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医療経営情報(2015年9月24日)

2015/9/30

◆「症状回復せず」186人 子宮頸がんワクチン接種で
HPV接種との因果関係否定できない場合「救済」措置

――厚生労働省
厚生労働省は9月17日、厚生科学審議会・予防接種ワクチン分科会の「副反応検討部会」と薬事・食品衛生審議会・医薬品等安全対策部会の「安全対策調査会」を合同開催した。特に子宮頸がん予防ワクチン(HPV)の副反応追跡調査結果などを議論し、今後も「積極的な接種勧奨の差し控え」を引き続きすべきとしている。
この日、2013年11月までに子宮頸がん予防ワクチンを接種し何らかの症状が出た2584人のうち状況が把握できた1739人についての調査結果が報告された。ワクチンを接種したのは中学生や高校生が多い。それによると症状が出てから1週間以内に回復した人は1297人と全体の75%を占めた一方、痛みやけん怠感、認知機能の低下などの症状が回復していない人が186人いることが分った。 症状が続いている期間については1年以上3年未満が113人、3年以上と答えた人も51人いた。

厚労省はこれまで、実態が明らかになっていないとして「救済」を行っていなかったが、今回の調査結果を受けて厚労省は翌18日、医療費などの給付に向けた審査を始め接種との因果関係が否定できない場合は救済することとした。
HPVワクチンは、2013年4月に定期接種化されたものの、接種後に強い痛み等を訴える患者が現れ、原因がワクチンのためと否定できないため、厚労省は2013年6月から積極的な勧奨を差し控えてきた。

調査結果の概略は次の通り。
今回、厚労省は子宮頸がん予防ワクチンを2012年11月までに接種した約338万人(約890万回接種)の副反応追跡調査の結果を報告。調査は全副反応疑い報告が対象で、医師による調査票記入によって実施した。
副反応疑いの報告があったのは被接種者約338万人の0.08%に当たる2,584人(延べ接種回数約890万人の0.03%)。このうち、発症日・転帰(経過)などが把握できた1,739人のうち、回復・軽快し通院不要である人は89.1%(1,550人)で、未回復の人は10.7%(186人、被接種者の0.005%、延べ接種回数の約0.002%)だった。
発症日・転帰等が把握できた人のうち、発症から7日以内に回復した方は74.6%(1,297人)。他方、7日を超えて症状が継続した人(417人)のうち、接種日から発症日の期間別の人数割合は、当日・翌日発症が47.7%(199人)、1月までの発症が80.1%(334人)という状況だった。

未回復の人(186人)では、多い症状は頭痛が66人で最多で、次いで倦怠感58人、関節痛49人、接種部位以外の疼痛42人、筋肉痛35人、筋力低下34人の順。生活状況(複数回答)を見ると、「入院した期間がある」87人(47%)、「日常生活に介助を要した期間がある」63人、「通学・通勤に支障を生じた期間がある」135人(73%)だった。未回復の人で治療効果あると回答した人は61.3%(87人)にとどまっている。

●速やかな救済と救済制度の是正など求める 予防接種審査分科会会長
17日に合同開催された厚生科学審議会・予防接種ワクチン分科会の「副反応検討部会」と薬事・食品衛生審議会・医薬品等安全対策部会の「安全対策調査会」では、副反応追跡調査の結果を受けた議論が中心だった。
安全対策調査会長で、疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会長の五十嵐隆調査会長が「HPVワクチン接種後に生じた症状に関する今後の救済」に対する意見を述べている。

五十嵐調査会長(分科会長)は日本の予防接種の救済制度は損失補償とは異なり、厳密な医学的な因果関係までは求めず、症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とされていると指摘。HPVワクチン接種後に生じた症状についても、方針を踏襲し速やかに救済を進めるべきと述べた。また、救済認定は、症例の全体像を踏まえて個々の患者の方ごとに丁寧に評価することが必要としている。

さらに、医薬品医療機器総合機構法での救済では、接種との因果関係が否定できない場合でも、予防接種法と異なり通院の医療費・医療手当の支給対象が、入院に相当する場合に限られていると指摘。基金事業で自治体に義務づけた民間保険も、予防接種法の救済制度で支給される医療費・医療手当をカバーしてはなく、国が主導して接種を進めた経緯を踏まえて、この差を埋める措置を検討すべきと強調した。

ワクチン接種後に生じた症状に関しては、患者への治療方法が確立されていないため、研究が必要であり、協力医療機関の受診者フォローアップについて、患者の方々に症状や診療に関する情報を提供してもらい、知見の充実・研究への協力を得やすくなる仕組みを求めている。また、患者に適切な治療ができるよう、さらに診療の質の充実を図り、患者の生活を支えるための相談体制を拡充すべきと述べている。

◆厚労省の医療費適正化計画に改善を求める報告書
会計検査院 特定健診実施率、療養病床の再編施策など

――会計検査院
会計検査院は9月16日、会計検査院法第30条の2にもとづいて国会・内閣に報告された「医療費適正化に向けた取り組みの実施状況についての報告書」を発表し、その所見のなかで、厚生労働省が現在進めている「医療費適正化計画」への対応を中心に改善を求めた。特筆されるのは、特定健診(メタボ健診)の実施率で、会計検査院が医療費抑制効果を検証するために厚労省が集めた健診データを調べたところ、約8割の約3760万件が診療報酬明細書(レセプト)データと合致せず、検証に活用できていないことが分かった。原因はNDBシステム処理上のミスだったという(毎日新聞9月4日既報)。
*NDB:ナショナル データベース(「レセプト情報・特定健診情報等データベースシステム」)。

医療費適正化計画は、高齢者の医療の確保に関する法律にもとづき、国民の高齢期における適切な医療の確保する観点から、医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、国・都道府県が定める計画。計画期間は5年で、第1期が2008年度~2012年度、進行中の第2期は2013年度~2017年度まで。
医療費の見通しのほか、住民の健康の保持の推進・医療の効率的提供の推進に関する目標(特定健診・特定保健指導の実施率、メタボ該当者・予備群の減少率、平均在院日数の短縮)などが定められている。

報告書は、医療費適正化計画の実施状況について、次の点を指摘している。
(1)入院期間短縮のための療養病床の再編施策「病床転換助成事業」について、厚労省は、療養病床の機械的な削減はしないこととしたなどとして、同事業が入院期間の短縮または医療費適正化に及ぼした効果などを評価していない。
(2)「病床転換助成事業」による転換病床数は第1期で計3,887床と、見込病床数の15.2%。第2期における全都道府県の転換病床数は、2013年度で計279床、2014年度で計171床にとどまり、全国的にほとんど実施されていない。
(3)多くの保険者の特定健診データなどをレセプトデータと突き合わることができない状況(不突合)で、NDBシステム構築の目的を十分に達成していない。

毎日新聞によると、特定健診には1,200億円超の国庫補助金が支出されており、厚労省は18年度に医療費適正化計画の実績評価をまとめる予定。会計検査院は「効果を適切に評価できなくなる」と指摘しており、厚労省は「既に集めたデータも照合できるように今年度システム改修を進める」としている。
会計検査院の所見では、「医療費適正化計画の実績に関する適切な評価」や「NDBシステムの運用状況を改善し、データの不突合の原因をふまえたシステムの改修」などを求めている。

◆骨髄由来間葉系細胞による顎骨再生療法に「適」 技術審査部会
名古屋大学医学部附属病院が申請した先進医療B

――厚生労働省
厚生労働省は9月17日、「先進医療技術審査部会」を開催し、先進医療Bとして申請されていた新規申請技術に対する検討や評価を実施した。その結果、名古屋大学医学部附属病院が申請した、骨髄由来間葉系細胞による顎骨再生療法を「適」と判断した。
この医療技術は、腫瘍、顎骨骨髄炎、外傷などにより、広範囲な顎骨欠損もしくは歯槽骨欠損を有する患者を対象として、従来行われてきた腸骨などの「自家骨移植」やBMP-2などの成長因子あるいは骨代替材料の局所投与に代わり、骨髄穿刺により比較的容易に採取することができる骨髄由来間葉系幹細胞を培養・分化誘導して局所に投与することにより、骨造成を促進して、咀嚼・嚥下・審美障害などの機能予後改善を図る。

◆GHSラベル(危険有害性)の意味「知っている」46.1%
平成26 年「労働安全衛生調査(労働環境調査)」の結果

――厚生労働省
厚生労働省は9月17 日、「平成26 年労働安全衛生調査(労働環境調査)」の結果を取りまとめ公表した。
労働安全衛生調査は、周期的にテーマを変えて調査を行っており、平成26 年は「労働環境調査」として危険有害業務に従事する労働者の健康管理や作業環境、化学物質の管理状況(国が定める第12 次労働災害防止計画の重点対策の1つである危険有害性の表示、安全データシートの交付)、危険有害性がある化学物質に対する意識等について、原則として平成26 年9月30 日現在の状況を調査した(前回は平成18 年)。
この調査は労働安全衛生特別調査として、昭和41年に「労働安全基本調査」がスタートし、以後、5年ローテーションで毎年テーマを変えて実施してきた。平成25年調査から調査体系の見直しが行われ、名称が「労働安全衛生調査」に変更となり、新たなローテーションの一環として実施されている調査である。

今回の調査は、10 人以上の常用労働者を雇用する民間の約13,000 事業所とそこで働く労働者約16,000 人、及びずい道・地下鉄工事現場約400 現場を抽出して行い、それぞれ9,145 事業所、9,982 人及び316 現場から有効回答を得た。

【調査結果のポイント】
〔事業所調査〕
1.労働安全衛生法第57 条に該当する化学物質を譲渡・提供する際に、そのすべてについて、化学物質の危険有害性を記載したGHSラベルを表示している事業所の割合は55.7%(「一部表示をしている」「譲渡・提供先から求めがあれば表示をしている」を合わせると86.9%)。
2.労働安全衛生法第57 条の2に該当する化学物質を譲渡・提供する際に、そのすべてについて、化学物質の危険有害性や適切な取扱方法に関する情報を記載した安全データシート(SDS)を交付している事業所の割合は53.8%(「一部交付している」「譲渡・提供先から求めがあれば交付している」を合わせると89.2%)。
3.危険有害性がある化学物質を使用する事業所のうち、化学物質を使用する際に安全データシート(SDS)が交付されている事業所の割合は20.7%で、そのうち安全データシート(SDS)の情報を活用している事業所の割合は72.2%。

〔労働者調査〕
1.主要有害業務のいずれかに従事している労働者のうち、化学物質に関するリスクアセスメントについて知っている労働者の割合は52.4%(平成18 年調査31.8%)。*リスクアセスメント(危険性又は有害性の調査)
2.主要有害業務(鉛業務など27種)のいずれかに従事している労働者のうち、GHSラベルの絵表示とその意味について知っている労働者の割合は46.1%。

*「主要有害業務」―労働安全衛生関係法令に定める有害な業務及び作業方法や作業環境の管理が適切に行われないと労働者の健康に影響を与えるおそれのある業務で、「鉛業務」、「粉じん作業」、「有機溶剤業務」、「特定化学物質を製造し又は取り扱う業務」、「石綿を製造し又は取り扱う場所での業務」、「放射線業務」、「強烈な騒音を発する場所における業務」、「振動工具による身体に著しい振動を与える業務」、「紫外線、赤外線にさらされる業務」及び「重量物を取り扱う業務」を指す。

〔ずい道・地下鉄工事現場調査〕
粉じんが発生する作業箇所がある工事現場の割合は63.9%(同43.3%)で、そのうち「換気のための通気設備」を設けている工事現場の割合は98.5%(同94.9%)。
なお、事業所調査と労働者調査で「有害業務」の種類の表現が異なるため、この概況中では事業所調査の表現に統一している。

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