厚労省は、平成19年に施行されたがん対策基本法に基づき策定された「がん対策推進基本計画」で、今年末までの10年間にがんで死亡する75歳未満の人を20%減少させるという目標を掲げていました(人口10万人当たり2005年、92.4人→2015年、73,9人)。
しかし、今年5月、現状のままでは目標が達成できず、がんで死亡する人は10年前に比べて17%の減少にとどまることが国立がん研究センターの推計で明らかになった(2015年予測値76.7人)。
背景には検診の受診率の低迷やたばこ対策の遅れがあると指摘され、厚生労働省は専門家などから意見を聞き、働く世代の検診の強化などを盛り込んだ「がん対策加速化プラン」の策定を進めていた。

◆次期改定の基本方針骨子案で方向性を詳しく例示
医療保険部会 がん医療、救急医療、精神医療など

――厚生労働省
厚生労働省は11月20日、社会保障審議会の「医療保険部会」を開催し、2016年度改定に向けて「基本方針の骨子案」を医療部会に示した。その結果、大筋で部会委員から了解を得た。今回、基本方針の骨子案として示されたのは11月19日の医療部会と同じ内容だが、充実が求められる分野としては、認知症の高齢者への対応や緩和ケアを含むがん医療、救急医療、精神医療などをあげた。20日には医療保険部会にも提示した。今後、中央社会保険医療協議会・総会で議論される見通し。改定の基本的な視点は、地域包括ケアシステムの構築を引き続き進めることと、質の高いサービスを効率的に提供できる体制をつくることが中心となっていて次の4本柱に要約されている。

地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
【重点課題】
(基本的視点)
○医療を受ける患者にとってみれば、急性期、回復期、慢性期などの状態 に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに、必要に応じて介護 サービスにつなぐなど、切れ目ない提供体制が確保されることが重要。
○このためには、医療機能の分化・強化、連携を進め、在宅医療・訪問看護 などの整備を含め、効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、 地域包括ケアシステムを構築していくことが必要。

(具体的方向性の例)
(ア)医療機能に応じた入院医療の評価・効率的で質の高い入院医療の提供のため、医療機能や患者の状態に 応じた評価を行い、急性期、回復期、慢性期など、医療機能の分化・強化、 連携を促進。
(イ)チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療 従事者の負担軽減・人材確保・地域医療介護総合確保基金を活用した医療従事者の確保・養成等と併せて、 多職種の活用によるチーム医療の評価、勤務環境の改善、業務効率化の 取組等を推進し、医療従事者の負担軽減を図る。
(ウ)地域包括ケアシステム推進のための取組の強化・複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理 等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた 診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価。
・患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握 とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・ 薬局の機能を評価。
・退院支援、医療機関間の連携、医療介護連携、栄養指導等、地域包括ケア システムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師等による多職 種連携の取組等を強化。
(エ)質の高い在宅医療・訪問看護の確保 ・ 患者の状態や、医療の内容、住まいの状況等を考慮し、効率的で質の 高い在宅医療・訪問看護の提供体制を確保。
(オ)医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化 ・ 本年5月に成立した医療保険制度改革法も踏まえ、大病院と中小病院・ 診療所の機能分化を進めることについて検討。
・外来医療の機能分化・連携の推進の観点から、診療所等における複数の 慢性疾患を有する患者に療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を 継続的に実施する機能を評価。

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点
(基本的視点)
○患者にとって、医療の安心・安全が確保されていることは当然のことで あるが、今後の医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえれば、第三者に よる評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、適切な情報に 基づき、患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすることや、 病気を治すだけでなく、「生活の質」を高める「治し、支える医療」を実現 することが重要。
(具体的方向性の例)
(ア)アかかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局 の評価・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康 管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者 に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能 を評価。(再掲)・患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握 とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。
(イ)情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集 の推進・情報通信技術(ICT)が一層進歩する中で、ICT を活用した医療連携 による医療サービスの向上の評価を進めるとともに、医療に関するデータ の収集・活用を推進することで、実態やエビデンスに基づく評価を図る。
(ウ)質の高いリハビリテーションの評価等、疾病からの早期回復の推進・質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を進め、疾病からの早期回復の推進を図る。

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
(基本的視点)
○ 国民の疾病による死亡の最大の原因となっているがんや心疾患、脳卒中 に加え、高齢化の進展に伴い今後増加が見込まれる認知症や救急医療など、 我が国の医療の中で重点的な対応が求められる分野については、国民の安心・ 安全を確保する観点から、時々の診療報酬改定においても適切に評価して いくことが重要。
(具体的方向性の例)
○上記の基本的視点から、以下の事項について検討を行う必要。
(ア)緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
(イ)「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
(ウ)地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
(エ)難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
(オ)小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
(カ)口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した 歯科医療の推進
(キ)かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による 評価・適正化
(ク)医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切 な評価 等

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
(基本的視点)
○今後、医療費が増大していくことが見込まれる中で、国民皆保険を維持 するためには、制度の持続可能性を高める不断の取り組みが必要である。 医療関係者が共同して、医療サービスの維持・向上と同時に、医療費の効 率化・適正化を図ることが必要。
(具体的方向性の例)
(ア)後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討・後発品の使用促進について、「経済財政運営と改革の基本方針 2015」で掲げられた新たな目標の実現に向けた診療報酬上の取組について見直し。
・後発医薬品の価格適正化に向け、価格算定ルールを見直し。
・前回改定の影響を踏まえつつ、現行の長期収載品の価格引下げルール の要件の見直し。
(イ)退院支援等の取組による在宅復帰の推進
・患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で生活を継続できるための取組を推進。
(ウ)残薬や多剤・重複投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進
・医師・薬剤師の協力による取組を推進し、残薬や多剤・重複投薬の削減を進める。
(エ)患者本位の医薬分業を実現するための調剤報酬の見直し・服薬情報の一元的把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、 かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価するとともに、かかりつけ機能 を発揮できていないいわゆる門前薬局の評価の適正化等を進める。
(オ)重症化予防の取組の推進・重症化予防に向けて、疾患の進展の阻止や合併症の予防、早期治療の 取組を推進。
(カ)医薬品、医療機器、検査等の適正な評価・医薬品、医療機器、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な 評価を行うとともに、相対的に治療効果が低くなった技術については置き換えが進むよう、適正な評価について検討。・また、医薬品や医療機器等の費用対効果評価の試行的導入について検討。

3.将来を見据えた課題
○地域医療構想を踏まえた第 7 次医療計画が開始される平成 30 年度に向け、 実情に応じて必要な医療機能が地域全体としてバランスよく提供されるよう、 今後、診療報酬と地域医療介護総合確保基金の役割を踏まえながら、診療報 酬においても必要な対応を検討。
○平成 30 年度の同時改定を見据え、地域包括ケアシステムの構築に向けて、 在宅医療・介護の基盤整備の状況を踏まえつつ、質の高い在宅医療の普及 について、引き続き検討を行う必要。
○国民が主体的にサービスを選択し、活動することが可能となるような環境 整備を進めるため、予防・健康づくりやセルフケア・セルフメディケーシ ョンの推進、保険外併用療養の活用等について広く議論が求められる。

◆骨太の方針『経済・財政再生計画』の改革工程の具体化 議論
かかりつけ医以外の受診時の外来定額負担焦点 医療保険部会 

――厚生労働省
11月20日開催の社会保障審議会の「医療保険部会」では、このほか、「骨太の方針『経済・財政再生計画』の改革工程の具体化」などを議論した。政府の骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)で検討を求められた、(1)医療・介護を通じた居住費負担の公平化、(2)高齢者の自己負担、高額療養費、(3)かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担――など。

(1)に関しては、「入院時食事療養費」として、入院したときに必要な食費を一部支給している。他方、「入院時生活事療養費」として、65歳以上の人が療養病床に入院したときに必要となる食費・居住費を一部支給している。
厚労省は、論点として「入院医療の必要性の高い医療区分II・IIIの人に関して、居住費負担を求めないことにしているが、居住費負担をどう考えるか」と提示。また、65歳未満の療養病床の入院患者については、介護保険施設の対象外で、年金給付がないため、居住費負担を求めていないが、居住費負担における年齢区分などに関しても論点にするとした。

(2)では、厚労省は骨太方針2015で、「社会保障制度の持続可能性を中長期的に高めて世代間・世代内での負担の公平を図り、負担能力に応じた負担を求める観点から、医療保険の高額療養費制度や後期高齢者の窓口負担のあり方について検討する」とされていると指摘。検討の際は、高齢者の適切な受診の確保を基本に、高齢者の生活への影響などを考慮するほか、自己負担や高額療養費などの患者負担だけでなく保険料も含め総合的に検討する必要があると述べている。

(3)に関しては、厚労省は外来機能の分化・連携をさらに進めるための1つの方策として、2016年度から、紹介状なしで大病院を受診する患者に一定額以上の定額負担を求めることが国保法等の改正で決まっていることなどを説明。このような現状を踏まえ、骨太の方針で、さらに検討することとされている、かかりつけ医以外の受診時の定額負担である「かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担をどう考えるか」を、論点として提示した。

◆2014年「医療施設調査・病院報告」の結果を公表 厚労省
病院病床数前月比111床増加、診療所病床数 303床減少

――厚生労働省
厚生労働省は11月19日、2014年の「医療施設(静態・動態)調査」と「病院報告」の結果を取りまとめ、公表した。結果の主な特徴は次の通り。

・病院の施設数は前月に比べ1施設の増加、病床数は111床の増加。
・一般診療所の施設数は45施設の増加、病床数は303床の減少。
・歯科診療所の施設数は20施設の増加、病床数は5床の減少。

「医療施設調査」は、全国の医療施設から提出された開設・廃止などの申請・届出をもとに、毎月「動態調査」として施設数、病床数、診療科目などの動向を把握するとともに、3年ごとに「静態調査」として検査・手術の実施状況や診療設備の保有状況などの診療機能の調査を実施。「報告」は、全国の医療施設からの報告をもとに、毎月、1日平均外来・在院患者数、病床利用率、平均在院日数を、年1回、職種別従事者数を集計している。

病院全体の施設数は、前年比47施設減の8,493施設で、病床数は、同5,511床減の156万8,261床だった。一般診療所は、同67施設減の10万461施設で、病床数は、同8,978床減の11万2,364床。歯科診療所の施設数は、同109施設減の6万8,592施設で、病床数は、同9床減の87床だった。

小児科を標ぼうする一般病院は、前年比24施設減の2,656施設、小児科を標ぼうする一般診療所は2万872施設。産婦人科または産科を標ぼうする一般病院は、同14施設減の1,361施設、産婦人科または産科を標ぼうする一般診療所は3,469施設だった。

また、「1日平均在院患者数」は、一般病床を含む一般病院全体が、前年比1.1%減の103万7,337人、一般病床が同1.2%減の66万9,741人だった。「1日平均外来患者数」は、病院全体で、同1.3%減の137万2,114人。「平均在院日数」は、病院全体で、前年比0.7日減の29.9日。病院の常勤換算従事者数は、医師が同1.7%増の21万112.4人、看護師が同2.8%増の76万7,700.8人だった。なお、人口10万人に対する常勤換算医師数は165.3人で、最も多いのは高知県の234.8人、最も少ないは埼玉県の114.8人だった。

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お電話
  • 【フリーダイヤル】0120-136-436
  • Tel.06-6222-0030
執務時間
  • 月曜日~金曜日
    午前9:00~午後5:30

お問い合わせメールフォーム

些細なことでも気兼ねなくお問い合わせください。「はい、日本クレアス税理士法人です」と電話を取ります。その後に「ホームページを見て」と言っていただけるとスムーズに対応できます。