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医療経営情報(2015年11月12日号)

2015/11/17

◆次年度改定へ医療技術の評価案を提示 技術評価分科会
886件の提案、評価が必要な技術に737件提示 

――厚生労働省
厚生労働省は11月6日、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開き後発医薬品の使用促進に向けて議論した。厚労省は、論点として、「一般名処方加算の見直し」「後発医薬品を銘柄指定し、変更不可の場合には、その理由を処方せんに記載」「院内処方についての後発医薬品の使用を評価」――など、計6つを提示した。
今年6月に閣議決定した「骨太の方針2015」の「2017年央に後発医薬品の数量シェア70%」が、当面の課題だ。

この日、厚労省は「2014年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(2015年度調査)の速報案」を議題とし、「後発医薬品の使用促進策の影響および実施状況調査」結果を公表した。毎年度行われているもので、調査対象は保険薬局703施設、一般診療所813施設、病院数489施設、医師778人。
前回2014年度診療報酬改定で、後発医薬品の調剤を促進するため、後発品調剤率が高い方に重点を置いた評価とする【後発医薬品調剤体制加算】の要件の見直し(3段階評価から2段階評価への整理)や、一般名処方が行われた医薬品は、原則、後発医薬品が選択されるよう患者に対し有効性などを丁寧に説明する規定の明確化などの見直しが行われている。

保険薬局調査では、後発医薬品名で処方された医薬品(n=5万5,271)で、「変更不可となっている」が15.9%(前年度調査比28.9ポイント減)、「変更不可となっていない」が84.1%(同28.9ポイント増)。変更不可品目の割合別の施設分布をみると、90%を超える薬局が40施設(全体の約7%)あり、これらの施設のみで後発医薬品変更不可品目数全体の多数を占めている状況。

また、「全般的に後発医薬品の説明をして調剤するように取り組んでいる」と回答した薬局以外の薬局(230施設)が、あまり積極的には取り組んでいない理由は(複数回答)、「後発医薬品の品質(効果や副作用を含む)に疑問がある」
50.4%、「在庫管理の負担が大きい」47.4%、「近隣医療機関が使用に消極的」
35.7%の順。また、後発医薬品を積極的に調剤していない医薬品の種類は、精神神経用剤、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤が上位となった。

一方、医師調査で、2015年4月以降「変更不可」にチェックした経験のある医師が、銘柄指定する理由は「後発医薬品の銘柄を指定することはない」が最多で、次いで「患者からの希望」、「特定銘柄以外の品質(効果や副作用を含む)に疑問があるから」が続いている。

6日の総会では薬剤使用の適正化について議論した。厚労省は長期処方の制限、多剤処方改善の取り組みの評価、残薬解消のための処方箋様式の変更などを提案したが、分割調剤や残薬調整をめぐり診療側・支払側で意見が分かれた形となった。
厚労省は、高齢者の多剤投与や残薬の問題への取り組みとして、残薬調整についての医師の指示欄を処方せん様式に設置することや分割調剤の導入などを提案した。多剤投与を減らすための対応も提案され、高齢者に対するきめ細かい処方が求められそうだ。

◆病院1施設1.2億円赤字 医療実調まとまる
厚労省実態調査 報酬改定議論本格段階へ

――厚生労働省
厚生労働省は11月4日、中央社会保険医療協議会(中医協)に医療機関の経営状況を示す医療経済実態調査を報告した。これは来年度の診療報酬を改定するための基礎データとなり次期(2年毎)診療報酬改定の議論が行われる。略称―実調。
実態調査は約8500の病院・診療所・保険薬局などを対象に13~14年度の収支などを尋ね、半数余りから回答を得た。報告によると1病院当たりの医業収益は3 7億5千万円、介護収益は400万円。これに対し、経費は38億7千万円。一施設当たり1億2千万円の赤字になる計算だ。
病院の損益率(精神科を除く)はマイナス3・1%で2年前の前回調査よりも悪化。診療所、保険薬局も悪化していたが、それぞれ15・5%、保険薬局も7・2%と依然高い収益差を維持している。
保険薬局の利益率は、個人と法人を合わせた全体で前年度比2・1ポイント減の7・2%だった。1店舗を持つ法人の場合は0・0%(前年度比1・7ポイント減)とほとんどなく、2~5店舗なら3・9%(同3・2ポイント減)。一方、6~19店舗の法人は10・0%(同0・3ポイント増)、20店舗以上は11・9%(同1・5ポイント減)と、店舗数が多い法人は2桁の利益率を確保した。
保険薬局の利益率は、個人と法人を合わせた全体で前年度比2・1ポイント減の7・2%だった。1店舗を持つ法人の場合は0・0%(前年度比1・7ポイント減)とほとんどなく、2~5店舗なら3・9%(同3・2ポイント減)。一方、6~19店舗の法人は10・0%(同0・3ポイント増)、20店舗以上は11・9%(同1・5ポイント減)と、店舗数が多い法人は2桁の利益率を確保した。
保険薬局の収入源となる調剤報酬は診療報酬の一つ。その報酬全体のマイナス改定を狙う財務省が特に大幅削減を求めている。多くの店舗を展開する大手の調剤薬局チェーンは多くの店舗をもち販路を広げていて大病院や診療所の処方箋を主に扱う門前薬局となって効率的に利用者を集めていることも事実で、厚労省では今、検討会を立ち上げ、ようやく見直しが始まったばかり。薬局の役割を「健康情報拠点薬局」として日本再興戦略に盛り込み①医薬分業に徹し②セルフメディケーションを推進するなどをまとめている。

11月6日、塩崎厚生労働大臣は閣議後の記者会見で「実調結果」について次のようにコメントした(要旨)。

記者「薬局や診療所などの利益率が高いという結果が出ました。これについての大臣の感想をお願いいたします」
大臣「収支は全体として悪化している模様ですが、今後の中医協での議論、関係各方面の様々な意見が出てくるかと思いますので、内閣としての予算編成の過程の中で、この具体的な診療報酬改定率について検討してまいりたいと考えています」。
記者「財務省では、本体もある程度のマイナスをというような意見も出る一方で、日本医師会の横倉会長の方でやはりプラス改定を求めるという声が出ました。厚労省としての現段階の、改定率へのスタンスがあればもう少し御意見をお願いできればと思います」。
大臣「国民にとって安心できる医療がきちっと確保できるのか、社会保障が全体としてもしっかりとしたものとして皆様方に受け入れられていただけるのかというのが大事であります。それを予算、つまり財政的にもきちっと持続可能なものとしていかないといけませんので、そのような形で、最終的に皆様の御意見を集約してまいりたいと思います」。

◆医療・介護連携ICTシステム「未来かなえネット」構築開始
日本ユニシス、大船渡、陸前高田などで一元化サービス

――日本ユニシス
ビジネスソリューションを提供するITサービス企の大手、日本ユニシス(東京都)は11月7日、未来かなえ機構(岩手県世田米町)が運営する気仙医療圏の地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」の構築を始めたと発表した。
気仙(けせん)医療圏とは、大船渡市、陸前高田市、住田町の2市1町。気仙は旧気仙郡の圏域に由来する。山間部にある住田町(すみたちょう)をのぞき沿岸部の2市は東日本大震災で大打撃を受け多くの人命、インフラが失われた。
2016年4月に第一期システムを運用開始予定。復旧または新設等の気仙医療圏の主な病院、診療所(医科、歯科)、薬局、介護サービス事業所などを双方向に連携する県内初の試み。
東日本大震災から間もなく5年が来る。復興への道程は程遠いが、これまで医療・介護連携ICTシステムのようなインフラがなかっただけに行政、医療、住民の生活に大きく貢献することは確実と期待されている。

未来かなえ機構は今後、気仙医療圏での課題について、医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護・保健福祉施設、さらには2市1町の行政機関の連携に尽力する。東日本大震災で多くの医療機関、介護施設が大震災で被災した気仙医療圏の主な病院や診療所、薬局、介護サービス事業所などを双方向に連携させて地域住民の医療データを一元管理する。

岩手県三陸海岸南西部(2市1町)の人口は平成24年国立人口問題研究所の推計では7万1200人ほどで、震災で2270人(死者・行方不明者)減少、家屋・倒壊件数は7000件にのぼっている。
高齢化、被災による人口減、多くのインフラの消滅(2病院が倒壊、現在、規模を縮小するなどで復旧している)、避難生活上のストレスなど病気の増加などの問題から医療サービスへの需要が多様化している。これだけの規模を有するシステムは岩手県では気仙医療圏が初。
(画像はシステムのイメージ図・日本ユニシスのニュースリリース)

「未来かなえネット」の特徴
病院、診療所(医科、歯科)、薬局、介護サービス事業所の情報が双方向に連携
各施設が保有の情報を「未来かなえネット」で管理・集約し、情報は双方向で連携することが実現、検査会社などのデータのみでなく、介護施設のデータも一元管理し双方向を実現できる。
電子カルテ導入を前提とせず、関係機関の既存システムを最大限有効活用
「未来かなえネット」につながっている関係機関は新たに電子カルテシステムを導入する必要はなく、既存のシステムを最大限有効活用できる。

電子カルテ導入を前提とせず、関係機関の既存システムを最大限有効活用
医療・介護従事者は業務をほとんど変更せず、独特の名寄せアルゴリズムを使い、複数施設を利用している人の紐付け作業などすべてのデータの連携が自動で行われる。医療・介護従事者のアナログ的な業務をほとんど必要としない。そため運用コストは大幅に削減されるなどの特徴を持つ。

システム構築に求められた要件
未来かなえ機構がプロジェクト発足のため、システム構築に求めたのは、①
2方向(垂直的統合=多様なレベルでの医療ケアの調整・水平的統合=多様な介護・保健・社会的支援サービス間調整)の統合の実現 ②電子カルテに依存せず、参加するすべての関係機関が双方向連携されることで、地域住民が最大の恩恵を享受できるシステムであること③地域の高齢化・少子化などの人口変化、ネットワークの拡大、そしてICT技術の進歩にも対応できる、柔軟性・拡張性を持っているシステムであることの実現に努めた。

この必須条件に対して日本ユニシスは具体的な提案をし、未来かなえ機構は様々な点を考慮し日本ユニシスをパートナーとして決定した。日本ユニシスは今後、継続して「未来かなえネット」を支援、同地域での実績を踏まえて全国の他地域に対しシステムの提供を目指している。

▼未来かなえネットとは―医療・介護・保健・福祉を軸とした、地域セーフティーネット構築の名称。 地域を寺子屋とし、共に学び共に支え合う、活力みなぎる住民力を育てることに目標を置く。 団体名称=一般社団法人 未来かなえ機構。事務所住所―岩手県住田町世田米字川向96番地5 住田町保健所内。

◆「奇抜なアイディアをどんどん出してほしい」
1億総活躍国民会議、初会合 本部長に塩崎厚労相

――公益財団法人日本医療機能評価機構(評価機構)
安倍晋三首相が掲げる「1億総活躍社会」実現への具体策を議論する国民会議の初会合が10月29日に首相官邸で開かれた。「一億総活躍国民会議」は、アベノミクスの新たな3本の矢である(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障―の実現に向けた具体的なプランを策定するために設置された。
会合には議長を務める安倍首相や加藤一億総活躍担当相など関係閣僚、民間から経団連の榊原定征会長、増田寛也・元総務相、タレントの菊池桃子さんら12閣僚を含む計28人で構成される全メンバーが出席した。
民間議員にはこのほか、パラリンピックのチェアスキー金メダリストや保育園代表、女性―ジャーナリスト、若者の就労支援、子育て支援などの分野から30代の保育園運営者(男性)も起用した。菊池さんは戸板女子短大客員教授も務め、女性のキャリア形成や子育てに関する活動をしている。
メンバー選出の加藤一億総活躍担当相は「わが国の構造的問題の少子高齢化に真正面から挑む。幅広いメンバーを選んでほしいと首相から指示があった」と明かした。記者団の取材に応じた菊池さんは「結婚や出産などで職を離れた女性の復職支援の必要性を強調した、子育ての難しさも訴えていきたい」と話した。

民間メンバーは次の通り。
飯島 勝矢 東京大高齢社会総合研究機構准教授
大日方邦子 日本パラリンピアンズ協会副会長
菊池 桃子 タレント・戸板女子短大客員教授
工藤  啓 NPO法人育て上げネット理事長
榊原 定征 経団連会長
白河 桃子 ジャーナリスト
高橋  進 日本総合研究所理事長
対馬 徳昭 社会福祉法人ノテ福祉会理事長
土居 丈朗 慶応大教授
樋口 美雄 慶応大教授
増田 寛也 元総務相
松為 信雄 文京学院大教授
松本理寿輝 まちの保育園代表
三村 明夫 日本商工会議所会頭
宮本みち子 放送大副学長

これまでの経緯として、「1億総活躍社会」構想を具体化する厚生労働省は10月16日、安倍首相が新たに旗印として掲げた「1億総活躍社会」の「実現本部」を立ち上げ、関係部局の幹部を集め英知を結集、本部長を務めるのは塩崎厚労相。
各部局の幹部で構成し詳細な議論を進める「実現本部」は、それぞれのテーマごとにチームをつくって深めていくという。たとえば「介護離職ゼロ」のチームは、介護保険を担当する老健局の三浦局長がまとめ役。施設の整備方針も含めたサービス提供体制のあり方、介護職員の確保策、介護休業制度の改善などが俎上に載るとみられる。
「介護離職ゼロ」など極めて高い目標

課せられた目標は、「希望出生率1.8の達成」や「介護離職ゼロ」など極めてハードルが高い。費用の適正化とも両立する妙案をどう打ち出すのか、その力量が改めて問われることになりそうだ。
本部長を務める塩崎厚労相は挨拶に立ち、「我が省が先頭に立って取り組まなければいけない。既存のものを超えた思い切った施策を新たにつくり出していく」と強調。「それぞれの所管にとらわれることなく、若い人も含めて叡智を結集して欲しい。今までに考えたことがないこと、奇抜なアイディアも含めてどんどん出して欲しい」と呼びかけた。
政府は今後、20167年の春過ぎにも「1億総活躍プラン」を決定する予定。今月中に発足する「国民会議」の進行にも、厚労省の「実現本部」の意向が影響を与えそうだ。

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