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医療経営情報(2015年11月5日号)

2015/11/9

◆次年度改定へ医療技術の評価案を提示 技術評価分科会
886件の提案、評価が必要な技術に737件提示 

――厚生労働省
厚生労働省は10月30日、診療報酬調査専門組織の「医療技術評価分科会」を開催し、「2015年度医療技術の評価案」に関して議論した。診療報酬改定では、入院料や各種加算などの診療報酬項目の見直し・新設・廃止などのほかに、新規の医療技術導入も行われる。
このため、関係医学会からの要望などのうち、有効性・安全性等の高いものに関して、中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会で審査・評価して、結果を中医協総会に報告している。今回、厚労省は評価案を提示して議論を行った。
診療報酬の対象になる医療技術については、2004年度以降、「医療技術評価分科会」が評価をしているが、2006年度以降の改定で1回につきおよそ600~800の医療技術の評価の提案が出され、採択されたのは100~200ほどで、採択率は15~35%の間でばらつきがあった。

今回、厚労省は2015年3月から6月に、学会等から合計886件(重複分含み914件)の提案書が提出されたことを報告。学会からのヒアリングや外部有識者の意見を踏まえ、重複を確認して有効性や安全性等に関する提案書の記載をもとに作成した評価案を提示した。

厚労省は886件の提案を、「幅広い観点から評価が必要な技術」737件(うち新規技術272件、既存技術465件)と、「評価対象外の技術」149件に振り分けて示した。今後、2016年1月下旬に評価を取りまとめて、中央社会保険医療協議会(中医協)総会に報告。中医協総会で議論するとしている。

このほか、先進医療にかかる提案書(15件)の取り扱いに関し、厚労省は個々の技術で報告された実績に基づく詳細なデータを用いて議論することが必要なため、先進医療開始時の検討も行う先進医療会議での議論が適しているとして、先進医療会議で検討することを提案した。さらに、議論の際に、関連学会提出資料をあわせて用いることができるよう、分科会で整理した医療技術評価提案書やヒアリングなどの資料を、先進医療会議に対して提供すると提案して概ね了承された。

厚労省事務方が提出した「医療技術の評価(案)について」の説明資料は次の通り(注:一部で省略)

1.これまでの検討状況
具体的には、本年3月から6月にかけて、学会等から合計886 件(重複分をカウントすると914 件)の提案書が厚生労働省に提出された。今般、学会等からのヒアリングや外部有識者の意見を踏まえ、重複を確認し、有効性や安全性等に関する提案書の記載をもとに事務局が評価(案)を作成した。

2.評価の対象技術について
(1)これまでの診療報酬改定では、医療技術評価分科会における評価対象技術については、原則、医科診療報酬点数表第2章特掲診療料第1部 医学管理等から第13 部病理診断、又は歯科診療報酬点数表第2章特掲診療料第1部 医学管理等から第14 部 病理診断に該当する技術として評価されている又はされることが適当な医療技術としてきた。
その際、医学管理等の提案は、原則として、医療技術としてアウトカムが改善する等の有効性をデータで示すことができるものに限る、としている。

(2)平成28 年診療報酬改定からは、これに加え、以下の取扱いとした。
①既に先進医療において実施されている技術に係る提案書を提出できることとした。※ 提出された場合の取扱いについては、医療技術評価分科会としての整理等につき、今後議論することとしている。(後述)
②新規特定保険医療材料等により、次回改定まで既存の診療報酬項目が準用されるものについては、提案書を提出できることを明確にした。

3.医療技術の評価(案)について
○ 本日の医療技術評価分科会において、事務局が作成した評価(案)に基づいて個別の提案書について振り分けを行う。
○ その結果、「① 幅広い観点から評価が必要な技術」とされたものについて、今後、医療技術評価分科会において評価を行った上で、その結果を中央社会保険医療協議会総会へ報告することとし、「② 医療技術評価分科会における評価の対象とならない技術」については評価の対象外とする。

◆登録取り消しは医科3件、歯科1件、保険薬局2件 東京都
保険医療機関、監査による返還指示額約6億5,360万円

――東京都
東京都は10月29日、2014年度の「指導検査報告書」(社会福祉施設や保険医療機関等を対象)を公表した。
検査結果で浮上した総体的な問題として、社会福祉法人で主に指摘されたのは、新事業を開始しても定款変更など適切な法的・事務的手続きを行っていないことなどが露見した。介護保険施設(特別養護老人ホーム等)では、看護体制加算などでの事務処理的なミス(介護報酬の算定)の誤りが散見された。障がい者支援施設では、提供したサービス内容等について、経営の基本となるデータベース(記録・保存等)を適切に行っていないことが指摘された。初歩的な単純ミスなのか意図的なものかは明らかにはされていないが、今後、事務処理など基本作業の在り方、順守精神が厳しく問われそうだ。

実地検査が実施されたのは3,313カ所で、その内訳は、社会福祉法人88、社会福祉施設など1,256、在宅サービス事業1,622、保険医療機関など347。保険医療機関に対する指導・検査は、療養担当規則などの遵守を目的としており、個別面接・懇談方式の「個別指導」、講習会形式の「集団指導」、不正請求の疑いがある場合などの「監査」がある。

今回、公表された「保健医療機関に対する指導など」の結果によると、個別指導は、医科132件、歯科25件、保険薬局88件。集団指導などは、医科793件、歯科1,012件、保険薬局601件。
それぞれの「主な指摘事項とその事例」としては、次のものなどがあげられる。
*診療ごとの症状・所見の記載に不備がある(医科、歯科)。
*傷病名が、診療報酬明細書と一部一致していない(医科)。
*算定要件を満たさない、診療情報提供料(I)や特定薬剤治療管理料の請求が見られる(医科)。
*算定要件を満たさない、歯周病検査や歯周基本治療の請求が見られる(歯科)。
*算定要件を満たさない、薬剤服用歴管理指導料の請求が見られる(保険薬局)。

指導を実施した結果、保険医療機関などから返還の申し出があった額は、監査による返還指示額を含め、約6億5,360万円に達した。

一方、保険医療機関などに対する監査は、医科5件、歯科4件、保険薬局2件に対して実施された。
その結果、保険医療機関などの指定取り消しは、医科2件、歯科1件、保険薬局1件。同指定取り消し相当が、医科1件、保険薬局1件。保険医などの登録取り消しは、医科3件、歯科1件、保険薬局2件だった。

◆3割の保険者が来年度までに移行実施 6割は最終年度
厚生労働省が「新・総合事業」のスケジュールを初公開

――厚生労働省
厚生労働省は10月26日、今年度の介護保険制度の改正で再編した新しい総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)について、10月1日時点の保険者ごとの移行スケジュールをまとめて初公表した。
介護保険制度の改正によって、介護予防訪問介護および介護予防通所介護が市町村の主管へ移行され、新たな介護サービスの形へと再編されることになった自治体主管の新事業。
「介護予防・生活支援サービス事業」は、要支援に認定された人、要支援に相当する人を対象としている。これまで要支援に認定された人に対して、介護予防給付として実施されていた「介護予防訪問介護」及び「介護予防通所介護」は、「訪問型サービス」及び「通所型サービス」として提供する。その際に保険者独自のサービスも利用可能となる。

厚労省の公表内容によると、今年度中に移行するのは12.8%の202保険者。来年度中を予定しているのは20.2%の319保険者で、これらをあわせると33.0%となっている。61.2%の966保険者が、準備期間の最終年度にあたる2017年度に移ると答えていた。
公表されたデータによると今年1月時点の結果と比べると、移行のタイミングを早めに設定した保険者が少し増えている。「未定」も92保険者(5.8%)と少なくなっていた。しかし全1,579保険者のうち、6割強(61.2パーセントに当たる966保険者)が選択しているのは2017年4月で最多となっている。

逆に見ると期限ぎりぎりで時間をかけて慎重に改革を進めようという保険者が多いのが実情で、制度に対する理解深度に時間が割かれているのか、先行している約10%の他自治体の検討時間に費やしているのか、いずれにしても地域の実情に即した介護サービスの実現が求められているのが、この「総合事業」だ。厚労省は「すべての保険者が移行を済ませる2018年度に向けて、今後もきめ細かい後押しを積極的に行っていきたい」としている。

●具体例として10月から始まった主な新しいサービス例(A市の広報)
<家事援助訪問型サービス>
シルバー人材センターの会員がご自宅を訪問し、調理、洗濯、掃除等の家事援助を行います。サービスの提供は1回につき1時間で,1週間に2回まで利用できます。自己負担額の目安=・1回あたり150円(一定以上の所得の方は1回あたり300円)

<短期集中訪問型サービス>
3カ月から6カ月の短期間に集中して、市の保健師等が適宜ご自宅を訪問し、うつや閉じこもりなどの改善に向けた相談指導等を行います。
自己負担額=市の保健師等の訪問…無料
3カ月から6カ月の短期間に集中して,リハビリ専門職員等が1,2回程度ご自宅を訪問し,運動メニューの提案や指導を行います。(短期集中通所型サービスの利用者で,自宅内での生活動作や環境に不安を感じている方が対象)
自己負担額 リハビリ専門職員等の訪問…・1回につき100円
<短期集中通所型サービス>
3カ月から6カ月の短期間に集中して、理学療法士等のリハビリテーション専門職員が、日常生活に支障のある生活行為の改善に向けた支援を行います。3カ月から6カ月の期間中、ご利用時間は1回あたり送迎込みで3時間程度で、週に1回程度利用できます。
自己負担額=・1回につき150円(送迎なしは100円)

◆2014年の薬局ヒヤリ・ハット事例報告数5,399件 評価機構
疑義照会関連のヒヤリ・ハット事例が年々増加 

――公益財団法人日本医療機能評価機構(評価機構)
中立的・科学的な第三者機関である公益財団法人日本医療機能評価機構(評価機構)は10月26日、2014年1月~12月に報告された事例を取りまとめた冊子「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の年報」を公表した。(1)薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の概要、(2)報告の現況、(3)薬局ヒヤリ・ハット事例の分析、(4)共有すべき事例を柱としている。この事業は2008年度からスタートして今回で6回目。

平成18年6月に「医療法」が改正され、薬局は病院等と同じく「医療提供施設」として位置づけられた。同時に薬局も病院等と同様に、薬局における安全管理指針の整備、職員研修、調剤事故報告の徹底など安全確保のための体制整備が義務化された。
日本医療機能評価機構が医療機関から報告を受けているヒヤリ・ハットの事例データでは、約3割(平成20年データ値)が薬剤に関するもの。しかし外来患者の半数以上が薬局で調剤を受けており、薬局においても相当数のヒヤリ・ハット事例が発生していると推測される。
薬局には、病院などにおける調剤所とは異なり、次のような特徴があるといわれている。
複数の医療機関(診療科)の受診による重複投与や相互作用 2.一般用医薬品や薬局製剤など、医療用医薬品以外の医薬品の販売 3.先発医薬品から後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更など。

今回、公表されたヒヤリ・ハット事例の「総報告件数」は、5,399件。事業参加薬局数8,297軒(2014年12月末は8,244軒)のうち537軒から報告があった。総報告件数5,399件の「事例の概要」は、「調剤」が4,594件(構成比85.1%)と大半を占め、以下、「疑義照会」789件(同14.6%)、「特定保険医療材料」16件(同0.3%)だった。調剤4,549件の「事例の内容」の内訳は、「数量間違い」
1,343件、「薬剤取り違え」817件、「その他(調剤)」771件、「規格・剤形間違い」705件、「調剤忘れ」254件などが上位を占めた。

また、「発生要因(複数回答が可能で合計1万651件)」では、「確認を怠った」の4,181件が最多で、「勤務状況が繁忙だった」の1,406件が続いた。「ルールの不備」は395件で、2013年の189件から増加している。14年に報告されたヒヤリ・ハット事例は、調剤関連が4594件(85.1%)、疑義照会関連が789件(14.6%)等となった。そのうち疑義照会関連のヒヤリ・ハット事例は前年の13.4%から増え、年々増加傾向にあることが分かった。

▽「共有すべき事例」の再発・類似事例に関するヒヤリ・ハット
報告された事例の中から、医療事故防止のために特に有用な事例を、専門家により「共有すべき事例」として選定し、専門家からの「事例のポイント」を付して、毎月情報提供している。
このような教訓に富んだ具体的な事例を、繰り返し活用して日頃の調剤業務の安全性の向上に努めることが重要としてこの分析では「共有すべき事例」の選定状況について整理するとともに、特に着目した「共有すべき事例」について、2014年における再発・類似事例の報告件数や事例の紹介、改善策のまとめなどを行っている。
この年報では、「共有すべき事例」のうち「自動錠剤分包機のカセットへの充填間違い」に関する再発・類似事例を抽出し分析した。
なお事例として取り挙げた次の【6】【7】【8】は今回が初めての分析である。
【6】医療用配合剤に関するヒヤリ・ハット【7】散剤特有の調製に関するヒヤリ・ハット【8】個別薬剤に関するヒヤリ・ハット(抗てんかん剤は安全管理上、ハイリスク薬に位置づけられる)

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